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安心安全情報
防災インタビュー
地域防災を考えるプログラム「サロン・ド・防災」共同企画

「まちづくり」に関わる「住宅の耐震化」
[その3]

2008年6月20日

石川永子氏 財団法人墨田まちづくり公社 まちづくり専門員 首都大学東京大学院 都市科学研究科 中林一樹研究室

墨田区の簡易耐震制度について

墨田区の耐震改修助成制度は、北部に木造密集市街地を抱えている地域性を考慮した、全国的にも珍しい特徴が3点あります。

1点目は、一戸建てや長屋といった形態の借家が多いことを受けて、住宅の所有者だけでなく、賃貸して居住している方も助成対象であることです。

2点目は、老朽家屋が多い現状を受け、国が基準としている耐震補強の技術基準(1.0)に満たない補強にも助成金を出すというものです。現実的な路線を考えての苦肉の策でもありますが、少しでも耐震補強の普及がすすみ、区民の生命を守りたいという願いが込められています。

3点目は、被害が大きくなると考えられる地域や、高齢者世帯の住宅の耐震化に手厚く助成をしている点です。

現在、この助成制度をもとに、墨田区耐震補強推進協議会という、町内会と建築士と行政で構成される団体が、精力的に活動しており、だんだんと、耐震相談や補強実績が増えてきているというところです。

耐震補強の普及には、地域性を考慮することが重要ですので、他にもこのような自治体が増えたら良いのではないでしょうか。

リフォームのついでに耐震補強

このような様々な助成制度がありますが、それでも耐震補強というのは敷居が高いと思います。そこで、よく言われることではありますが、リフォームの機会に耐震補強をするというのも、一つの考えだと思います。

現在、リフォームの業界の実績がどんどん伸びており、そういう機会に相乗りしていくような形でできる耐震補強のしくみづくりが必要だと思います。

木造住宅の耐震化とまちづくり

今までお話しした木造住宅の耐震補強というのは、基本的に世帯ごとの問題ですが、これを「まちづくり」の観点からとらえてみたらどうなるでしょうか。特に防災面で危ないと言われているような地域を、根底から安全性を向上していくためには、どのようしたら良いかを考えていきましょう。

ご近所、両隣、三軒隣と言われますが、ご近所の住宅というのは概して同じような時期に建てられていたり、似たような構造や間取りだったり、借地借家等といった社会的に同じような課題を抱えていることが多いようです。そして、古いまちでは、近所同士が仲良しで交流が頻繁な地域もあります。このような地域では、耐震補強について、「家族だけの問題として悩まないで、ご近所みんなで考えてみたらどうか」と思っています。ご近所同士で同じ問題意識が芽生えれば、行政も専門家を派遣して問題の解決を支援したり、隣近所で耐震補強した住宅が増えていけば、地震が来ても家の前の道路が通行しやすくなり、まち全体の安全にも貢献すると考えられます。私は、「協調建替え」ならぬ、「協調耐震」と言っているのですが、こうした取り組みに、通常の助成制度に上乗せして支援するような優遇措置も考えられないかと考えて、しくみづくりを検討しています。

町内会役員会にて活動計画を練る/京島地区まちづくり協議会計画部会の様子

地元の大工さんたちとの連携

地域で普及活動をしていて、大切なことのひとつに、「まちの工務店の大工さんを、活動にどのように取り込むか」があります。地域内に住み活躍されている大工さんは、地域の住宅の特性を把握していて耐震補強の技術もあることが多いのですが、補強箇所の計画に関して、経験的な勘に頼るところが多いように感じます。結果的には、正式に設計事務所が構造計算したものと現実にはあまり変わらないこともありますが、助成制度で自治体から助成金を受けるには、簡易な耐震改修でも正式な耐震診断と設計が必要です。一方で、大工さんの経験にばかり頼るというのも問題がありますし、技術面での向上ができないという側面もあります。

そのようなジレンマと問題意識の中で、先程お話した、「耐震モデルハウス」では、墨田区の建築士事務所協会の専門家と京島の4つの工務店の大工さんが協力して、知恵を出し合いながら施工するというスタイルをとりました。普通、工務店というのは一匹狼というか、1つの現場に、大工の棟梁が何人も入って施工するのは、お互い誇りがあることからも、あり得ないことです。しかし今回は、「安全なまちづくりを考える」という趣旨のもと協力し、技術共有しながら、耐震モデルハウスをつくりました。このような活動を積み重ねることよって、そのまち全体の耐震工事の技術が上がるのと同時に、居住者だけでなく施工業者にも広く耐震化工事の重要性を知ってもらうことにつながると考えています。

耐震補強の普及手法は、正解が1つというわけではなく、難しい問題ですが、地域の住宅を熟知し、日常の修繕など多くの顧客を持っているまち場の大工さんが、補強工事をやりやすい環境をつくることも、居住者への普及活動と同じくらい重要なことだと思います。

耐震モデルハウス施工時の写真
※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を一部改定して掲載しています。
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