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防災インタビューVol.49

災害看護の現状と今後の在り方について考える

放送月:2009年8月
公開月:2010年7月

小原 真理子 氏

日本赤十字看護大学小原教授

プロフィール

私は今、東京の渋谷広尾の日本赤十字看護大学で教授として、看護学生に国際看護学、そして災害看護学を教育しています。ここでは学生たちに、病院や保健所などの施設の中だけの看護ではなく、災害時に、被災地でも看護を提供できる人材を育成する、ということを目的としています。
私は赤十字の短大を卒業して、その後、赤十字の病院の看護師になりました。そこで働く中で、国際活動に大変興味がありましたので、そういった関係から赤十字国際委員会の活動をしていました。そのころ、カンボジア難民やクルド難民などがたくさん出て、難民キャンプができ、私も国際救援に行きました。それが今の活動の基になっています。

認定看護師として

看護師は、看護学校において基礎看護教育の中で高齢者の老年看護、成人看護、子どもを対象とする小児看護、母性看護というような各領域別に分かれて教育はされますが、4年間の看護学校を卒業した後、国家試験を受けて、それぞれ病院などに勤めます。最初は若手の看護職として働いていますが、だんだん年数がたつと専門の看護師として、もっと勉強して専門的な看護活動をしたいという人がたくさん出ています。そういう方たちに向けて、日本看護協会という職能団体が提唱している認定看護師のコースがあります。
例えば、災害に関連しているのは救急看護の認定看護師。ほかにも専門に分かれた認定看護師の資格があります。がんの化学療法、緩和ケアの認定看護師など、20ぐらいに分かれた認定看護師のコースがあります。これを受けるには5年の臨床経験が必要で、その後に指定された学校で6カ月間、そのコースの勉強をすることになっています。その後、認定看護師になるための受験資格が与えられ、その試験に合格して初めて、認定看護師として看護協会のほうにも登録されて、晴れて認定看護師になる、という仕組みになっています。さらにその病棟の中で専門的なことをできる看護師として、リーダー格として役割を持つようになります。

教育課程での災害看護

日本は自然災害、特に地震が多い国です。実際に地震が毎日毎日起きているような状況ですし、大きな災害として人々に大きな被害を与える、ということは往々にしてあるわけです。いつ起こるか分からない災害に対して、病院というのは、その被災者である病人、傷病者を受け入れるという役割がありますので、看護を目指す学生を将来そういうふうな病院の中で働こうとする看護職に育てるためには、いつ起こるか分からない災害にも対応できるように育てるということは、ひとつ大変重要な課題と考えています。

看護学生が災害看護を学ぶ範囲と方法

今年度から、厚生労働省の看護の指定規則の中で、基礎教育に災害看護を入れて教育をすることが課されていますが、日本赤十字看護大学では、もともとこの教育をしておりました。法律で定められている以前からやっていた、ということです。学生には、災害看護の活動をする上での基本的な知識・技術を習得できるように教育をしております。
具体的には通常の病院で行う看護ではなく、被災地の中での看護活動になりますので、そこがどういうふうな状況なのかをまず学生に理解してもらいます。被災地の中の病院や、人々が自分の家が損壊して避難し、生活をする避難所、自宅、そういう中で必要とされる看護に関連する知識や技術を学生に教えていますが、なかなか現場を見るチャンスはありません。そこでDVDなどの映像で、実際に被災地の現場や看護師が、どんな活動をしているかを見て、まずはイメージ化を図ってもらい、その中で看護師としてやらなければいけないことは何なのかということを、学生自ら考えてもらう方法を取っています。
そのほかには、災害が起きたばかりの急性期といわれる48時間以内、あるいはその後1週間というのは、すべて病院の中も損壊している状況ですので、まずは急性期としての救急看護的な看護の内容が求められ、その後、人々が自分の生活を取り戻していくところでは、また違った看護が展開されなくてはなりません。そういう意味では、災害の時間軸に沿った看護が必要です。また活動現場によっての特殊性もありますので、こういったことは知識だけではなかなか理解することは難しいですが、だからといって被災地に連れて行くことも難しいので、シミュレーションという形で被災想定をして、学生たち自身が被災者や救護看護師になって、実際に模擬の被災者にどんな看護を提供したらいいのか、ということを体験学習としてやっています。災害時には、看護の技術も通常の病院とはまた違った特色があります。例えば被災者を担架で運んだり、たくさんの傷病者が出たときに、傷病者の重傷度、緊急度を考えて被災者の致傷の優先度、搬送の優先度を考えるためのトリアージというものがあります。これも身に付けてほしい重要なこととなっています。
災害は、必ず起きるということも確かではありませんし、うちの学生は1学年140名おりますので、いっときにそういう所に連れて行って実習を展開することは不可能ですので、どうしてもシミュレーションや演習や訓練という形で、いろいろ課題を想定してやっております。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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