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防災コラムVol.262

地形図から地域の地形・災害を知る

公開月:2012年2月

2012年2月15日

地域の地形や災害への危険性を地形図での作業を通して調べてみよう。

地図作業の大切さ

新旧の地形図を比較すると地域の地形や土地利用の変化が分かる

小学生の頃、社会科の授業で学校周辺の地図を作った方も多いと思う。商店や公園など普段の生活でよく使う場所を描き込むのに加えて、トラックが多く行き交う交差点や幅の狭い路地など通学時に注意する場所に色を塗ったこともあるだろう。また、最近では通学路沿いの民家に協力を求めて、事件に巻き込まれそうになった時に駆け込む「こども110番の家」の旗やプレートをつける施策を多くの自治体が採り入れているので、これを調べて地図にシールを貼ったりすることもあると思われる。
こうした地図作りは、自分の住む地域を空間的に把握する能力を養うとともに、公共施設を管理する人、通学路で見守る近所の人など多くの人によって自分の生活が支えられていることを子供が理解する機会ともなっている。特に普段の生活にとって注意すべき危険な場所を意識させ、自らの行動に結び付けることは「危機管理」の第一歩とも言えよう。
他方、東日本大震災や台風・豪雨による洪水・土砂災害が多発した2011年は、自分の住む地域が自然災害に対してどの程度のダメージを受けるかについても関心が高まった年となった。ここ数年、自治体がハザードマップを整備し各家庭に配布するようになったが、見てもよく分からない、貰っただけで置いたまま、という声もよく聞かれる。
受け身ではなく、自ら身体を動かして経験したことは後になっても記憶に残るものである。今回は、家庭で簡単にできる自分の地域を知るための地図上での簡単な作業を紹介しよう。

地域の高低差を知る作業

作業に先立って、まずは地図を買うことから始めてみよう。
道路地図や住宅地図などあらゆる地図の基になっているのが国土地理院発行の地形図である。大都市圏では、大規模な書店の地図コーナーには地形図の棚があり、全国の地形図が置いてあることが多い。また、地方都市では、地域に根ざした老舗の書店であれば地元の地形図はほぼ間違いなく置いているので聞いてみると良い。このほか、国土地理院からの取り寄せも可能である(別途送料が必要)。
日本の領土をすべてカバーしている地形図の縮尺は、5万分の1、2万5000分の1に大別されるが、地元の地形を調べる今回の目的には縮尺の大きい2万5000分の1地形図を購入する(1枚270円)。また、三大都市圏や都道府県庁所在地に住んでいる方は更に詳しい1万分の1地形図も良い(1枚450円)。
購入したら、記号などは凡例を見ていただくとして、今回は等高線(同じ標高を結んだ線)に注目してみよう。2万5000分の1地形図では、10mおきに細い実線、50mおきに太い実線が引かれているので、その線をペンでなぞったあと、線と線の間を色分けして塗ってみる。標高の高いほうを暖色系(赤や黄色など)、低いほうを寒色系(緑や青色など)で塗り分けるとその地域の起伏が視覚的にも分かりやすくなる。特に、住宅が大半を占め、地形図を漠然と眺めているだけでは土地の高低差がよく分からない都市部では、この作業が有効である。例えば、コンクリートに覆われ、地中に雨水が浸透しにくい都市部では、局地的な豪雨で浸水することが多いが、その際に周囲の土地よりわずかでも低く窪んでいるところは雨水が集まり一層浸水しやすくなる。自宅の近所、あるいは通勤・通学ルートにどのような起伏があるのかを作業を通じて確認してみよう。

昔の地形図と比較してみる

国土交通省の各地方測量部では旧版地形図のweb上での閲覧やコピーの受付を行っている

続いて、上級者向けとして昔の地形図との比較を紹介する。
最近では一部地域を対象に新旧の地形図が比較できるサイトもあるが、原則的には対象となる旧版地形図のコピーを申し込むことになる。公式には、国土地理院(茨城県つくば市)または国土交通省の各地方測量部(札幌・仙台・東京・富山・名古屋・大阪・広島・高松・福岡・那覇)に申し込むが、国立国会図書館や各都道府県の図書館でもコピーが可能である。
昔の地形図は現在と比べて地図記号が全く異なること、また一色刷りであることから等高線と道路や河川などとの線の違いが分かりにくいなど見辛さもあるが、まずは大雑把に土地利用の違いを確認してみよう。大都市圏に近いところでも高度経済成長期以前であれば宅地はまばらで、郊外ならば丘陵、原野、水田や畑などの耕作地、また沿岸部であればまだ陸地がなく海が広がっていることなどが確認できるはずである。
災害はその場所の現在の土地利用よりも元々の地形に対応して発生することが多い。例えば、曲がりくねって流れていた川を直線化したところでは、大雨で溢れると相対的に低い元の川筋が浸水しやすい。また、沿岸部で海面を埋め立てたところは地震による液状化、台風時の高潮の被害を最も受けやすい場所となる。こうしたことは、新旧の地形図を比較しなければ理解しにくい。
そして最後に、これが最も大切なことであるが、作業した地形図を片手に実際に地域を歩き、地形などを改めて自分の目や足で確認してみよう。防災対策の一環として、自らの住む地域がどのような災害を受けやすいかを知る一助として、今回紹介したような作業をおすすめしたい。

 

(文・レスキューナウ危機管理情報センター 水上 崇)

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