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防災コラムVol.196

情報は何のためにあるのか-気象情報を活用しよう-

公開月:2010年9月

2010年9月15日

2010年の6月~8月の平均気温は、気象庁が統計を開始した1891年以降、最も高温となっており、気象庁は「異常気象」であるとの見解を示した。局地的な大雨、そして連日のように続く猛暑。これまで私たちが意識していた「夏」とは明らかに異なっている。こうした異常ともいえる気候に対して、私たちに求められていることとは何なのだろうか。

相次ぐ「観測史上1位」

2010年夏、ニュースなどの報道でよく見聞きしたのが「観測史上1位」という言葉ではないだろうか。台風や前線、そして南から温かく湿った風が多く流れ込むなどの影響で、北海道・山形県・京都府などで1時間雨量の観測史上1位を記録。また、太平洋高気圧の勢力が強くなったことから西日本を中心に連日の猛暑日となったほか、東京では2010年8月31日、熱帯夜の日数が観測史上最多となる48日目となった。京都府では、9月に入っても39.9℃という観測史上1位の最高気温値を更新している。
こうした異常気象のため、各地で土砂災害の発生や、熱中症で救急搬送される人々が相次いだ。そこで今回は、大雨と熱中症について関係機関から発表される情報にスポットをあててみていきたい。

意外と役立つ「所により」

急激な天候の変化に備え、事前に気象情報を読み解く力を備えたい。

短時間での激しい雷雨(いわゆる「ゲリラ豪雨」)は、事前の予測が難しいといわれている。確かに、今の技術では降る場所をピンポイントで予測することには限界があるようだ。ただし、気象庁が発表する気象情報には、局地的に降る可能性があることを知らせるための表現があることを知っておきたい。それは「所により」という表現である。気象庁『地域に関する用語』によると、「現象が地域的に散在し、複数の地域を指定して表現することで冗長な表現になる場合に用いる。」となっており、局地的に激しい雷雨が予想される場合にも用いられている。正確にピンポイントで予想するものではないが、住んでいる地域の天気予報で「所により激しい雷雨」などといった表現があれば、その地域のどこかで激しい雷雨の可能性があるということである。これを知っていれば、事前に準備や対応を考えることができるので、私たちにとって大いにメリットのある情報だろう。もし雷雨にならなかったとしても「当てにならない」と思うのではなく、「降らなくてよかった」と安心すればよい。

自治体のメールサービスを熱中症対策に

2006年頃から災害情報や防犯情報のメール配信サービスを開始する自治体が増えてきている。これは、突発的な災害や事件が増えていることから、「緊急時に迅速かつ正確な情報発信を行いたい」という自治体側と、「今、何が起きているのかすぐに知りたい」という住民側の思いが強くなってきたことが背景として考えられる。
では、記録的な猛暑日が続いていた8月、自治体は熱中症についてどのような情報提供をおこなっていたのだろうか。東京都八王子市の例を参考にみていきたい。
東京都八王子市では下記のメールを送信し、市民に対して熱中症への警戒を呼びかけた。

「熱中症に十分ご注意を」

本日午前9時00分、八王子市では気温が30度を超えました。
また、熱中症と関係の深い暑さ指数(WBGT)も高まり、運動をする場合は厳重警戒が必要とされていますので、次のことを心がけてください。
○熱中症の危険が高いので激しい運動や持久走など熱負担の大きい運動は避ける。
○体力の低い方や暑さに慣れていない方は運動を中止する。
○炎天下や非常に暑い場所での長時間の作業は避ける。
○スポーツドリンクや薄い食塩水(500mlに1gの割合)などをこまめに補給する。
○体調が悪いときは無理をしない。
○こまめに休憩をとる。
※屋内でも、風通しが悪く、湿度の高い場所で熱中症になるおそれがあります。
また、体温調節が苦手な高齢者や乳幼児は特に注意が必要です。

八王子市の例が参考となるのは、「熱中症に気をつけてください」と、ただ注意喚起をするだけでなく、気温やWBGT(=湿球黒球温度:熱中症と関係の深い、暑さの指数)のデータを提示して、熱中症の危険が迫っていることを伝えている点。また、熱中症の予防策が詳細に書かれている点だ。メールは文字として残るため、たとえ予防策を忘れてしまっても携帯電話などをみれば何度でも確認することができる。こうした重要な情報をいつでも確認できるのが、メールサービスのメリットといえるだろう。

情報だけで命は救えない

自らのモバイル端末を危機管理情報の収集用にアレンジしよう。

いつ発生するか分からない地震とは異なり、気象は、起こりうる現象がある程度は事前に把握できる。気象庁のホームページをみると、天気予報や気象注意報・警報・レーダー画像など数多くの情報が掲載されている。また、突風や雷雨の被害が増えていることを受けて、気象庁は2010年5月27日に「竜巻発生確度ナウキャスト」や「雷ナウキャスト」の情報提供を開始。同日、注意報や警報の発表も市町村単位で提供することとなった。このように、気象庁もできるだけ細かい情報を提供することで、気象災害によるリスクを軽減しようと取り組んでいる。
ただし、情報があるというだけでは、誰の命も救えない。本当に重要なのは、私たち受け手側がこれらの情報をいかにキャッチし、活用できるかということである。気候変動の危機が叫ばれている今だからこそ、日ごろから情報をキャッチするための手段を持ち、それを受け取ったときにどのような行動をとるべきか、一人ひとりが事前に考えておくことが求められている。

(文・レスキューナウ危機管理情報センター 三澤裕一)

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