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防災インタビューVol.152

「災害対策基本法」~被災者支援のあり方~

放送月:2018年5月
公開月:2018年11月

山崎 栄一 氏

関西大学 
社会安全学部 教授

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

災害時の「個人情報に関する規定」について

災害が起きたとき、避難のために支援が必要な人を救うためには、事前にどこにどういう人がいるかを把握しておかないと何もできません。これは社会福祉全般に言えることですが、高齢者や障害者など、避難所に逃げるのも難しい人をあらかじめ把握していくために、「災害対策基本法」では、「避難行動要支援者名簿を市町村長が作ることができる」という規定を設けています。市町村では、介護保険などを通して、支援が必要な人の情報を持っていますので、それをもとに避難所まで行くのが難しそうな人をピックアップして名簿を作るわけです。その名簿を自主防災組織などの共助組織に提供して、その名簿を受け取った地域の人が、事前に高齢者や障害者に会って、どうやって逃げるか考えていく仕組みが法律で全国に出来上がりつつあります。実際に、市町村で名簿を作り、それをもとに助ける体制を作るための基盤が出来上がったわけですので、災害前にこの個人情報をもとに、この名簿をどうやって地域が活用していくのかを考えることが重要になると思います。

このように災害前に作られた要支援者の名簿は、災害時に配慮が必要な人たちをきちんと把握するためのものであり、この名簿の提供先についても、きちんと管理ができる自主防災組織でないと提供はできないので、地域の方も個人情報についての知識を体得してもらって利用するというような、受け入れ体制が大切だと思います。

被災者を最後の最後まで支援する法律

災害が起こる前に「避難行動要支援者名簿」を作成するというお話をしましたが、災害後に被災者がどこに避難しているのかを把握し、支援するためにはどうしたらいいのかというお話をしたいと思います。通常だと、災害が起こったら避難所に避難して、その後被災地の近くに仮設のプレハブ住宅を作って、そこに避難するという流れになります。このような流れで避難した人たちならば、移動後も被災地のどこにいるのかが把握できますが、東日本大震災の時には、既に出来上がっているアパートや借り上げの住宅を実際に仮設住宅の代わりにして、そこに住んでもらうということが多くありました。この場合、被災地ではない所に引っ越す可能性もありますので、周りからすると被災者だということが見えず、引っ越し先で孤立してしまうという問題が生じました。自治体は、借り上げ住宅に移転した人たちの名簿を持っていますが、被災者を支援しようとする人たちが支援したくても個人情報ということでなかなか見られないということもありました。これでは、せっかくの情報を生かすことができません。そこで、実際に個人情報ではあるものの、支援団体と被災者の人を結びつけるヒントになりそうなのが「被災者台帳」の規定です。被災した人たちの情報を台帳にまとめた、お医者さんのカルテみたいなものを市町村が持っておくようにして、必要があれば、支援者に被災者の情報を知らせ、助けることができる仕組みができないかと思っています。

また、この「被災者台帳」に、被災者がどれだけの支援をもらっているか、生活再建がどうやったらできるかということなど、全てを書き込んで、この「被災者台帳」をもとに、被災者をきちんと最後の最後まで面倒を見る仕組みが「災害対策基本法」の枠組みの中でできています。それと同時に、大きな災害の際だけでなく小さな災害でも、そういう「被災者台帳」というカルテを作ってもらって、最後の1人まで面倒を見てもらう仕組みというのも求められています。

実際に被災者支援というのは、これからは社会福祉の視点に立って、きめ細かく最後の1人まで支援していくことが大切であり、私たち日本の社会で求められているレベルは、それだけ高いのだということが、「災害対策基本法」を見れば分かります。今後、被災者の生活再建や避難生活がどれだけ改善されるかは、私たちがこの「災害対策基本法」に注目しながら、どこまでそういった被災者支援の状況をチェックできるかどうかにかかっていると思います。その意味でも、今後もぜひしっかりとチェックしていき、支援に生かしていきたいと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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