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防災コラムVol.261

歩き出す前に考え直そう。徒歩帰宅- ②防災力の担い手と企業対応

公開月:2012年2月

2012年2月8日

東日本大震災が発生し、想定される東海・東南海・南海地震、首都直下地震への備えが叫ばれるなか、あなたが帰宅困難者になったとき徒歩で帰宅するつもりなら、考え直す必要がある。徒歩帰宅は本当に可能なのだろうか。

帰宅しないメリット

植え込みがトイレ代わりになると感染症の発生源に

震災発生直後、周囲に「知人がいない」・「拠り所とする場所がない」という状況は、それだけでもストレスとなる。勤務先や学校での同僚や学校の先生、クラスメイトという存在は、日常ではあまり意識しないが、平時から自分の安全や安定を確保してくれる存在といえる。しかし、震災発生後に徒歩帰宅をするということは、二次災害や事件に巻き込まれるリスクがあり、たとえ自宅へ無事にたどり着いたとしても、疲れ果てて動けなくなるのがオチである。

人命救助の主役が寝ていては困る

ひとたび震災が発生すれば、警察・消防・自衛隊は手一杯の状況となる。必要なところに公的な支援が届くのは、相当な時間を要してからだろう。阪神・淡路大震災では、ガレキで生き埋めとなった人の約8割が、身近にいる「普通の人々」に救助された。
無理な徒歩帰宅をして動けなくなるのではなく、周囲の人命救助や助け合いにエネルギーを傾けた方が賢明である。

社員を事業継続の要員に

企業が社員全員を徒歩で帰宅させた場合、帰宅時に事件や事故に巻き込まれることも考えられるほか、次に、いつ出社できるのか見通しが立たないという問題がある。帰宅困難になった社員を留まらせることができれば、近隣住民からの支援要請や行き場のなくなった人々への支援を行うことができるだけでなく、企業にとって重要な業務を継続させることもでき、早期の事業再開に向けて、貴重な戦力を確保することになる。

行き場のなくなった人々のために

徒歩や待機が困難な人を受け入れる場所が必要(写真はイメージ)

東日本大震災では、社屋から避難した社員が会社に留まるのか、徒歩帰宅をするのかの指示もないまま、解散させられてしまったケースがある。また、東日本大震災が発生した当日、駅に人が殺到して危険な状態となったため、JR東日本は駅舎を閉鎖した。そのことについて、都知事から抗議を受けた話はまだ記憶に新しい。
しかし、多くの企業や学校が社員や学生を一晩だけでも留まらせることができるように備えていたら、人が分散し、現場の混乱はもっと小さく、行き場のなくなった買い物客や観光客を駅で受け入れることができただろう。

女性の徒歩帰宅は危険!

震災後の徒歩帰宅をテーマにした書籍「彼女を守る51の方法」では、主人公とともに行動する若い女性が複数の男性に乱暴されるストーリーが描かれている。
阪神・淡路大震災や東日本大震災においても、被災地で女性が乱暴される事件が複数報告されている。女性の身の安全を確保するためにも、単独行動はせず、多数の同性で行動し、自衛することが重要である。
いざというとき、「助け合い」の気持ちや行動だけではなく、人間の「負の面」もあらわれることがあることを知る必要がある。

徒歩帰宅を考える前にやるべきこと

混雑した駅構内は群集災害のリスクが高まる(写真はイメージ)

「家族と連絡がつかない」・「小さな子どもがいる」・「近所で火災が発生しているかもしれない」。徒歩帰宅をしたい理由は人それぞれにある。しかし、徒歩帰宅では必要とされるときには絶対に間に合わない。これから起きる震災のためには、「耐震性の高い住居選び」・「家具の転倒防止」・「ガラスの飛散防止」といった対策を優先すべきであろう。また、子供が身の回りのことをこなせるよう教育したり、安心して助けを求められるようなご近所さんを作っておくことも、重要な防災対策である。

何のための徒歩帰宅なのか

2回にわたり徒歩帰宅を取り上げたが、筆者は徒歩帰宅のメリットは皆無と考えている。「体力が残っているうちに家に早く帰りたい」という気持ちは十分に理解できる。しかし、職場や教室などで留まることが可能な人々は、直ちに徒歩で帰宅しなくてもいい人ではないだろうか。帰宅困難者とは、留まるところがない「買い物客」・「出張中のサラリーマン」・「観光客」などであり、彼らのような立場の人たちを支援するのが、本当の意味での帰宅困難者対策といえる。無理な徒歩帰宅は、震災の被害を拡大させる可能性があることを、一度立ち止まって再考すべきではなかろうか。

 

(文・レスキューナウ危機管理情報センター 大脇桂)

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