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防災インタビューVol.116

地震火災 ~来たるべき大地震に備えて~

放送月:2015年5月
公開月:2015年12月

廣井 悠 氏

名古屋大学減災連携研究センター准教授

命を守るために

地震火災から命を守るためには、やはり「避難」が重要です。そのためには、避難する場所をきちんと考えておくことが大切だと思います。東京の場合ですと、広域避難場所や避難場所といわれる広い公園などがあります。そこに行くまでのルートを確かめて移動してみることも重要です。また、地震火災の際の逃げ方は、基本的に風上側に向かって、とにかく広い道路や河川沿いに出て、そこから逃げるということをきちんと覚えておくことが重要だと思います。広い道路まで行けばそんなに問題がない可能性があって、問題は広い道路に行くまでです。地震を伴うので建物が倒壊したり、道路が閉塞していると物理的に逃げられませんので、やはり着実に耐震化をしたり、道路を広めに確保するというような防災まちづくりが重要です。

その他、懸念されるのが要援護者の方です。東日本大震災でも要援護者の方々が津波からなかなか避難できないというケースがあったと思いますが、同じように物理的に逃げられないのであれば、地震火災は延焼速度が遅いとはいえ、要援護者の方々を地域の人たちでどうやって広域避難場所まで運ぶかということが非常に重要になると思います。家族や地域住人で訓練やシミュレーションをしておく必要があると思います。

あとは、そもそも出火させない、火を出さないという取り組みも非常に重要で、その中の一つとして、例えば感震ブレーカーのような、地震の揺れを感知してブレーカーを落とす仕組みや、マイコンメーターのような揺れを感知してガスをシャットダウンする仕組みなど、いろいろな仕組みがありますので、それをうまく使って初期消火対策をしておくことが重要です。特に地域の人たち、自主防災会や消防団などで、火災が起きたらすぐそれを消すというような対策が非常に効果的だと思います。

地震火災 その②「間接的な原因による火災」

「間接的な原因による火災」、これはあまりいいネーミングがないのですが、東日本大震災ではロウソクを中心として、地震の揺れによる火災とは違って、地震が起きたせいで間接的に発生してしまった火災が数多く報告されています。

「間接的な原因で発生した火災」というのは、多くがロウソクによるもので、地震が起きて停電したためにロウソクを使っていて、それが余震で倒れて燃えてしまったというのが非常に典型的な例です。仙台では、これによって人が亡くなっていますし、地震が起きた後、しばらく時間がたってから起きる火災ではありながら、やはり対応が必要な火災だというふうに感じています。

やはり地震が発生して停電した後は、ロウソクを使ってはいけないのかもしれません。あるいは、もしロウソクを使ったとしたら、寝る前にきちんと消して火の元を確かめるということが非常に重要だと思います。できればLEDとか、電池で明りを確保できる懐中電灯などいろいろありますので、それらを使えばいいかと思います。いずれにしても、仏壇にあるロウソクをそのまま使っている方々も多いと思いますので、ロウソクではなく懐中電灯などの備蓄を広く一般に普及させるということが必要なのかもしれません。

もう一つの間接的な原因としては、阪神淡路大震災で約280件発生した火災のおよそ半数が、電気の「復電」に伴う火災ではないかと言われています。これは「通電火災」とも呼ばれていますが、例えば熱帯魚のヒーターが揺れによって倒れて絨毯の上に投げ出された状態で停電して、家人が避難した後に復電すると、その熱帯魚のヒーターが熱を持ってじわじわ火災が発生しても、家には誰もいないので見つけることができないということもあります。このように、復電したことで発生してしまった火災が数多かったと聞いていますので、感震ブレーカーなどが設置されていない場合は、大きな揺れがきて避難所などに避難する際には、必ずブレーカーを落とすことも非常に重要だと思います。

ただ、この間接的な原因で発生した火災に含まれる「通電火災」は、東日本大震災ではそんなに起きていません。阪神淡路大震災では150件ぐらいと言われていましたが、東日本大震災の時には、津波浸水地域の通電火災も含めて20件から30件ぐらいです。これは、復電する際に特に気を使って復電をされているからだと思うのですが、電力会社のチェックはとても大変で、きちんとチェックをすればするほど電力の復旧が遅くなってしまうということもあります。安全性を取るか、いち早く電力を復旧させるというのを取るかは非常に難しいところですが、電気の復旧はこういう事情もあって、相当時間がかかるかもしれません。いずれにしてもそれを見越して、企業などでも非常発電を用意するなどの、さまざまな対策が必要なのかもしれません。

地震火災 その③「津波火災」

「津波火災」は、東日本大震災の際には160件ぐらい発生しているのですが、これは非常に珍しい火災です。何で珍しいかというと、津波浸水地域で発生することが非常に多いからです。実はこの火災は過去にも結構起きていまして、北海道南西沖地震の時に奥尻島の青苗地区がこの津波火災で広く延焼しています。この時は津波火災が4件ぐらい起きて、それが延焼したのですが、今回東日本大震災では、160件ぐらいの津波火災が発生したということで、今後の対策が非常に求められる火災であると思います。しかしながら「津波火災」という用語自体が東日本大震災の前にはありませんでした。奥尻島の津波による火災も、阪神淡路大震災の直前だったので十分な検討がされないままに、阪神淡路大震災の火災の研究が進んでしまって、あまりきちんと分析されていませんでした。東日本大震災の時に、別の大学にいた私とその上司が「津波火災」と命名した火災ですが、実はこの定義は「津波が原因で発生した火災」というふうにしています。例えば津波で家が浸水すると電気系統から出火したり、あるいは潮を被った車の電気系統から出火したり、津波で燃えたがれきが流れてきて、出火して延焼したりなど、さまざまなタイプがありますが、今後首都直下地震の時はともかくとして、南海トラフ巨大地震のような非常に広域の津波災害が考えられる所で発生するであろう火災というふうに考えています。

この津波火災は、揺れに伴う火災とか、間接的な原因で発生した火災と同じく、津波がきた直後に発生するだけではなく、その後1週間、2週間、場合によっては1カ月ぐらいずっと断続的に発生する可能性があります。ただ主な人的被害が発生するのが、直後に発生する津波火災です。これは多分2パターンぐらいありまして、先ほど申し上げたように、燃えたがれきが津波の上で流れてきて、それで山際とか、場合によっては津波避難ビルなどに引っかかって延焼してしまうというパターン、もしくは車が出火するパターンです。これは電気系統ではなく、車が津波で流されて建物にぶつかると燃料が拡散して、それに火花が出て出火するというようなパターンです。車というのは、すごく衝撃に強そうに見えますが、下からの衝撃は想定外です。燃料タンクが樹脂製か鉄製かによっても違いはありますが、そこからガソリンが拡散して燃えてしまうパターンもあります。また、プロパンガスボンベが津波によって流された際に、爆発を避けるためにボンベからガスを噴出しながら流れてきて、それがどこかにぶつかると火花が起きて、それでボッーと燃えてしまうというパターンもあるのではないかと言われています。清掃車の中でボンベが爆発して火災が起きたというニュースを時々目にしますが、これは卓上用で鍋料理をするときに使うミニボンベにガスが残っていて、それが清掃車の中で潰れた際に火花が起きて燃えるのですが、恐らくそれと似たような形なのではないかと言われています。水の中ですので、相当多く出火して相当消えているのですが、運悪く残ったものが大規模延焼に至るというパターンだと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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