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防災コラムVol.204

JR湖西線-強風と向き合う鉄道路線

公開月:2006年7月

2010年11月17日

京阪神と北陸地方を結ぶ重要路線でありながら、冬になるとダイヤの乱れが多発するJR湖西線。その原因となっているのが特有の強風だ。そこで、JR湖西線が行っている強風対策と、強風を逆手にとったユニークな取り組みを紹介する。

さまざまな顔を見せる湖西線

近江舞子駅に設置された風力発電施設。

琵琶湖の西岸に沿って走るJR湖西線。1972(昭和47)年7月に開業したこの路線は、それまでの米原経由に代わって京阪神と北陸地方を短絡する目的で開通した。現在、大阪・京都と金沢・富山を結ぶ特急「サンダーバード」「雷鳥」が1日20往復以上も運転されているうえ、京阪神地域の都市圏拡大に伴って通勤路線としても重要度を増している。
開業から40年足らずと歴史は浅いが、線内に踏切はひとつもなく、多くの区間が高架となっているなど線路の規格は高い。そのため車窓からの眺めは良く、大阪方面から乗ると、左側には比叡山や比良山などの山並み、右側には琵琶湖と美しい車窓風景が楽しめる。琵琶湖畔の春は桜、秋は紅葉が美しく、夏は湖水浴、冬は山々に点在するスキー場へと沿線へのレジャー目的の利用が多いこともこの路線の特色だ。
このように、数々の重要な輸送目的を持ち、運転本数も多い湖西線であるが、冬になるとしばしばダイヤが乱れることで問題となっていた。その原因が風である。

湖西線を悩ませる強風「比良おろし」

近江舞子駅に設置された風力発電施設。

湖西線の西側には、比叡山や比良山からなる標高1000m級の比良山地がそびえている。この比良山地は日本海にも近く、海からの北西の風が山を越えて琵琶湖に向かって一気に吹きおろしてくる。地元ではこの比良山地からの強風を「比良おろし」と呼んでおり、その強さは10分間の平均で30m/sを超える台風並みの強風が吹き荒れることもある。湖西線のルートは、ちょうどこの比良おろしの強風を受ける位置にあることから、徐行運転による列車の遅れや運転見合わせが多く発生する。なかでも、強風が吹き抜ける比良~近江舞子駅間は影響を受けやすく、1997(平成9)年6月には、比良駅に停車していた貨物列車が強風にあおられて脱線・転覆する事故も起きている。
このような慢性的なダイヤ乱れを引き起こす強風への対策として、JR西日本は2008(平成20)年12月までに防風柵を設置した。この柵は、比良~近江舞子駅間の山側に、レール面から2mの高さで設置され、風の遮蔽(しゃへい)率は約60%とされている。また、柵の設置と同時に線内の運転規制値を緩和し、従来は風速20m/s以上で徐行、25m/s以上で運転見合わせとしていたものを、風速25m/s以上で徐行、30m/s以上で運転見合わせと改めた。
防風柵設置後の輸送障害の変化については公式なデータはないが、強風に伴う輸送障害の件数を比較すると、設置前の1年間は19件であったのに対し、設置後1年間は16件と若干の改善がみられる。もっとも、気象現象は年ごとの変化が大きいので、今後はより長期間でのデータ蓄積による分析が期待されるところである。

強風を逆手に取った施策-風力発電

この強風を逆手に取って、発電に利用しようと試みている駅がある。強風の影響を最も受けている区間にある、近江舞子駅だ。 駅に降り立つと、ホームの端に4枚の小さな羽が回っているのが目に入る。これが風力発電装置であり、装置の下には現在の発電量などが分かるようになっている。発電能力は一時間あたり最大で約1キロワットで、駅の照明の一部をまかなう。
今のところはまだ試行段階のようだが、今後は駅のみならず線路沿いに小さな風車を多数設置し、さらに多くの電力を生み出す構想もあるとのこと。発電に際し、化石燃料によらない自然のエネルギーを利用することで、二酸化炭素排出量の削減にも寄与できるという。

大雨、大雪、強風、濃霧…1年を通じて発生するさまざまな気象現象は、鉄道にとって常に輸送への障害となってきた。今回紹介した防風柵と発電施設は、これまで長年悩まされてきた気象による輸送障害の緩和への施策のひとつとして、鉄道の気象への新たな向き合い方の例となるだろう。

(文・レスキューナウ危機管理情報センター 水上 崇)

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