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防災コラムVol.266

携帯電話への一斉配信による、災害情報提供が本格化

公開月:2012年3月

2012年3月21日

やっと足並みが揃った、携帯電話各社の一斉配信による災害情報の提供についてみていく。

すっかり馴染みになった緊急地震速報

2011年3月11日に発生した、東日本大震災。その後、幾度となく余震が発生した。そのたびに携帯電話から、緊急地震速報を知らせるアラーム音が鳴り、「ああ、緊急地震速報だ。」と、音と情報が結びつくようになった方も多いのではないだろうか。
NTTドコモでは「エリアメール」の名称で、実は2007年12月からサービスを開始しており、au(KDDI)やソフトバンクモバイルでも同様のサービスが提供されている。現在は、いわゆるスマートフォンでも受信できる機種が出てきている。

携帯電話への一斉配信の仕組みとは?

こうした情報は、従来の電子メールによる情報伝達手段とは異なる。電子メールは、メールサーバの処理能力を超えると、送受信が遅延したり、届かないこともあり得る。対して、携帯電話への一斉配信で用いられる情報伝達は、携帯電話の基地局から発信される「電波」によって、携帯電話に情報を伝達するもので、多数に送信しても遅延したり、届かなかったりすることはない。テレビやラジオのように、電波によって情報を受信するのと同じような仕組みだ。また、情報を発信する基地局を特定しているため、該当する地域にいるときだけ、必要な情報が届くようになっている。

緊急地震速報だけではない

前述のNTTドコモが提供する「エリアメール」では、緊急地震速報だけではなく、緊急情報も届けられる。
実際、東日本大震災に伴って発生した福島第一原子力発電所の事故や火力発電所の点検作業によって電力発電量が不足した際、3月14日~16日と3日間にわたって、内閣官房節電啓発等担当の蓮舫担当大臣(当時)名として「国民の皆様へ」と題した節電を要請する趣旨の情報が届けられた。
また、2011年9月の台風15号接近に伴う河川の増水により、名古屋市では100万人超の住民に避難指示・勧告が出されたが、この情報も「エリアメール」で発信されたという。
緊急情報を発信したい、政府や自治体にとっても、

  • 情報を届けたい住民などの情報(メールアドレス等)を知っておく必要がない。
  • そのため、個人情報の漏洩といったリスクがない。
  • 迷惑メールフィルタによるメール不達ということがない。
  • 情報伝達の遅延もない。

といった数々のメリットがある。
元々、「エリアメール」で情報を送信したい自治体は、NTTドコモに対し、月額2万円(税別)のシステム利用料を支払う必要があったが、同社は東日本大震災を機に、2011年7月から利用料を無料とすることを決めた。これにより、「エリアメール」を使って緊急情報を発信する自治体は増加し、2012年3月9日現在の公表されている自治体数は900に迫り、全自治体の半数を超えるほどになっている。

緊急情報発信元年とも言える2012年、もちろん考えるべき課題もある

今回した例示した名古屋市では、課題も浮き彫りとなった。100万人超という多数の避難対象者に「エリアメール」で情報を伝えたはいいものの、「詳細は市のホームページで」と記載していたため、大量アクセスによってホームページが見られず、結果的に情報を得られないという事態となった。また、「○○地区の一部」という表現が、自分の住まいに当てはまるかどうかわからないという声もあった。
また、「エリアメール」を防災訓練に使用した自治体もあり、「緊急性の高い情報を訓練に使用するのはいかがなものか」という意見がある一方、「緊急地震速報とは異なる緊急情報のアラーム音を体験でき、有意義だった」という意見も出るなど、賛否両論だった。
2012年、au(KDDI)、ソフトバンクモバイルが揃って1月末から、対応機種はまだ少ないが、携帯電話への一斉配信の仕組みを用いた緊急情報の提供を始めた。住民にとってはいいことばかりかもしれないが、考えてみて欲しい。今まで、緊急情報の伝達手段と言えば、防災無線が主流だった。しかしながら、無線設備の維持には多額の費用がかかり、経年劣化した設備の更新に頭を抱える自治体も多いようだ。それに加え、そもそも閉め切った屋内では情報が聞こえにくい。こうした声から、電子メールによる情報提供や、今回取り上げた携帯電話への一斉配信による情報提供、さらにはTwitterといったソーシャルメディアを駆使する自治体も増えてきた。
こうした流れは、自治体の担当者にとっては大変頭の痛い問題であるはずだ。というのも、多岐にわたる情報伝達手段のために、それぞれ別々の入力画面から情報を入力する必要があるからだ。まずはパソコンの操作に慣れていなくてはならず、それぞれの入力画面の操作方法を習得するのも一苦労。誤配信をしたら多大な影響が出る。いざ災害時となっても、マニュアルを見てスムーズに操作できるのか、どの情報提供手段(防災無線・ホームページ・メール・SNS等)から順に提供するのかなど、課題は尽きない。

レスキューナウが考える解決策

自治体の緊急情報提供に関し、情報入力の仕組みを一元化すれば、問題も解決するという考え方もあるが、必ずしもそうではない。システム化には多くの費用がかかるし、システムが変更になったら、またさらに改修費用をかけなくてはならない。そして、そもそも情報を入力するのは広報や防災担当課などの職員であることに変わりは無い。休日、夜間に災害が起きたとき、どのように対処するのか。
弊社、レスキューナウでは2000年の設立以来こうした問題の解決に取り組んできた。危機管理情報センターでは、24時間365日人的な専門オペレータが危機管理情報の取材・入力・配信を行っている。レスキューナウにメールやFAXで情報さえ出せば、ポータルサイトやメールサービス、あるいは放送サービスなど、あらゆるメディアに情報を展開することが可能だ。
また、緊急情報を受け取ったとき、一人ひとりの個人はどう行動すべきか。自治体の職員はどのように対処すべきか。そうしたノウハウを提供していくことも我々の重要な使命であると考えている。
新たな情報伝達手段へと技術が進化するごとに、防災・減災のあり方も変わってくる。「新しい考え方を常に取り入れ、危機管理情報のハブとして世の中の役に立ちたい」。それが我々の思いである。

 

(文・レスキューナウ危機管理情報センター 長越敬直)

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