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防災コラムVol.206

「戦後」「災害」の窮地を救ってきた競馬

公開月:2006年8月

2010年12月1日

秋も深まると、競馬は一年で最も盛り上がるシーズン! それはさておき、実は、競馬と災害には切ってもきれない縁があることをご存じだろうか。

不況のあおりを受ける競馬場

復興を目的につくられた上山競馬場。現在は廃止されている。

年末の有馬記念に向けて、競馬の世界はクライマックスを迎えている。熱心な競馬ファンならずとも、年の瀬の気配を感じるイベントになっているのではないだろうか。 ところが、華やかなレースが行われている競馬場が、災害時において社会貢献度の高いスポットであることは、あまり知られていない。

その昔、不況時においても一定の人気と収益を保ってきた公営競技(競馬・競艇・競輪・オートレース)。地方自治体の貴重な財源のひとつともなっていたのだが、社会環境の変化による「ギャンブル離れ」や長引く不況のあおりを受け、各地で存廃論が起こっているのが現状だ。なかでも地方競馬はここ10年で11もの競馬場が廃止されており、さまざまな話題づくりをして生き残りをかけている。しかし、あの「ハルウララ」ブームを巻き起こした高知競馬場も「オグリキャップ」を生んだ笠松競馬場も、いまだ厳しい存廃論の渦中にある。

そんな現状の競馬場ではあるが、競馬法第1条では、競馬を開催できる市町村について定められている。そこには「著しく災害を受けた市町村」という文言があり、これは、公営競技自体が、戦後の復興支援としてスタートした経緯を踏まえたものと思われる。

被災地の復興を支えた競馬

広域避難場所指定の標識(札幌競馬場)。

戦後の復興だけでなく、以降も、競馬はさまざまな災害による被災地の復興に尽力してきた。1956年には、豪雨災害を受けた山形県上山市が、復興のため市営競馬の開催指定を受けて1958年から上山競馬場を運営し、その後の市の財政を大きく支えた。
また、1995年の阪神淡路大震災で、JRA阪神競馬場が壊滅的被害を受けたが、その年、京都競馬場での代替開催となったG1・宝塚記念は、復興支援競走として行われ、売上金の一部が義援金として寄付された。なお、その宝塚記念で優勝した「マヤノトップガン」のオーナーは、親族を震災で失った地元神戸市の開業医だったという心打たれるエピソードも残っている。
バブル崩壊後の財政悪化によって上山競馬場は2003年11月に廃止となり、現在は場外馬券場となってはいるが、競馬には、日本の被災地の復興を支えてきたという歴史があるのだ。

防災対策と競馬場

2010年現在、日本全国には27か所の競馬場が存在するが、そのほとんどが災害発生時の避難場所に指定されている。阪神淡路大震災の際に壊滅的となった阪神競馬場においても、被害のなかった厩舎地区は、周辺地域被災者の避難場所として使用された。
さらに、1997年に観客スタンドがリニューアルされたJRA福島競馬場は、地元の福島県福島市と防災協定を結んでおり、災害時の飲料水を確保する大型貯水槽を持つことで知られている。そして、JRA東京競馬場も、地元の東京都府中市と災害時の井戸水提供等の協定を結んでいるのだ。
このほか各地の防災訓練等で、数万人以上の収容人数がある広大な施設が会場として活用されることがあるほか、2004年の新潟・福島豪雨の際には被災地の廃棄物仮置場として、2001年に廃止されていた三条競馬場の跡地が活用されたという例もある。

挙げてみれば、競馬場は災害や防災のネタにこと欠かない。こういった事実は、あまり広く知られているとはいえないため、意外に感じた人も多いのではないだろうか?

いつもと違う目線から

「競馬」というと、競馬ファン以外の人たちには特に「賭けごと」というイメージが先行しがちだが、災害時には多くの人々を救える側面があるということを知っていただきたい。
競馬場が、我々の重大な窮地に一役買っていることがわかれば、世間の競馬に対する見方も少なからず変わるかもしれないし、地方競馬場が次々と廃止されていく現状を打開する策も見出せるかもしれないと思う。
また、火山噴火から10年経った三宅島で、2010年11月、復興の大きな鍵となる観光客誘致を目的にバイクレースが開催された。馬とバイク、賭けごととそうではないという違いこそあるが、こういった「レース」が被災地復興に一役買っているひとつの例といえるだろう。

テレビや新聞がG1レースに盛り上がっているこの機会に、競馬ファンもそうでない人も、今回紹介したことを踏まえたいつもと違う目線で競馬や競馬場を見てみてはいかがだろうか。

(文:レスキューナウ危機管理情報センター)

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