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防災コラムVol.258

歩き出す前に考え直そう。徒歩帰宅―実効性とリスク編

公開月:2006年9月

2012年1月18日

東日本大震災が発生し、想定される東海・東南海・南海地震、首都直下地震への備えが叫ばれるなか、あなたが帰宅困難者になったとき徒歩で帰宅するつもりなら、考え直す必要がある。徒歩帰宅は本当に可能なのだろうか。

首都直下地震の帰宅困難者は約650万人

首都直下地震では、東日本大震災以上に帰宅が困難になることが予想される。

帰宅困難者や徒歩帰宅の問題は、地震災害とセットで語られることが多い。鉄道やバスが利用できなくなり、帰宅困難者を駅に滞留させたり、徒歩で帰宅させることを支援する訓練が数多く開催されている。内閣府中央防災会議(2005年)によると、主な帰宅困難者は、サラリーマンや学生、買い物客などの昼間人口で約650万人に及ぶと想定されている。台風災害では屋外は看板や折れた傘が飛び、浸水が発生するなど危険が多いため、徒歩帰宅が語られることはない。しかし、震災でも余震でビルからガラスやエアコンの室外機が落下したり、構造物が倒壊するなど、十分に危険な状況になることが想定されるが、なぜか徒歩帰宅を支援する動きが盛んである。

徒歩帰宅は可能なのか

徒歩帰宅が可能な距離を10km~20kmまでとする考え方があるが、果たしてそうなのだろうか。人の歩行速度は平均4km/hといわれるが、それは良い天気で休みの日に運動公園のような歩きやすい場所を、歩きやすい格好で、自分のペースで歩いた場合の話である。通勤ラッシュの時間帯、たくさんの人が行きかう中では思うように歩けない。子どもや足の悪い人がいれば集団のスピードは必然的に低下する。震災時における徒歩帰宅の平均時速は2km/h程度と考えたほうが良いだろう。翌日以降、歩いて出社し会社や組織の事業継続を担うなら、片道5kmで2時間半、毎日往復5時間というところが限界だろう。片道でも2時間半で帰宅できないなら、徒歩帰宅は控えた方が賢明だ。また、途中でトイレに行きたくなることもあるだろうが、震災時において、まともに使えるトイレはほとんどないと考えた方がよいだろう。

最近流行のドロップバーの自転車で通勤するツーキニストも他人事ではない。震災後の悪路はパンクや故障が発生しやすく、転倒による負傷の危険も高い。たとえパンクレスタイヤを履いていたとしても、当日の帰り道は相当な混雑が予想され、思うように進まないことが想定される。

徒歩帰宅できる人はどんな人か

帰宅困難訓練の際は、地震で想定される被害をイメージしながら参加しよう

帰宅可能な人とは、普段から徒歩や自転車で通っている人と考えた方がよさそうだ。電車を利用している大多数は徒歩帰宅にメリットはなく、無事に帰宅できるという保障はない。また、東日本大震災による関東の被害は軽微であるため、当時の帰宅困難の状況は参考にならないだろう。なぜなら、想定される首都直下地震では、ライフラインは寸断されているため、家に帰っても電気は使えない、テレビは観られない、シャワーも使えない。そして、激震のため広範囲にわたって住宅は倒壊し、火災が発生しているかもしれない。大多数の店舗では営業が困難となるため、コンビニで商品を購入することもできなければ、カフェなどで時間をつぶすことは不可能である。私たちは、こうした状況を考え、行動しなければならない。
学校や保育所に子供を預けているなど、様々な事情で帰宅しなければならない方達も多い。しかし、首都直下地震の場合では物理的に帰宅が困難な状況になることが想定されるため、学校や保育所など地域コミュニティでの対策を講じておく必要があるだろう。

危険すぎる「災害時だからルールを破ってもいい」という雰囲気

帰宅困難者支援訓練のルートとなっている鉄道沿線・主要道路周辺の住民が恐れていることがある。それは、無秩序な帰宅困難者による物品などの無断借用や窃盗、トイレや食糧の提供を集団で強要する行為、道路周辺や民間私有地内での排泄行為。また、車道を帰宅者が埋め尽くし緊急車両の走行を妨げる行為、冬期は焚き火で暖をとろうとする行為により火災の発生も危惧している。

阪神・淡路大震災(1995年)では、コンビニが停電し決済ができないこともあり、店頭の商品をお金を払わずに持ち出すケースが報告されたほか、公園の生け垣などで排泄するケースがあり、感染症の流行が懸念される事態となった。また、焚き火を行っている住民と火災を恐れる住民との間でトラブルも発生している。
災害により発生する帰宅困難者の存在は、大量の徒歩帰宅を生む原因となり、そこから派生する影響は、ある意味、自然災害のそれよりも厄介なものである。

「困ったときはお互い様」とはいうけれど・・・

日ごろから助け合ったり支え合う関係は、いざというときにも頼りになる。それがなければ、他人の偶然による助け合いを期待するしかない。幸いなことに、日本人の性格なのか、どんな被災地でも赤の他人同士が支え合う姿・美談がメディアを通じて伝えられる。それは今後の震災でも「どこか」にはあると思う。しかし問題なのは、あなたが助けてほしいと思ったときに、その助けがそばにあるとは限らないことではないだろうか。

次回は、徒歩帰宅をテーマに、防災力の担い手と企業の対応について述べることとする。

 

(文・レスキューナウ危機管理情報センター 大脇桂)

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