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防災コラムVol.211

強風と闘う鉄道~羽越本線脱線事故から5年

公開月:2006年8月

2011年1月12日

最大限の安全と安定輸送の確保-その両立に向けての取り組み

2005年――日本の鉄道にとって試練の年

事故現場遠望。右手が橋梁、左手の白い建物には慰霊碑が建立されている。

今から5年前の2005年は、日本の鉄道にとって試練の年となった。 3月2日に土佐くろしお鉄道宿毛駅列車衝突事故(運転士死亡、車掌と乗客の9人負傷)を発端に、3月15日には東武鉄道伊勢崎線竹ノ塚駅踏切死傷事故(踏切横断者2人死亡、2人負傷)、4月25日にはJR西日本福知山線脱線事故(死者107人、負傷者560人以上)といった事故が続いた。そして12月25日夜には、JR東日本羽越本線脱線事故が発生し、乗客5人が死亡、32人が負傷している。

今なお社会的に禍根を残しているものもあるが、それぞれに原因は調査されている。羽越本線脱線事故については2008年4月、当時の航空・鉄道事故調査委員会(現在の運輸安全委員会)により、予測がほぼ不可能な最大瞬間風速40m/s台程度の猛烈な局所的突風で車両が傾いたとの結論が出された。
また、JR東日本も再発防止・安全性向上に向けた取り組みを継続し、毎年12月を目処に状況を報告している。事故から丸5年を迎えた2010年も、12月9日にJR東日本よりプレスリリースが発表された。
そこで今回は、「強風と闘う鉄道の現状」を追ってみたい。

そのとき猛烈な突風が吹き抜けた

最上川橋梁には防風柵や風速計が増設された。

無人駅の北余目(きたあまるめ)駅を下り、かたわらの山形県道360号線沿いに北上すると、左手前方にトラス橋が見えてくる。これが第2最上川橋梁で、全長は600m以上。日本三大急流として知られる川もゴールまであと10km足らずといった、庄内平野北部の真ん中に位置している。
JR東日本羽越本線脱線事故は、12月25日の19時過ぎ、この橋梁の南側で発生した。秋田発新潟行上り特急「いなほ14号」が、橋梁を通過直後に突風にあおられ、6両編成全車両が脱線。前部3両が築堤下に転覆、うち先頭車両が線路脇にあった養豚場の堆肥舎に激突し、大破した。
すぐに懸命の救助活動が展開されたが、猛吹雪と暗闇の中で困難を極めた。当日以後も暴風雪が続いたため復旧作業に時間がかかり、運転再開は年をまたいだ2006年1月19日にまでずれ込んだ。
庄内平野では、西高東低といわれる冬型の気圧配置で暴風が吹き荒れることは珍しくない。事故当時も暴風雪・波浪警報が発表されていたが、直接的には鉄道の運行是非判断に使われていなかった。また、現場付近のJR設置の風速計や気象庁酒田測候所で記録された最大瞬間風速は、いずれも約20m/s前後と当時の運転抑止規制となる風速30m/sには達していなかったとされる。

各種気象情報を多角的に捉え、さらなる向上を目指す

JR東日本は「羽越本線事故原因究明・対策検討委員会」を設置し、運転再開時までに現場付近の風速計増設、規制値の見直しおよび当面の徐行運転、気象情報の活用等を決定。同年11月には現場付近に防風柵を設置し、徐行運転は解除された。
それ以降、風速計増設や防風柵設置は全社に拡大していった。2010年12月現在で、風速計は事故前の約3倍となる857基が、防風柵は事故前の3路線3区間から7路線16区間に設置されている。
風速計の記録や予測値からの分析により、早期に運転規制を行う強風警報システムは、2010年度に在来線全296区間への導入を完了した。
さらに、2006年2月にはJR 東日本研究開発センター内に防災研究所を新設し、気象現象や地震を含めた災害についての研究を行っている。
2007 年には、現場から程近い余目駅にドップラーレーダーを設置。局地的気象観測の強化を図るとともに、列車運行判断に活用するための突風探知システム開発に向けた研究が継続されている。

自然現象との闘いは続く

余目駅に設置されたドップラーレーダー。

2010年8月、JR西日本山陰本線の余部橋梁架替工事が完了した。
1912年に完成した初代の鋼製トレッスル橋は、その独特な景観が多くの人を魅了する一方、国鉄最晩年の1986年12月28日に発生した突風による列車転落事故(車両が下の工場を直撃し6人死亡6人負傷)を契機に風速規制が強化され、結果的に冬季を中心に強風による運転見合わせが多発し交通の難所となっていた。
1991年以後、地元を中心に各種対策が検討され、2002年に決定された架替方針により、総事業費30億円をかけプレストレスト・コンクリート橋による整備が進められた。また、防風壁も採用されたことから、風速規制が緩和されることになり、運転見合わせ回数の軽減が期待されている。

このように、鉄道施設の改良には、長い期間と多額の費用を要する。
安定輸送確保が求められる一方で、鉄道をはじめとした公共交通機関の役割が大きく変わろうとしている厳しい現状がある。長引く不況や過疎化の進行はもとより、いわゆる「1000円高速」の影響もあって、地方を中心にわき起こっている路線存廃問題だ。それを踏まえつつ、事業者の努力や姿勢を利用者の視点で見つめることも、今後の「安全」を考える上で大切なのではないだろうか。

(文・レスキューナウ危機管理情報センター 宝来英斗)

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