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防災インタビュー

地域防災を考えるプログラム「サロン・ド・防災」共同企画

vol.
551
人の命を守る タイムライン防災 [その3]

2017年4月

松尾 一郎氏 特定非営利活動法人 環境防災総合政策研究機構 専務理事

「タイムライン」の取り組みの効果

現在、水害や台風に特化した「タイムライン」を幾つか作って、10カ所ぐらいやっていますので、その取り組みの効果についてお話しします。

この「タイムライン」ですが、一番その効果が大きいのは、これを作るための過程です。この策定に関しては、災害対応に当たる組織、人々が集まって、車座になって「どういう災害が起こるか」というリスクを皆で共有し、「そのリスクから被害の軽減を図るために何が必要か」「どういう行動が必要か」を皆で出し合って、「それは誰がやるのか」「いつ誰が何をするか」を時間表的にまとめていくのが「タイムライン」です。それをやることによって何が変わるかというと、日ごろ一堂に集まることがない消防団、民生委員、学校関係者が集まって議論する場ができ、災害が大きくなればなるほど、いろいろな人が関わることになりますので、事前に集まることで顔の見える関係ができること、これが非常に大きな成果です。それに加えて「タイムライン」を、あらかじめ「行動計画表」として策定しておくことによって、チェックリストにもなりますし、抜け落ちがなくなります。災害に対して何を対応すべきかを、あらかじめ決めておくことができるのは、取り組みの効果として非常に大きなところだと思います。

その取り組みの具体例として、三重県紀宝町の取り組みを紹介します。三重県紀宝町では、台風が直撃すると町中で道路が冠水します。冠水した道路を通行止めにするために、これまでは現場で対応する消防団2人を常時置いていましたが、消防団員の命も大切だということで「タイムライン」の中で、消防団員も台風の暴風警報が発令されたら安全な場所に退避することにしました。しかしながら、通行止めのバリケードは設置しなければいけないので、その対策として、現場に常設するタイプの手動式のバリケードを設置しました。このように「タイムライン」を作ることで、どんどん地域も変わってきています。

東日本大震災の被害を顧みて

東日本大震災の2カ月後、私は釜石市、宮城県名取など、岩手と宮城県下の避難所に調査に入りました。そこで約400人の方に話を聞いて回ったのですが、その中で消防団の方から、仲間が津波に巻き込まれて亡くなったという話を聞きました。消防庁によると、公務災害を含めて254名の方が、あの津波に巻き込まれて尊い命をなくされたということです。

地震が発生すると同時に、東北4県全て停電しました。それまで約9割の人は、津波警報などの防災情報をテレビから得ていましたが、停電でテレビも見られなくなり、携帯電話も輻輳でパンクをするのを防ぐために、通信会社が回線を絞っていたので、電話もつながらなくなりました。そのために、消防団の方々は現場でほとんど何も分からない状態で、救助や水門の操作などの活動を始めました。そうこうするうちに20分・30分経過し、津波に襲われました。気象庁の大津波警報の情報も、現場には全くない状況下で活動をされていました。結果的には254人の方が犠牲となってしまいました。私はそのうち、辛くも助かった50人の消防団長、分団長にお話を聞いて回って、何が問題だったのかを調査しました。

一番大きいのは、地域の守り手としての消防団員が、逃げ遅れた方や避難できていない寝たきりの方の救助を頼まれ、身近な人なので、1人を助けるために4人・5人の消防団員が駆け付ける、そういう救護被災でした。それはどうすれば防げたのでしょうか。基本は、やはり皆が逃げる仕組みをつくらなければいけないということです。大災害の際には、消防団や民生委員の方に全てを依存するのではなく、全員が逃げなければいけません。そのためには、あらかじめ寝たきりの方を誰が避難させるかということを含めて、議論しておくことが重要です。これが「タイムライン」です。皆が地域のことを考えて、逃げる仕組みをつくらない限りは、従来通り消防団や民生委員の方が負担を強いられる。これは変わらないと思います。

地域を守る消防団

東日本大震災後に、私はたくさんの消防団員の方々に話を聞きました。津波に巻き込まれて亡くなった消防団員もいましたが、それと同時に、たくさんの人たちを救った消防団の方もいました。直接お話を聞いた方は約50人ぐらいですが、やはり消防団の方というのは地域を守ろうという強い思いを持っていらっしゃいます。たくさん仲間が犠牲になったり、家族が犠牲になった遺族をサポートしている消防団長もいましたが、多くの方は「消防団をやって良かった」と言われていました。それこそが、この消防団活動が地域に基づいて行われていることの大きなところかなと思っています。

例えば岩手県宮古市で直接お聞きした話では、その消防団員の方は、震災の時に大きな揺れを自宅で体験されて、すぐさま消防団活動に入り、自分の役割である沿岸部にある樋門、水門を閉める操作をするために出掛けていき、数名の消防団員とともに閉めるための操作を行ったそうです。閉めてすぐ逃げられればよかったのですが、海から車ごと逃げてくる方がいて「開けてくれ」ということで開けた際に津波が来て、一緒に操作された方は遺体となって発見され、ご本人は辛くも助かったということです。あるいはもう一人、釜石では、国道沿いで消防団のパトロール車をバリケードのように横付けして通行止めにしました。それはなぜかというと、国道の行った先がちょうど津波が来る低い所だったそうです。やって来たドライバーからは「家族が心配で帰りたいので通してほしい」と、相当文句を言われたそうです。結果的には、臨機の処置としてポンプ車を横付けして通さないようにしたそうですが、もし通していれば、その方は津波に巻き込まれて亡くなっていたはずです。そのような話を聞くと、つらい状況で仲間を亡くされた方も多いのですが、逆にたくさんの人たちを助けたのも消防団であったということです。

実際、消防団の人員は戦後ピーク時が200万人に対して、今は85万人で、毎年のように減っています。一番の問題は、消防団というのは日ごろは他の仕事をやりながら、空いている時間に地域の防災・消防活動をされていますので、特に神奈川県下ですとサラリーマンの方は横浜や東京に仕事場があり、昼間いざというときにもなかなか消防団活動に駆け付けられないということです。それを補う意味で、女性消防団も最近増えています。神奈川県下でも、横浜市などでは女性消防団は増えています。消防団員の中には男性と同じことをやりたいということで入る方もいますが、災害の時は対応しないけれども、消防団の活動をPRするような広報活動をやっている人もいます。それぞれ役割に応じて活動を考えていけばいいのではないかと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を一部改定して掲載しています。

FM salus

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