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防災コラムVol.214

人身事故発生!運転再開までに時間がかかってしまう理由

公開月:2006年8月

2011年2月2日

鉄道で人身事故が発生すると、運転再開までになぜ時間を要するのだろうか。

多発する人身事故

人身事故発生現場に到着したレスキュー隊

通勤や通学で首都圏の鉄道を利用していると、人身事故による運転見合わせや遅延に遭遇し、「また人身事故か」、「最近、人身事故が増えたなあ」と感じる人もいるのではないだろうか。
それもそのはず、総務省統計局『日本の統計2010』によると、全国のJR・私鉄で発生した鉄道人身事故の発生件数は2004年度で324件、2005年度で368件、2006年度で383件と、増加傾向にある。つまり、1日に1件以上は人身事故が発生している計算となり、とても重い現実だといえる。
なお、レスキューナウが2010年(1月1日~12月31日)に配信した鉄道人身事故の情報は、影響線区を含めて2,318本におよんだ。

事故が起きた際、利用者が一番の問題として直面するのは、「いつ運転を再開するのか」ということ。人身事故の場合、運転再開までに時間がかかるケースが多いため、目的地になかなかたどり着けず、予定していた計画どおりにいかなくなる。そのため、列車が動かないことに腹を立て、駅員を怒鳴りつける利用者も見受けられる。しかし、運転再開までに時間がかかってしまうことは、利用者側もある程度は理解しておくべきだろう。
そこで今回は、人身事故発生から運転再開まで、事故現場ではどのようなことが行われているのかみていくことで、利用者の理解を深めたい。

人身事故となれば関わる機関も多い

ホームドアが設置されている駅は全国的にはまだ少ない

例えば、東京都内の駅で人身事故が発生したことを想定し、事故現場における関係機関の活動一例を、「事故発生~関係機関到着」→「救助活動」→「列車運転再開」の順でみていく。

1)事故発生~関係機関到着
【鉄道会社】
人身事故が発生。事故に遭った列車の運転士は、列車の運行を管理する輸送指令に人身事故発生の一報を入れる。付近を走行中の列車の運行を停止させる措置をとり、事故の状況を把握。運転士や事故発生駅の駅員は事故状況の確認を行い、状況を確認した輸送指令は、消防・警察へ通報。

【東京消防庁】
鉄道会社の輸送指令から119番通報を受理。東京消防庁の総合指令室は、事故発生駅の管轄消防署などから、※1ポンプ隊3~4隊、レスキュー隊2隊、※2救急隊1隊、※3指揮隊1隊に救助出場を指令。
【警視庁】
鉄道会社の輸送指令から110番通報を受理。事故発生駅の管轄警察署から警察官が出動。

【東京消防庁】
各隊が続々と事故発生駅に到着。まず※4大隊長と指揮隊は鉄道会社関係者と接触し、事故状況の聴取と救助活動の方針を決定。事故状況から救助に時間がかかる場合、現場指揮本部長か東京消防庁の総合指令室の判断で、事故発生駅に近く、出場可能な※5DMAT指定病院を選定、出動要請を行う。
【東京DMAT】
東京消防庁からの要請を受け、ドクターカーを所有しているDMAT指定病院の医師・看護師は、ドクターカーに医療資器材を積載し、事故現場へ出発。
【警視庁】
管轄警察署から事故調査の警察官などが到着し、鉄道会社関係者や運転士から状況を聴取。

2)救助活動
【東京消防庁】
レスキュー隊は、列車などを持ち上げる油圧式救助器具や空気式救助器具など、救助に必要な資機材を救助工作車から現場まで運ぶ。大隊長とレスキュー隊の隊長は、列車の電源遮断、車輪止め、付近の列車の運行状況などを確認し、二次災害防止の措置を施した後、救助活動を開始。
【警視庁】
警察官は救助活動のために、駅ホーム上の乗客などを事故現場付近から遠ざけ、現場の安全確保を行う。

【東京消防庁】
救急隊の救急救命士は、レスキュー隊とともに列車車両の下などに進入し、救助活動と並行して救助者の救命処置を施す。※6ハイパーレスキュー隊が出場している場合は、ハイパーレスキュー隊の救命士が救助活動と並行して救助者の救命処置を行う。指揮隊は本庁の総合指令室と無線交信にて、活動の状況を逐一報告。
【警視庁】
事故調査の警察官は、運転士や駅員・事故の目撃者などから状況を聴取して、実況見分開始。

【東京消防庁】
ポンプ隊は3隊のうち、1隊は防水シートで事故現場を覆ったり、レスキュー隊の活動支援など、救助活動全体のバックアップ。2隊は線路内や駅ホーム上で上下線の列車の運行監視を行う。
【東京DMAT】
東京DMATの医師は、レスキュー隊の救助活動と並行して、救助者に対して現場で直接、医療処置を行う。東京消防庁の隊員は、DMATの医師、看護師の現場での安全管理や消防の指揮下で円滑に活動できるように全体のサポートを行う。
【東京消防庁】
東京DMATの医師が救命処置を施し、レスキュー隊による救出スペースの確保。救助者の全身を固定する担架でしっかりと確保し、鉄道車両下から救出。その後、要救助者をホーム上へ引き上げ、レスキュー隊やポンプ隊など出場している消防部隊が協力して、救助者を救急車内まで搬送。
【東京DMAT】
救急車内で最低限の救命処置を施す。
【東京消防庁】
救助者の救助が完了し、レスキュー隊は現場を確認し撤収作業に入る。救急隊は救急車内でDMATの医師、看護師とともに負傷者の救命処置を行う。指揮隊は事故の状況を調査し、最終的な確認を行い、現場検証をしている警察、鉄道会社関係者に引継ぎ、現場を引き上げる。

3)列車運転再開
【鉄道会社】
事故車両について走行に問題がなければ、事故車両を移動。移動後に駅係員が線路内に降り、線路などの設備に異常が無いか点検を開始。
【警視庁】
事故車両が移動した後、駅係員とともに線路内で実況見分と確認作業を行う。

【警視庁】
実況見分と確認作業などが終了し、現場を引き上げる。
【鉄道会社】
最終的な安全確認が終了。線路内で作業をしていた警察官と鉄道会社関係者全員の退避を確認し、輸送指令に報告。輸送指令は現場係員からの最終的な報告を受け、全線で列車の運行を再開。

上記はあくまで一例であり、要救助者が死亡した場合は事件性の有無も調べられるため、運転再開までの時間がどれほどかは状況によって異なる。

※1 ポンプ隊:消火・救助・危険排除等にあたる隊。
※2 救急隊:傷病者に適切な処置を行い、医療機関へ搬送する隊。
※3 指揮隊:被害状況などを把握し、現場で出場部隊全体の指揮にあたる隊。
※4 大隊長:消防吏員の役職のひとつ。現場の指揮をとる。
※5 DMAT:災害医療などの専門的な訓練を受けた医師・看護師などから構成され、災害発生直後から活動できる機動性を備えた医療チーム。なお、ドクターカー所有の東京DMAT指定病院は、日本医科大学付属病院・国立病院機構災害医療センター・東京医科大学病院などである。
※6 ハイパーレスキュー隊:救助活動・救急・消火を同時に行うことができる隊。建物倒壊や土砂災害などの大規模災害発生時に対応。

利用者も対策を講じておこう

これほどの作業を実施するとなると、列車の運転再開まで時間がかかってしまうのもやむを得ない。鉄道会社関係者は、消防や警察に協力し、少しでも早い運行再開に努めている。
運転再開のめどを周知してもらえれば利用者としてはありがたいところであるが、多くの機関と人が関わっているなかで、見通しがつきにくいのが現状だ。
私たち利用者はそれらを知ったうえで、鉄道運行情報のメール配信サービスを事前に登録しておくなどの先を見越した対策を講じ、少しでも遅延による影響を軽減させたい。
そして、日ごろから、早めの出発・経路の変更・連絡などを習慣づけておくことが、大きな備えとなるだろう。

(文・レスキューナウ危機管理情報センター)

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