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防災コラムVol.192

高齢者の安否確認・孤独死

公開月:2010年8月

2010年8月18日

社会問題として指摘されている、高齢者の安否確認。私たちにできることはないのか?という視点で、災害時の復旧・復興段階の高齢者対応をヒントに、この問題を考えてみたい。

「生き死に」が把握できない

中越地震の際、ボランティアが日刊発行の手作り新聞をつくり一軒一軒、手渡したという「田麦山日々新聞」の記事。

2010年8月、100歳以上の高齢者の安否が把握できないというニュースが流れ、またたく間にその人数は、全国で200人弱にも至っているという(2010年8月11日現在)。長寿大国といわれている日本において、世界もあきれる現実が浮き彫りとなった。
私たち日本人にとっても、いくら高齢化が進み、都市部を中心に一人暮らしの高齢者に目が行き届かなくなったといっても、これほどまで人の「生き死に」が把握できていないというニュースは衝撃的だった。

複雑に絡む「要因」

内閣府の「平成22年版高齢社会白書」によると、75歳以上の高齢者の人口は1371万人で、これは日本の総人口の10.8%にあたる。
今回のような事態を招く要因にはいくつかあり、一人暮らし高齢者、高齢者世帯、孤独死、死亡届の問題などが複雑に絡んでいる。もちろん、福祉行政や介護サービスの現場にいる担当者やケースワーカーはこういったケースを個別具体的に取り扱い、これまでもその予防に尽力していただろう。しかし、現実問題として、「生き死に」が把握できていない高齢者がいるのは確かなのだ。
ただ、この問題のおおよそ部分が「身近にいる高齢者をどう見守るか」ということを地域、隣近所で共有するという、ベーシックな対応で回避できたかもしれないと考える。

孤独死はなぜ起こるのか

内閣府「平成22年版 高齢社会白書(概要版)」より、高齢者の生活実態に関する調査として「あなたは普段どの程度、人と話しますか?」の回答グラフ。

「孤独死」という言葉が不幸にもよく聞かれるようになったのは、阪神淡路大震災の仮設住宅で、それが頻発したことがきっかけになったと記憶している。このときは、それまで住んでいた家を失い、町を失い、仮設住宅という特殊環境ゆえに周りの目が行き届かなくなったことによるものだった。
後の災害ではこの教訓が生かされ、仮設住宅建設時に一定の範囲で集会所設備がおかれ、集会所と住宅を高齢者に行き来してもらうことで健康管理やコミュニケーションを密にするようにされている。一人暮らし高齢者でも、周りとのコミュニケーションがとれているうちは、病気や事故、あるいは死亡のケースが発生しても、周辺の住民が小さな異変にすぐに気づくことができるからだ。また、仮設住宅入居時の部屋割りも、機械的にではなく、被災前の隣近所を考慮されるようになりつつある。

2004年発生の新潟県中越地震の被災地では、ボランティアが手作り新聞をつくり、毎日夕方に一軒一軒、直接話をしながら手渡しで回る活動などもあった。また、別の水害の被災地では、タオルを持って、やはり一軒一軒たずね歩いたという事例もある。
どちらもその際、“各戸で声をかけ、世間話をしながら様子をうかがい、悩みや健康状態をそれとなく確認する”のが、活動のポイントだった。

少し縁の離れた人の介入

ところが、今回浮上した事態は、それが家族ですら「知らなかった」という、もっと深刻なケース。
距離が近い隣近所には、むしろ迷惑になってはいけないという思いから、何か不具合があっても我慢してしまう場合もあるという。だからこそ、阪神淡路大震災の際の仮設住宅で行われていたように、「おせっかい」と言われても、少し縁の離れたボランティアなどが介入すべき部分なのではないだろうか。
私たちの日常における活動に、そういったものはなかったろうかといくつか探してみた。ところにより名称や手法が幾分異なるが、以下に主なものをいくつか挙げてみる。何かできないかと考えているなら、参加してみてはどうだろう。

1)声かけ・見守り活動
町内会や社会福祉協議会、地域組織などが参加者を募り、高齢者を対象に毎日あるいは定期的に声をかけ話をする活動。参加開始時に声かけの仕方や異常に気づいた際の対処法などガイド・講習があることが多い。

2)配達・配布活動
声かけ活動の派生。声かけだけでは訪問のきっかけがつかめないことから手作り情報紙などを配布しながら高齢者と話をする活動。

3)高齢者の交流スペース
中心市街地の空き店舗の利活用などを兼ねた、高齢者が気軽に通える憩いスペース。地域のNPOが運営している場合が多い。

この問題を「コミュニティの崩壊が原因」とひとくくりに言うことは簡単だ。しかし、その「コミュニティ」はひとつひとつの小さいが大切な「部分」の組み合わせできている。「小さい部分」のどれかであれば、あなたも参加することができるかもしれない。

(文・レスキューナウ:岡坂 健)

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