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防災インタビューVol.116

地震火災 ~来たるべき大地震に備えて~

放送月:2015年5月
公開月:2015年12月

廣井 悠 氏

名古屋大学減災連携研究センター准教授

「津波火災」の4つのパターン

東日本大震災で発生した「津波火災」を分析すると、4つぐらいのパターンがあることが分かっています。まず、1つ目は、大槌や石巻でよく見られたパターンで、津波に乗って燃えたがれきが流れてきて、山際に漂着して、それがどんどん延焼拡大してしまうというパターンです。これは悪くすると山まで燃やしてしまいます。大槌では、市街中心部で発生した津波火災が公民館の近くの山際に漂着して、そこから津波火災が発生し、山林火災に発展して、釜石まで燃えてしまっています。山というのは、津波からの避難場所ですので、そういう避難場所に逃げた人も二次避難をしなければいけない可能性があるというリスクがあります。これは非常に延焼面積が大きいのが特徴で、津波火災が起こって燃えそうな山の上には、きちんと防火水槽や消防車を配置して、とにかく津波で残った所だけは消すような消防戦術をとらないといけないかもしれません。同じように、石巻の日和山でも津波火災によって、門脇小学校が燃えたのですが、現地の消防団と消防の方が頑張ってようやく消し止めました。もし日和山が燃えてしまったら、そこに避難していた約9千人の住民の方々も、もしかしたら生命のリスクに脅かされたかもしれません。津波火災というのは、津波で残った所までをも焼いてしまう可能性があるという非常に怖いパターンで、これを「斜面がれき集積型パターン」と私は呼んでいます。

2つ目は「都市平野部近郊型パターン」と私は呼んでいるのですが、いわゆる都市部、平野部で発生するパターンで、これは仙台市や名取市などに特徴的なパターンです。燃えたがれきやプロパンガスボンベなど、都市部にはさまざまな生活エネルギーが密集しているので、非常に出火点の数が多い傾向にありますが、それが同じように津波に流されていきます。平野の都市部の場合は、山際はないので、津波避難ビルに燃えたがれきなどが漂着して、ビルを燃やしてしまうというリスクがあります。これは東日本大震災でも多く見られたパターンですが、南海トラフ巨大地震ですと、静岡の平野部や名古屋とか大阪などの人口密集地域で発生する可能性が高いということで、非常にリスクの高いパターンだと思います。先ほど申し上げた「斜面がれき集積型パターン」はどちらかといえば和歌山県や三重県などの、岩手県や青森県の三陸沿岸地域に似たような地形の所で起きる可能性がありますが、平野部では津波避難ビルなどを燃やしてしまうリスクがある津波火災が発生する可能性があるということです。

それから3つ目のパターンは「気仙沼パターン」と私は呼んでいるのですが、東日本大震災の当日夜、気仙沼の映像を見られた方は多いと思いますが、ああいう火災が発生する可能性があります。なぜ気仙沼であのような大火災になったかというと、恐らく重油の流出によるものではないかと考えています。気仙沼は23基あった重油タンクのうち22基が流出しました。その中にあった重油、軽油、ガソリンなどが、海にばら撒かれて散らばって、それが延焼拡大の要因になったのではないかと言われています。ただ、重油というのは、燃やそうとしてもなかなか燃えないものですが、いろいろ実験した結果、重油の上にがれきを浮かべて燃やすと、がれきがロウソクの芯の状態になってずっと燃えることがわかりました。重油の火災は、もしかしたらこれが原因かもしれないとわれわれは考えています。このような「気仙沼のパターン」においては、危険物の管理が非常に重要になってきます。

4つ目のパターンとしては「建物や車の電気系統から出火するパターン」がありまして、これは当日というよりも次の日、その次の日ぐらいにポツポツ出火する可能性があるので、人的被害という点では、そこまでは考えなくてもいいかもしれませんが、数が多いので4パターン目として計上しています。

こういう形で4つのパターンがあるということが東日本大震災の分析で分かってきました。この「津波火災」というのは延焼被害が非常に大きいのが特徴です。東日本大震災では「揺れに伴う火災」も「間接的な原因で発生した火災」も、火災1件当たり、建物1棟ぐらい延焼しているのですが、これが津波火災ですと、火災1件当たり大体20棟ぐらい燃やしています。津波火災というのは浸水地域内で発生する火災なので、がれきに阻まれて、なかなか消すことができません。普通であれば、延焼遮断効果があるような道路にもがれきが散乱していて、延焼被害がかなり大きくなる傾向にあるので、やはり津波が来るような地域では一刻も早く津波火災対策をしなければいけないと考えています。

被害を最小限にするために

津波火災対策において難しいのは、津波火災の発生する原因が、先ほど申し上げたように、木造建物やプロパンガスボンベや重油や車が元になる可能性があるわけですが、これは生活するにあたって全て必要なもので、それらすべてを使用禁止にすることは無理なので、発生を抑制するというよりも、発生したらそれをどう局限化させるか、どう逃げるかというような対応中心の津波火災対策というのをする必要があるのではないかと考えています。

東日本大震災では死者こそ少なかったものの、阪神淡路大震災や関東大震災に比べて非常に多くの火災が発生したことが分かっています。もし、首都直下地震や南海トラフ巨大地震でも同じような火災が発生して、悪くすると非常に多くの方が亡くなってしまうかもしれないという恐れがあります。風速が強かったりすると特に危険です。東日本大震災は、そのような地震火災の危険性が顕在化した災害だと思います。

地震火災の被害を最小限にするためにも、感震ブレーカーやマイコンメーターを設置したり、火災が起きたらすぐみんなで消火する体制を整えておく必要がありますし、建物自体を火災に対して安全にするために、準耐火や耐火に変えてもいいと思います。また、まちづくり的な観点でいくと、密集市街地に延焼遮断効果がある道路を通したり、避難路を確保したりして、いざというときの避難対策をしておくことも重要で、そういう対策を着実に積み上げていかなければ、地震火災の被害を減らすことはできません。私たち自身も少しでも減災できるように、身近でできることからやっていくことを心掛けてほしいと思います。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。