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防災インタビューVol.117

安全保障と防災

放送月:2015年6月
公開月:2016年1月

渡部 恒雄 氏

東京財団上席研究員

プロフィール

公益法人 東京財団で上席研究員をしています。東京財団は、政策を研究するシンクタンクです。私は、防災の専門家ではなく、国家安全保障、国際安全保障、国家間の安全保障、世界やアジア地域を平和にするにはどうしたらいいかを専門に研究しています。もともとは、日本で歯医者をしていたのですが、ちょっと道を変えたくて、アメリカに留学して国際関係を勉強しました。その国際関係で修士号を取った後に、アメリカの戦略国際問題研究所、英語で言うとCSISと略すのですが、このシンクタンクに入って、10年間安全保障の研究をしており、今もずっとこの研究しています。

日本では高校の中頃あたりに、理系と文系のどちらかに決めなければならないのですが、もともと、私は国際関係や政治思想など、政治全般に興味があり文系も好きでした。ただ、私の母親が歯医者だったので「歯医者もやりたいな」という気もありました。どちらにするかを悩んで、理系に決めて実際に歯医者の勉強をしたのですが、やはり自分はそちら向きではないと考えて道を変え、現在は国家安全保障、国際安全保障についての研究をしています。

安全保障の観点からの災害対策

安全保障という課題と災害対策の課題が、最近非常に密接につながるようになってきています。そのきっかけになったのが東日本大震災です。震災後に自衛隊や在日米軍がフル稼働で災害対策をしていましたが、恐らく軍隊の組織が災害対策をしないと、このような大規模災害においては、消防や警察だけでは対応できないということを日本人全体が多分実感したと思います。

実は安全保障の世界でも、逆の方向でそういうことを実感していまして、それまでは安全保障をやっている人たちは、どちらかというと災害は二の次で、国と国の戦争やテロなどが中心だったのですが、温暖化の影響というのもあるかもしれませんが、災害の規模が非常に大きく世界的になってきていて頻度も増えてきているので、安全保障の立場からも、災害に対する対策をしなければならないと考えるようになってきています。

テロや自然災害から命を守る

前述のように、最近では、安全保障の分野と災害対策の分野が非常に近くなってきています。例えば東日本大震災の際に、福島第一原発の事故がありましたが、これは放射性物質が拡散して、非常に深刻な被害を与えるという事故でした。日本ではその前にも、オウム真理教によるサリン散布という化学物質を使った大きなテロを経験しています。これは世界的にも注目されました。こういうテロと災害の大きく違う点は、テロは誰か人間が起こすもので、災害は自然が起こすものであるということです。ところがその被害は似ている部分が非常にあります。

テロ対策のための「CBRN(Cバーン)」というものがあるのですが、「C」というのは、ケミカル、つまり化学です。先ほどのサリンテロなどに対しても、あるいはテロでなくても、化学工場が事故を起こして有毒物質が流れた場合に対策が必要です。「B」というのは、バイオロジカル、生物学ですが、これはテロで細菌をばらまかれたり、あるいはパンデミックと呼ばれるように、感染症が大規模に広がったりするものです。それから「R」というのはラディエーション、つまり放射性で汚染されたものが広がることです。これもテロによるものや、福島原発の事故のようなケースもあります。そして、最後が「N」、ニュークレア、核です。これは、先ほどの「R」の放射性とどう違うかというと、「R」は汚染された放射性のものをばらまくことですが、実際に核兵器を爆発させるテロや核兵器による攻撃が「N」です。

福島原発の場合は、臨界になって事故を起こし、核物質が飛び出して汚染が広がりました。実際に世界では、核兵器によるテロというよりは、核による汚染物質を爆弾に仕掛けて振りまくというようなテロが想定されていて、非常に警戒しています。このように、災害でも、あるいはテロでも、あるいは戦争でも、やっている主体は違うけれども、そこに備えて常に対策をしなくてはならないという点では、実は災害対策とテロ対策と、それから安全保障一般の対策というのは非常にかぶるところがあります。

テロであっても、あるいは災害であっても、被害がある以上は、この被害を食い止めるのが重要です。われわれが、そもそも「なぜ災害対策をやっているのか」「なぜ安全保障対策をやっているのか」と言ったら、命を守るためにやっているわけです。ですから、ここを大事に考えると、実は災害対策と安全保障対策は、一緒に考えて一緒に対策できるものもたくさんあると思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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