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防災コラムVol.152

新型インフルエンザ 医療機関や企業でいま何が起きているのか

公開月:2006年6月

新型インフルエンザの流行によって、医療機関では企業の社員から診断書の発行を求められるケースが相次いでいる。

現場では何が起きているのか

多くの企業担当者などが会場に集まった(2009年10月2日インフォコムセミナールーム)

新型インフルエンザの感染は、学校などの教育施設をはじめ企業などにも及んでおり、新型インフルエンザの感染拡大を阻止しようと、様々な対応が取られている。

そのような中、新型インフルエンザに感染し、治癒したことを証明するために企業やその社員から診断書の発行を求められケースが相次ぎ、医療機関の負担が増えているという。こうした現状を踏まえ、実際に医療機関や企業でいま何が起きているのかを確認するため、株式会社レスキューナウは2009年10月2日(金)にシンポジウムを開催した。

パネラーは以下の方々である。

  • パネラー:昭和大学医学部 臨床感染症学 准教授 吉田耕一郎 氏
  • パネラー:NPO法人 事業継続推進機構(BCAO) 理事 深谷純子 氏
  • モデレーター:株式会社レスキューナウ 代表取締役 市川啓一

※注:パネラーの方々のお話は組織を代表したものではなく、あくまで「個人」としてのものであること、ご承知置きください。

診断書の発行は本当に負担なのか

診断書の発行が医療機関に負担をかけているということについて、吉田氏は診断書発行の作業について次のように述べた。

【吉田氏】
診断書を書くにあたり、たくさんの検査を必要とする場合は大変。診断書はほとんどが白紙のフォームであり、理由を含め全て手書き。外来に来るのは、インフルエンザの患者さんだけではないため、何通もとなると大変である。特に基礎疾患のある患者さんの場合は、かなり細かく現病歴や既往歴を聴取するのでかなり時間がかかる。
また、診断書が有料であることを知らず、事務係員に説明を求める患者さんもいることから、医師以外にも負担がかかってしまうことがある。

企業が診断書を求める理由

一方、企業の社員が診断書を求める理由には、診断書の有無によって取得できる休暇(「有給」あるいは「特別休暇」)が異なるためである。ちなみに、シンポジウムに参加した各企業の担当者に挙手でアンケートを実施したところ、「特別休暇」で対応している企業が7社あった。

なお、深谷氏は一律に診断書を求めないことに対して懸念を示し、企業においては柔軟な対応が必要であると述べた。

【深谷氏】
会社にとって診断書が必要な場合もあると思う。既存の特別休暇の運用ルールを変更することで 何か歯止めがないと休暇制度そのものへの影響も懸念されると思う。
なお、早くからBCP(事業継続計画)に取り組んでいる会社ほど、診断書を求める率が高いのかもしれない。柔軟な対応を行う上で、それが逆効果になっているのかもしれないと感じる。厚生労働省からも医療機関向けではあるがガイドラインが出ている。それを理解するところで会社ごとのギャップがあるのかなと思う。

医療従事者の負担を減らすには

企業へのアンケート結果は「新型インフルエンザ対策.JP」でも公開されている。

アンケート結果や、パネラーからの「企業では柔軟な対応が必要」とする意見が出されたことから「診断書を求めない」という雰囲気が会場に漂う中、会場から次のような意見が出された。

【会場】
H5N1のようにいわゆる「強毒性」と呼ばれるウイルスが流行した場合、今以上に診断書を求めるか否かで、ジレンマが出てくるのではないか。
医療現場では、技術開発的な発想で、簡単に診断書を出せる仕組みを作っていかなければならないと思う。

これに対し吉田氏からは、薬剤師から渡される薬の説明が書かれた添付書類(処方された薬の成分や効能が記載)や「薬袋(やくたい)」を活用することができるのではとの意見が出された。

「薬袋」とは、調剤した医薬品を入れて患者に渡すための袋のことで、以下の内容が記載されている。

  1. 服用方法や服薬時の注意
  2. 保存方法
  3. 調剤した病院や薬局の名称および連絡先

つまり、診断書をわざわざ発行しなくても、薬剤師から渡される薬袋と添付書類によって自身が新型インフルエンザに感染し、医師から薬を処方されたことを証明できるのではないかというわけだ。

2009年8月20日付の米国紙・ウォールストリート・ジャーナル紙によると、ロック商務長官、セベリウス厚生長官、ナポリターノ国土安全保障長官が揃って、診断書提出の義務づけ停止を検討すべきだと企業に呼び掛けた。すなわち、連邦政府では3人もの長官が登場して、強力かつ明確なメッセージを企業に発信し、医療機関への負担を減らすよう訴えたのである。

日本では、多くの企業が国のガイドラインをもとに新型インフルエンザ対策を構築している現状を考えると、国が企業に対して明確な指針を示す必要はあるだろう。一方で企業側も医療機関への負担をいかに減らすことができるのかを、社会的な責任という視点から検討する時期にきているとも言える。

(文・レスキューナウ危機管理情報センター 三澤裕一)

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