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防災コラムVol.241

2011年台風12号から浮かび上がった課題

公開月:2006年9月

2011年9月14日

2011年9月3日10:00前、台風12号が高知県東部に上陸。今回の台風では上陸前から各地で大雨による被害が相次いだほか、紀伊半島では記録的な豪雨となった。

遠く離れた場所でも被害が

土石流が山間部を一気に下り、家屋や車を飲み込む(撮影:2006年7月 長野県岡谷市)

北日本~西日本の広い範囲で大きな被害を出した2011年台風12号。上陸したのは9月3日10:00前だった。ところが、9月1日から関東・甲信地方では雨足が強くなり、1日20:00までの24時間雨量が、群馬県伊勢崎市で297.5mm、藤岡市で271.5mm、前橋市で210.5mmとなり、いずれも観測史上最大となった。この豪雨のため、群馬県内では浸水被害が220棟以上、埼玉県内でも110棟以上の浸水被害が出た。また、これよりも前の8月29日、波浪注意報が発表されていた静岡県下田市の白浜大浜海水浴場では、海水浴客十数人が沖に流される事故も発生した。このほか、前線が停滞していた北海道では、台風から暖かく湿った空気が流れ込み、6市町村で浸水被害が発生。鉄道の運転見合わせも相次いだ。
このように、台風本体から離れた場所でも大雨の被害や波による事故などが起こることを、改めて実感させられる形となった。
そして、台風が接近・上陸するタイミングになると、台風の東側では暴風雨への警戒が必要となる。今回の台風では紀伊半島がその位置にあたり、南から暖かく湿った空気が大量に流れ込み、紀伊山地では次々と積乱雲が発生。台風の速度が遅かったため、奈良県や和歌山県では長時間にわたって大雨が降り続け、奈良県上北山村では8月30日からの雨量が1,800ミリを超える記録的な豪雨となった。この豪雨の影響で、奈良県や和歌山県を中心に土砂災害が相次いで発生し、これまでに死者・行方不明者が100人を超える、平成に入ってから最悪の台風災害となってしまった。

土砂災害発生の危険度を知る

山間部を走る鉄道路線では長期見合わせなどの影響が出ることもある(撮影:2006年7月 長野県下諏訪町)

奈良県や和歌山県で相次いで発生した土砂災害。今回の台風では、自宅ごと土砂に流されて亡くなった方も多い。大雨で川が増水しているため、自宅で待機した方が安全であると判断した人も多かったという。2011年7月に発生した新潟・福島豪雨の際、新潟県三条市では浸水被害に備えて、自宅の2階以上に避難するよう住民に呼びかけた。これは、河川の氾濫によって流水に巻き込まれたり、家屋の浸水被害が懸念されたためだ。平野部では河川が氾濫すると一気に住宅街へと水は流れ込む。
一方、今回の台風で被害が多発した奈良県と和歌山県は、紀伊山地に囲まれた山間部。住民は傾斜地やその周辺に居住している。そのため、土砂崩れ・土石流にも警戒しなければならない。つまり、山間部においては安全な場所へ早めに避難することが何よりも重要なこととなる。
しかし、学識経験者らの議論を踏まえて作成された『国土交通省 土砂災害警戒避難ガイドライン』(2007年4月)では、「土砂災害は発生場所や発生時刻を正確に予測することが難しい現象である」と表記している。つまり、専門家や自治体でさえ正確に避難するタイミングを見極めることは難しいというわけだ。ただ、複数の情報を総合することで、土砂災害発生の危険性がどれだけ高まっているのかを把握することはできる。その情報が以下の4つである。(突発的に発生する豪雨は除く)

1)土砂災害警戒情報
都道府県と気象庁が共同で発表する情報で、過去の土砂災害発生の実績値をもとに設定した基準を超える雨量が予想されると、市町村別に発表される。この情報が発表された場合は、土砂災害が発生する危険性が高まっていると考えた方がよい。

2)自治体のハザードマップ
ハザードマップを作成している自治体では、その図中に「急傾斜地崩壊危険区域」・「地すべり危険地域」・「土石流危険渓流」などの記載がある。こうした「土砂災害危険箇所」に該当する地域や河川には、それぞれの危険性を示した看板や標柱を立てることが義務付けられているため、これらの地域に該当する場合は、早めの避難を心掛けよう。

3)降水量
地域や状況によって異なるが、一般的に24時間雨量が200ミリに達すると土砂災害が発生するおそれがあると言われている。気象情報などで翌日までの予想雨量、または、降り始めからの累積雨量が200ミリを超えた場合は注意が必要だ。特に、台風進路の東側に該当する地域では雨脚が強まるため、降水量の情報にも注意が必要だ。

※「○○豪雨に匹敵する豪雨」などのように、過去に大きな被害を出した災害名を使って関係機関が注意を呼びかけた際は、記録的な雨量を観測する可能性が高い。

4)土砂災害警戒システム
実際に観測された雨量をもとに、土砂災害の「危険度概況」・「危険度予測」の情報を自治体のホームページから閲覧できる。危険度を色で分けているため、どの程度の危険性があるのか把握することができる。

以上4つの情報をもとに、いち早く土砂災害の危険性を確認してほしい。

先にも触れた通り、土砂災害の発生を予測するのは難しい。また、記録的な豪雨の場合には従来のハザードマップとは異なる場所で災害が発生する。そのため、山間部で安全な場所を確保するのは難しいことも考えられる。住民が「いつ、どこへ、どうやって」避難すればよいのか。今回の記録的豪雨は、山間部における住民避難の難しさを大きく浮かび上がらせる結果となった。

 

(文・レスキューナウ危機管理情報センター 三澤裕一)

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