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防災コラムVol.248

避難情報の話をしよう

公開月:2011年11月

2011年11月2日

私たちは、いざというとき自治体から避難指示・避難勧告などの避難情報が発令されることを期待するが…。

自治体が住民に避難情報を伝えるという前提

災害時は計画通りいかないものなのか、それとも、計画通りにいかないから災害時なのか。災害が発生し、ひとたび停電すれば、テレビやパソコンで避難の情報を確認することはできず、通信施設が被災すれば、携帯電話で連絡を取り合ったり、情報を確認することはできなくなる。そもそも関心が低かったり、仕事が忙しかったりすると、災害情報を積極的に収集しないこともありえる。命を守るためにある避難情報を「必要な時に自治体から住民に伝える」という前提には考える余地がある。

あなたの命は誰が守りますか?

身近な場所の危険性について事前に把握しておこう

「防災対策は自助・共助・公助で」という言葉。一度は聞いたことがあると思う。公助は3番目にすぎない。当たり前だが、自分の命は自分で守るもの。自分の命を他人任せにしてはいけない。まして、避難情報を無視したり、避難しない人のために豪雨の中、職員が説得を続けたり、結局、危険が差し迫って消防や自衛隊による救助が必要になったりするのは、救助者を危険にさらし、災害対応全体に悪影響を与える行為である。

メールやTwitterなど新しい技術での情報発信が進むが

防災無線や広報車のみで避難を呼びかけていた時代。聴覚障害者は、防災無線で避難を呼びかけられてもわからなかった。外国人観光客などは、日本語で避難を呼びかけられてもわからなかった。 最近では自治体によるメールやTwitterなどで避難情報を発信する取り組みが広がり、文字情報を得る機会が整備されつつある。また、数は少ないが、一部の自治体では災害用携帯サイトなどを英語、中国語、韓国語で対応するところもある。
このように、安価で比較的操作が簡単な技術が普及し、これまで情報から取り残されていた人たちをカバーすることが少しずつできるようになっているが、そのようなサービスを提供していない地域や住民でもサービスの存在を知らなければせっかくの情報は伝わらない。まして、携帯電話やインターネットを普段利用しない人にとっては、メールやTwitter、ホームページで情報提供しているといわれても困ってしまう。

自治体の負担は増えるばかり

いつも何気なく利用している道が浸水することもある

避難情報を伝える上で、ひとつの新しい技術がすべての問題を解決することはなく、従来の方法をやめることはできないまま、同じ情報を複数の媒体に発信しなければならない状況となっている。自治体の負担は増えるばかりで、設備の費用面だけでなく、オペレーションの習熟や体制構築が課題となる。情報を発信する媒体が複数あれば、それだけ配信遅延や誤配信の原因ともなりうる。ひとつの操作で複数の媒体に流す仕組みがあればいいが、そのようなシステムを作るためには先立つものが必要だ。

メールを送ることは容易だが、情報を送ることは容易ではない

災害情報をメールなどで配信する自治体も増えてきた

受け取った情報を正しく理解し、正しい行動をとるためには、事前の学びや準備が重要である。災害時ほど、情報は要約され、迅速さが重視される。事前の準備がない者にとって、受け取った情報から「何をすればいいのか」「どこにいけばいいのかわからない」という状況に陥ることもある。だからといって情報を詳しく書けば、「情報のどこが変わったのかわからない」「重要な情報が伝わるのに時間がかかる」ということになる。
例えば「避難指示」「避難勧告」「避難準備情報」の言葉には、名称と印象の間にギャップがある。強制力を伴うもっとも重要な情報はどれなのか、制度を知らなければまずわからない。ときに「避難命令」などの誤った言葉がメディアを通じて流れるが、そのような制度はない。情報を要求する側にも情報を正しく理解し、行動するために相当の準備が必要であることは明白だ。

危機管理において情報は不可欠。情報がない場合の対処方法も不可欠。

危機管理において正しい情報から適切な対応をとることが重要だ。しかし、他人から情報をもらうことが前提となっているだけではいけない。時に、「情報がない」「情報がこない」という状況から「想定」に基づき「想像」し、判断していかなければならないこともある。危機管理のプロは手に入れられる情報から判断し、常に安全を確保できるよう行動をとる。仮に避難に関する情報が自治体から伝わってこなくても、自ら情報を集め、過去の経験や知見から事前に避難する基準を考えておき、基準に該当すれば自発的に避難する。様々な災害や危機に対して「情報がない状況」への対処方法を身につけることが危機管理の第一歩である。

情報が伝わらないことを前提とした避難の基準づくり

各家庭でも避難情報が来ないことを前提とした避難の基準づくりを進めるとよい。結局は自宅や会社・通勤経路の周辺のことは自分が一番良くわかっている、氾濫しそうな河川や崩れるかも知れない崖や斜面を普段から目にしている。災害に至らなくても過去の台風や風水害の経験、自治体が作成する被害想定などから、特定の気象条件に応じて避難勧告が発令されるパターンや発令基準を整理し、自発的に避難できる判断力を身につけることも必要だ。

自治体に期待すること

住民が自ら考えて避難できるようになれば、自治体からの情報が「伝わった・伝わってない」「遅い・早すぎ」「避難の必要があった・なかった」などという不毛な議論にはならないはずだ。自治体には、住民自身による有効性の高い自主避難ができるようになるためにも、これまで避難勧告を発令した実績をまとめて公表することを期待したい。

自治体がこれまでの災害対応で培った情報発信のノウハウは、今後の災害に備える上で参考になるだけでなく、過去の災害で避難情報を受け取れていなかったことを住民が自覚することで、今後の避難情報を受け取る方法を再検討するきっかけとなる。

 

(文・レスキューナウ危機管理情報センター 大脇桂)

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