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防災インタビュー

地域防災を考えるプログラム「サロン・ド・防災」共同企画

vol.
550
人の命を守る タイムライン防災 [その2]

2017年4月

松尾 一郎氏 特定非営利活動法人 環境防災総合政策研究機構 専務理事

「タイムライン防災」の必要性

「タイムライン防災」は今、私自身が各市・町の取り組みの中で、取りまとめの座長という形で進めています。全国で大きな河川、主要河川ごとに、住民の方々や自治会、自主防災会、消防団などの組織が集まって行っている取り組みです。

日本の南海上で台風が大体、直撃する1週間ぐらい前に発生します。そこから換算して、事前の防災行動計画を考えていくのが「タイムライン防災」です。まず参加者全員で、台風が発生してから、1週間から5日ぐらいの間で事前に何ができるかということ、5日前にやるべきこと、3日前にやるべきこと、前日にやるべきこと、それぞれを調整して合意しておきます。その合意したものを事前の防災行動計画として取りまとめた上で、それに従って対応していく。このように準備をして行動することによる減災効果は、計り知れないと私は思っています。

2016年にも迷走台風である台風10号が発生して、岩手県の小本川で河川が決壊、氾濫しました。その際に「楽ん楽ん」という高齢者福祉施設が被災して、高齢者の方が犠牲になりました。その同じ台風が北海道にも広域に被害をもたらし、これは35年ぶりの災害となりました。その前年の2015年にも鬼怒川が決壊し、常総市に水があふれてきて、29年ぶりの災害となりました。そういうことが立て続けに今、起こっているということです。

これらの災害を調査しましたが、大きな災害になればなるほど、一つの自治体の対応力ではなかなか限界があります。鬼怒川のように大きな川が決壊すると、常総市は混乱の中で災害対応をしましたが、終始混乱していたという状況でした。日ごろから訓練はしているものの、実際にはその災害を想起できるリアリティーのある訓練はしていないので、あのように大きな災害が起こると、ほとんど対応できないのが、今の大きな問題ではないかと思います。実際には30年ぶりの災害、100年ぶりの水害というようなことが起こり得るのですが、私たち一般の住民からしても「そのような大きな災害が起こったときにはどうすればいいのだろう」というのは、すぐに答えが見つからない方も多いと思います。通常の大雨やゲリラ豪雨でよく浸水する所はどこか、常襲する浸水地域というのは、地域の皆さんは分かっていますので、ある程度対応できると思います。しかしながら、それ以上の災害が起こって川が決壊し氾濫する、その強い水の流れに伴って広く浸水するわけですから、普段にないようなことが起こるわけです。それに対して「適切に対応しなさい」というのは、何も予備知識がなければ難しいと思います。そのためにも、自分自身が住んでいる所について、行政が防災マップ、あるいは浸水マップを公表していますので、そういうものを事前に見ておくことが、とても必要だと思います。その上で、いつ、誰が、何をと、あらかじめ行動すべき内容を「タイムライン」に沿って事前に決めておき、それに従って防災行動を行うことが重要になります。

「タイムライン防災」の具体例

「タイムライン」というのは、日本語で「事前防災行動計画」という言い方をしていますが、この計画の有無で被害の規模が変わった所がアメリカでも見られました。

2013年にハリケーン・サンディがアメリカの東海岸を襲って、ニューヨークが海水で水没した被害がありました。地下街、地下鉄、あるいは地下トンネルが海水で漬かり、その当時、北米で132名の方が亡くなりました。このように、アメリカの都市が高潮災害を受けるというのは75年ぶりでした。私はこの時、アメリカに調査に行き、ハリケーンが直撃したニュージャージー州の危機管理局にも行きました。ここは実はハリケーンが直撃した所で、4000世帯が全壊、半壊だったのですが、犠牲者はゼロでした。話を聞いてみると、ハリケーンが直撃する前の年の2012年に「ハリケーンの対応計画の実施要領」という、今私が日本で「タイムライン」と言っているものを作ってあり、それを使って効果が出たということでした。

それを私は見聞きして「これは日本で使えるし、もし日本流のやり方でやれば、これは地域防災を変えるのではないか」と、その当時、思いました。その翌年の2014年に三重県の紀宝町で取り組みを始めて、今、紀宝町では3年目の運用に入っています。現在は全国で12・13カ所の自治体で取り組みが始まっています。関東では荒川流域の板橋区・北区・足立区の三つの区で今、国土交通省と一緒になって「水害タイムライン」の策定を進めているところです。

この「タイムライン」というのは、小学校の時の時間表をイメージしてみてください。縦に1時限目から6時限目まであります。横に曜日があります。分かりやすく言うと、縦の時限のところが台風が発生して直撃するまでの時間軸、時間割になります。横軸の曜日のところが国であったり、気象台であったり、自主防災組織であったり、住民であったり、誰がやるかということを示しています。その中に入っていくのが、行うべき防災行動になります。5日前に何をするか、3日前に何をするか、台風が直撃する前日には安全な所に避難しようというように、いつ誰が何をというのを、あらかじめ決めておくことです。この時間表を作っておき、時間表に従って、来る台風に臨機応変に対応していくのがタイムラインです。気象庁が「南の方で熱帯低気圧から台風になった」というのを発表し、その台風が関東を直撃するのが分かった段階で、本来は行動が取れるわけです。私たちは昔は雨戸に板を打ち付けたりして、風が強くなくても自宅が被災しないように、いろいろな対策をしていました。それを思い出してください。2日前にしたこと、前日にしたこと、当日にすることを再確認していただければ、減災に役立つと思います。ただ、必ずしも想定した災害のシナリオ通りにものが進むわけではないので、その対応には臨機応変さも必要です。

「タイムライン」の他の災害への応用

「タイムライン」は水害だけでなく、さまざまな災害に使えるのではないかということで今、研究や地域の取り組みを進めているところです。実際、ニュージャージー州ではハリケーンでタイムラインを使っていましたし、私が日本に持ち込んで、この取り組みを始めたのは台風ですが、前線性の雨や火山の噴火、熊本地震の後には地震や津波対策にも使えるのではないかということで、現在進めています。

地震の際の「タイムライン」の取り組みは、どんなイメージになるかというと、まず地震の予知はできないので、いつ起こるか分かりません。しかしながら、地震が起こった瞬間は縦揺れから来ます。海溝型地震と内陸の地震では少し揺れ方が違いますが、いずれにしても人が「あれ、おかしいな、ちょっと揺れが始まったな」と感じる程度の地震ですと、それなりの揺れになります。内陸地震の場合は、揺れている時間は大体30秒前後です。ところが東日本大震災のような海溝型地震になると、地震の大きさによっては、揺れる時間は2分、3分ぐらい続きます。そうすると、まず最初の揺れの時間に、命を守る行動というのが出てきます。「タイムライン」というのは、あらかじめ何が起こるかを考えた上で、少なくとも命を守るためにはどうすればいいか、ということを皆で考えておくことです。仮に「家族のタイムライン」を作るとしますと、家族で事前に話し合って「まず揺れがきたら身を守るために、それぞれどう行動しようか」ということを決めておきます。最初の30秒の揺れの間で、少なくとも頭や胸を守る行動をまずします。次に30秒が収まったら、その収まると同時に、火の元や電気の確認を取ります。地震の後に、自宅にそのまま居られるかどうかという状況もあると思うので、その後の対応として、避難所まで避難するとしたら、3分後、3時間後にはどうするかを、あらかじめ考えておきます。これは予行演習であり、訓練にもつながります。それをやっておくのとやっておかないのでは全然違うと、私は思います。

「タイムライン」というのは、それでもって命を救えるかどうかは別にして、あらかじめ何が起こるかを考えた上で、その時に最適な行動をするためにはどうすればいいかを皆で議論しておく、これを議論した上で合意してまとめておくことです。

災害の種類にもよりますが、水害の場合ですと、行政機関が中心となった「行政タイムライン」という取り組みがあります。次に自主防災会や町内会で、その地域で、どのように避難するかを地域で話し合います。それは「コミュニティータイムライン」という言い方をしています。そして、その他に「家族のタイムライン」もありますので、それは「ファミリータイムライン」という言い方をしているのですが、それぞれの場面ごと、場所ごとの「タイムライン」はあると思います。その他に「企業のタイムライン」もあります。「企業のタイムライン」とは何かと言うと、少なくとも就業される職員の方の命を守ること、企業が被災しても、いち早く立ち上がることで復旧を早くして、日常経済活動をいち早く復旧することは、これは経済活動の被害の軽減にもつながります。そのためには事前から、このような取り組みが当然必要であると思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を一部改定して掲載しています。

FM salus

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