本文へスキップ グローバルナビへスキップ
iTSCOM.net

HOME > 防災インタビュー > アメリカ式 子供達への危機管理教育プログラム[1]

防災インタビュー

地域防災を考えるプログラム「サロン・ド・防災」共同企画

vol.
166
アメリカ式 子供達への危機管理教育プログラム
[その1]

2010年3月5日

長谷川 祐子氏 在日米海軍司令部地域統合消防隊 予防課課長

プロフィール

私は在日アメリカ海軍基地の消防隊予防課で働くという大変ユニークな経験を、過去18年にわたり過ごしてきました。同僚は日本人ですが上司はアメリカ人、サービスを提供する対象がアメリカの軍人さんとその家族ということで、アメリカの消防隊の考え方や規則など、アメリカ本土の消防隊と同じコンセプトで仕事をしています。ちなみに資格試験もアメリカ人と同じものをアメリカで受けて取得しています。

アメリカの子ども向け消防プログラムの様子

アメリカの消防と日本の消防の違い

当然のことながら、アメリカと日本の火災安全規則も違いますし、器具の違いもあります。 例えば今、日本で大変話題になっている煙感知器。アメリカでは1970年代後半から、もう設置が義務付けけられています。

日本とアメリカは歴史も違いますし、考え方もだいぶ違います。また、消火戦略などの違いも存在します。例えば、江戸時代の破壊消防は、屋根の上に穴を開けて煙を追い出してから消火をするということをやっていました。 実は現在のアメリカも破壊消火をやっているのです。でも日本では今は、破壊消防のようなことは実施されていません。そのようにやり方も消防の戦略も、いろいろと違っています。

でもアメリカの消防隊が日本の消防隊と一番違うのは、実はPublic Education(公衆への教育)と言われている「火災予防教育」です。特に子どもに対する消防の教育は、現在、アメリカの子どもへの危機管理教育のモデルとなるほどの水準と楽しさで、1970年代後半より全米で教えられております。アメリカではこのような積極的な公衆教育というのが非常に盛んです。

このアメリカの公衆への火災予防教育ですが、1980年代から現代に至るまで、大変な発展を遂げました。1950 年から1970年にかけて産業が盛んになるとともに、アメリカでは数多くの火災が発生して、多くの人命と財産をなくしたという歴史があります。火災犠牲者の増加が止められなかったために、実は予防教育へ国を挙げて取り組むようになったのです。その当時、トルーマン大統領から、大統領命令が出ました。トルーマン大統領は「全国の消防隊、一体君たちは何をやっているんだ。これだけ多くの人の人命と財産が失われているではないか。消防隊の中に閉じこもっていないで、外に出て住民と顔と顔を合わせて、そして調査をしなさい、話をしなさい。そして、何が問題なのか、何に困っているのか調べなさい」と言ったのです。そうやって作った指導要綱の予防教育を「Sell the program(売り込め)」とまで言ったのです。さあ、全国の消防隊は大変です。一生懸命探し出して何かを作ることになりました。その中で本当に数多くの秀逸なプログラムが作られていきました。

子どもに対する消防の教育とは…

最初に子どもが自分で考えて、自分の力でサバイバルできるように教育をしていきます。子どもは親に頼るのではなく、自分の力でサバイバルを実施します。次に、さまざまなツールを使って子どもに分かりやすく、彼らの目と耳に働き掛けるようにクラスを行います。そして、消防署に親しむことができるように仕掛けます。その結果、火災予防につなげていく、そういう教育です。

教育に対する評価システムがあります。
1番のキーポイントは火災による死者、けが、損害を減少できる教育であるかどうか、ということ。
2番目に担当地区の調査を行って、ターゲットをよく絞り込んであるかどうか。
3番目に同程度の規模のほかの都市のプログラムを参照して、それより優れたものであるかどうか。
また、長期間そのプログラムが効果的に使えるものかということが検証されます。大変欲張りに検証していると思います。
 最後に消防隊の活動の印象を市民に強く印象づけ、このプログラムの存在が火災の抑止力となり得るものであること、これが教育の評価です。

子どもへのプログラム 〜サバイバルのために〜

子どもへの代表的なプログラムは、Stop Drop and Roll(止まれ、倒れろ、転がれ)、Great Escape(大脱走)、Learn not to burn(火傷しないように学ぼう)、Risk watch(危機を監視しよう)などです。これらの特徴はサバイバルです。

このプログラムを習得することで、子どもは、たとえ幼く、たった一人で火災に出合ったときでも、自分で洋服についた火を消して、そして煙が充満した廊下を身を低くはって進んで、ドアをチェックして、熱ければ、そのドアを開けずに別のルートから逃げ出すことができるようになるのです。火への恐れは大事ですが、でもそれを乗り越えるための知恵を教えていきます。

Stop Drop and Roll(止まれ、倒れろ、転がれ)

Stop Drop and Rollというプログラムがあります。「止まれ、倒れろ、転がれ」、日本語で言うとこのような感じです。これはキャンプファイアー、火遊び、それから台所などの日常生活で、自分で洋服についた火を消すことができるように考えられたサバイバルです。
まずは「ストップ(止まれ)」です。火が洋服についたまま走ると風が起こって、かえって火の勢いを大きくしてしまいます。だから走らない、まずストップなのです。水を求めて走ってもいけません。まずストップ。
それからドロップ。地面に倒れることによって、燃えているところを地面に押し付けることができます。そしてロールです。ごろんごろんと地面に倒れたまま、右へ左へ転がります。転がることによって、洋服についた火が地面と当たって窒息消火をする理屈です。

子どもたちは実際に洋服に火がついたときに、このやり方を知っていれば、落ち着いて火を消して、自分の火傷を最小限にとどめることができるのです。実は、このサバイバルというのは、アメリカの消防士たちが作りました。
アメリカでは子どもの火遊びが、昔から実は、とても深刻です。FBIが関与する子どもの犯罪のナンバーワンが、子どもたちの火遊びです。特に好奇心でライターやマッチをつけて遊ぶ10歳以下の子どもたちというのは、火をつけた子ども自身が火の犠牲者になります。子どもは普段、火を見ればすぐ逃げ出します。でも自分の火遊びで火災を起こした子どもたちは、自分で火を消そうとして、そこにとどまります。そのために自分まで火をかぶることになり、自分が火傷をして、そしてひどいときには亡くなってしまうのです。

火災で出場した消防士たちは、小さな子どもの遺体を前にして、「マッチやライターで遊ばないように」といくら注意しても遊ぶのであれば、せめてこの火傷が小さいうちに火を消させよう、何とかこの悲劇を繰り返し起こさないようにしようという決意のもとに、この方法を考え出しました。いわば消防士の心がこもったプログラムというわけです。

Stop Drop and Roll(止まれ、倒れろ、転がれ)の様子

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を一部改定して掲載しています。

FM salus

イッツコムの安心安全サービス

  • 利用料無料!地震、火災、鉄道遅延…あなたの必要に合わせた災害情報をメールでキャッチ!「安心マイレスキュー」
  • テレビプッシュ

このページの先頭へ

Backnumber

会社/採用情報 ご利用の前に 個人情報保護方針 ユーザビリティ リンクについて 広告について 契約約款 |

© its communications Inc. All rights reserved.