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防災インタビューVol.152

「災害対策基本法」~被災者支援のあり方~

放送月:2018年5月
公開月:2018年11月

山崎 栄一 氏

関西大学 
社会安全学部 教授

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

被災者支援のあり方

もう少し具体的に、安全な場所に逃げるための避難行動や避難生活のあり方について、どのような規定がされているのかを見ていきたいと思います。「災害対策基本法」には、避難に関しては、49条の9に「市町村長があらかじめ防災マップを作って、住民に周知、徹底させておきなさい」と書いてあります。避難については、現在はさらに細かく規定されており、市町村長はまずは「避難準備」、「高齢者等避難開始」という情報を出すことができます。その次が「避難勧告」、一番危ない状態になると「避難指示(緊急)」という形で、避難に対する情報を提供できるようになっています。

「避難生活のあり方」についても、いくつか条文がありまして、その中でも49条の7には、市町村長はあらかじめ避難所を指定して整備していくようにと書かれています。その際にきちんとした生活環境が確保できるようにあらかじめ準備をしておかなければいけないという条文があります。ですので、単に安全な場所ではなく、そこできちんと生活ができるようにしておかなければいけないということです。もう1つ重要なのは、避難生活については、避難所できちんと生活ができるように配慮するとともに、避難所に避難していない人の生活環境も配慮しなければいけないという条文も書かれています。避難所に逃げたくても逃げられないような、テントや車の中に住んでいたり、つぶれた家の中に住んでいる人も、きちんと生活できるように配慮しなければいけないことになっています。昔は避難所に逃げてこなかった人は、そもそも支援の対象、配慮の対象になっていなかったのですが、東日本大震災以降の法改正で、誰に対してもきちんと配慮や支援をしていかなければいけないということが明確なものになってきています。このように、東日本大震災後の法改正では、「被災者支援のあり方」というのが大きくガラッと変わったということが言えます。

行政のための「災害対策基本法」から国民のための法律へ

東日本大震災後に「災害対策基本法」で、被災者支援についてまで規定が設けられたことによって、被災者支援の内容や質が戦後直後のものと比べると大幅に違っていることが見えてきます。特に避難生活については、「災害救助法」をもとに実施されていますが、この「災害救助法」は、戦後間もなく出来上がったものです。その当時の災害救助というのは、安全な場所であれば、バラックみたいな所でもいいので、そこで避難してもらって、食べ物もおにぎりみたいなものを平等に食べてもらうことができれば、きちんと被災者支援ができているんだということになっており、戦後間もない頃なので、やはり生きるということが大事で、そういうレベルで十分だと思っていたということです。

しかしながら、経済や社会がここまで成長してくると、被災者支援の中身もやはり違って来ざるを得ないわけです。みんなに平等にものを配ったらいいのではなくて、これからは個人の年齢、障害などの特性に配慮した支援をしていかないといけないという時代がやってきているわけです。避難生活にしても、とにかく雨風しのげたらいいという話ではなくて、その避難生活の中でも、やはり健康な状態で避難生活が送れることが大切ですし、避難場所に居る人だけでなく、避難所に来られていない人に対しても、きちんと生活ができるように配慮して、必要な支援をしていかなければならない時代になっています。支援は、物やお金を渡したら終わりではなくて、被災者が自分自身で考えて、生活再建が果たせるようにきちんと情報提供が必要ですし、生活再建のためのさまざまな制度を使って再建していくために、制度がよく分からない場合でもそういう相談に応じることによって、適切な制度を紹介して支援を受けられるようにする体制をきちんととっていかなければいけないとされています。

このように、東日本大震災以降「災害対策基本法」が改正され、その後に熊本地震が起こりましたが、実際に被災者支援がきちんと実施されていたのかどうかについては、今後きちんと検証されなければいけません。また、今後起こる災害に対して、災害関連死を予防するように努力しているのか、高齢者や障害者の人たちにとっても個別の配慮をしているのか、あるいは避難所に逃げてきていない人にもきちんと配慮できているのか、あるいは被災者の人たちに対して、きちんとした情報提供や相談の場が提供できているのかということについて、常に「災害対策基本法」の視点からチェックがなされなければなりません。

災害が起こるごとに実際に支援が実施されているかは、被災地に行き、「災害対策基本法」の規定をもとに、それを物差しとして、被災者支援の状況をチェックしていくことが必要です。「災害対策基本法」というのは、最初は行政の縦割りを克服するために作ったものでしたが、ようやく今、私たちのための法律になってきているのではないかと思っています。行政の行政による行政のための「災害対策基本法」から、まさに国民の国民による国民のための「災害対策基本法」に、性質が大きく方向転換されたのではないかというのが私の評価です。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。