1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報
  4. 防災コラム
  5. 活発な噴火活動を続ける霧島連山・新燃岳
  1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報

防災コラムVol.215

活発な噴火活動を続ける霧島連山・新燃岳

公開月:2011年2月

2011年2月9日

1月下旬から活発な噴火活動を続ける霧島連山・新燃岳。噴火活動の現状と今後の防災上の注意点について整理し、被害の軽減に努めたい。全国には富士山を含め108の活火山が存在する。決して他人事ではない。

爆発的噴火による被害が拡大

宮崎県小林市から臨む霧島連山(2010年12月12日撮影)

2011年1月26日午前7時31分。宮崎・鹿児島県境に位置する霧島山系の新燃岳(標高1,421m)が噴火。実に約300年ぶりとなるマグマ噴火が始まった。当初は火口上約200mの高さまで噴煙が上がる程度であったが、26日午後からは噴火の規模が次第に大きくなり、一時は噴煙の高さが火口上2,000mにまで上昇した。噴煙は北西の風に流され、風下側の宮崎県都城市などでは視界が悪くなるほどの大量の降灰に見舞われた。
1月27日午後には、今回の一連の噴火活動で初めてとなる爆発(爆発的噴火)を観測、噴煙は火口上3,000mに達した。この爆発では降灰のほか、爆発の衝撃波が空気を伝わって窓ガラスなどを振動させる空振(くうしん)が、新燃岳から200km以上離れた福岡県、長崎県などの九州北部や、高知県、愛媛県などの四国西部でも観測された。
1月28日には地下からのマグマの上昇に伴い、火口内に溶岩(溶岩ドーム)の形成が確認された。その後、溶岩(溶岩ドーム)は火口をふさぐように拡大し、この一部を吹き飛ばす形で爆発的噴火が断続的に観測されている。このうち、2月1日朝の爆発では、新燃岳に近い鹿児島県霧島市で空振によって住宅の窓ガラスが割れる被害が約100件報告され、割れたガラスで1人が軽傷を負っている。

気象庁は1月26日、新燃岳の噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から3(入山規制)へ引き上げる火口周辺警報を発表した。また、火口から約4kmの範囲では大きな噴石に、火口から約3kmの範囲では火砕流にそれぞれ警戒するとともに、火山周辺の広い範囲で小さな噴石を伴う降灰、大きな空振、降雨時の泥流や土石流に注意するよう呼びかけている。

約300年ぶりのマグマ噴火

今後の噴火活動がたどる経過やそれに伴って発生する可能性のある災害を推測する上で重要なことは、過去の噴火の形式や災害の状況を把握することだ。
新燃岳で被害を伴うような規模での最近の噴火記録は、1959(昭和34)年2月の噴火である。この際も今回と同様の爆発的噴火が発生し、山麓の宮崎県小林市・高原町、鹿児島県霧島町(当時)に大量の噴石や降灰による森林や耕地への被害があった。しかし、1959年の噴火が、マグマによって熱せられた地下水が急激に蒸発することで発生した「水蒸気爆発」であったのに対し、今回の噴火では、既に溶岩(溶岩ドーム)が火口内に形成されていることからも分かるように、マグマが直接地上に噴出してきている点で噴火形式が大きく異なっている。
今回の噴火形式と類似している記録として、今から約300年前の江戸時代中期(18世紀)に発生した新燃岳の噴火活動がある。この噴火は火口内に溶岩が上昇するとともに火砕流が発生し、死者3人、負傷者31人、家屋焼失600棟あまりという大きな被害が出た。
今後の噴火活動の見通しについて、気象庁は2月3日、火山噴火予知連絡会の見解として「当分の間は現在と同程度の溶岩を吹き飛ばすような爆発的噴火を繰り返す」と発表しており、噴火活動が今後も継続することを示唆している。

噴火活動への今後の注意点は

2000年の三宅島・雄山の噴火で発生した泥流。神社のほとんどが泥流で埋まった。

噴火活動の活発化に伴い、以下の現象が発生する可能性が指摘されている。

  • 火砕流:火口を埋めた溶岩ドームが爆発とともに一部が破壊され、高温のまま山麓に一気に流れ下る。1991(平成3)年の雲仙・雲仙岳の噴火では、火砕流により43人が死亡・行方不明となったことを記憶している方も多いだろう。
    なお、火砕流については、気象庁は既に火口から3km以内を火砕流の警戒が必要な範囲としており、これに対応して自治体ではこの範囲の住民に避難勧告を発表している。
  • 土石流:山の斜面に積もった火山灰などの大量の噴出物が雨水を含んで流れ出し、山麓まで高速で流れ下る。今後、雨の多い季節を迎えることで、土石流発生の危険性が高まることが懸念される。また、積もった火山灰が水分を含んで斜面を流れ下る泥流にも警戒が必要だ。
    また、これ以外に注意すべき点として、気象庁では以下の対応を呼びかけている。
  • 噴石・降灰:降灰が激しい時はできるだけ外出を避け、屋内に避難する。やむを得ず外出する場合にはヘルメットを着用するなどして噴石から身を守ること。また、視界が悪くなるため、車を運転する場合はライトを点灯し減速する。火山灰は水を含むと滑りやすくなるので、雨で路面が濡れている時はスリップにも注意すること。
  • 空振:火山に近い地域では、強い空振によって窓ガラスが割れたり扉が急に開閉することがあるので、むやみに近づかないようにする。また、窓ガラスにテープやシートを張るなどして補強しておくことも有効。
    地元の気象台や自治体では火山活動に関する情報を随時発表しているが、噴火の瞬間に行動するのは個人レベルとなる。危険を感じたら避難する、身を守るという行動を迅速に起こす上でも、普段から山の様子に注意を払っておいていただきたい。

先が見えない災害

火山噴火予知連絡会が今後の活動について「当面続く」と発表したように、噴火災害は、火山活動の見通しがたたないケースが多い。地震や豪雨といった他の自然災害は突然の発生と共に被害が発生し、その後は救援復旧へと進む。しかし噴火災害は、この後の状況が悪化するのか沈静化するのか、いつまでこの状況が続くのか、長期に渡り悩み苦しみ続けることとなる。
被災者の避難生活が長期化し、生活設計がとても困難となることも噴火災害の特徴のひとつといえる。それだけに支援者には、長期的な生活不安やストレスを抱える被災者に十分配慮した活動が求められる。

(文・レスキューナウ危機管理情報センター 水上 崇)

copyright © レスキューナウ 記事の無断転用を禁じます。

会社概要 | 個人情報保護方針