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防災コラムVol.139

新型インフルエンザ対策に自信をみせるインドネシア政府

公開月:2006年5月

インドネシア政府は2009年4月末、北米を中心とした豚インフルエンザ由来の新型インフルエンザ感染拡大の懸念を受け、豚肉の輸入禁止や北米からの入国者の体温検査を実施することを決めた。

鳥インフルの教訓、初期対策に注力

大通り沿いに出されている市場。果物から鶏肉まで庶民の台所を支える=中央ジャカルタ・タナアバン、筆者撮影

現在、鳥インフルエンザ(H5N1型)での死者が最も多いインドネシアでは、これまでに新型インフルエンザの大流行の備え、タミフルの備蓄や指定病院の設置、保健省とボランティアによる対応訓練を進めてきており、今回の新型インフルエンザへの対策もその延長線上にあると考えられる。

インドネシア政府は、メキシコやアメリカで新型インフルエンザの感染が拡大していた初期段階から、新型インフルエンザ問題の展開に注視する姿勢を見せた。2009年4月28日以降、全国各地の主要空港に体温検査用のサーモグラフィを設置したほか、観光の島として2008年は年間208万人の観光客が訪れたバリ島では、キリスト教徒が多く、豚肉を食べる人が多いため、養豚場での検査を実施した。なお、これらには新型インフルエンザ対策予算として380億ルピア(約3億5000万円)が充てられた。

警戒レベルに合わせ対策強化

2009年4月30日、WHO(世界保健機関)が新型インフルエンザの警戒レベルを「フェーズ5」に引き上げた。フェーズの引き上げに伴いインドネシア政府は、ジャカルタ特別州において、豚の解体業者の郊外移転を検討。また、州レベルの豚の移動に対するサンプル調査や血液検査、加工品の検査を強化し、地方での草の根レベルでの対策も同時に進める方針を打ち出した。そして、感染者・死者数が最も多かったメキシコへの渡航中止勧告を行った。その一方で政府は、国内での感染が依然として確認されておらず、冷静な対応を心がけてほしいと国民に呼び掛け、流行の懸念による不安が拡大しないよう対策を進めた。

現地の邦人社会も敏感に反応

ジャカルタ中心部、旧ホテル・インドネシア前の夜景。ジャカルタでは、都心部と地方で発展に大きな差がある=筆者撮影

鳥インフルエンザの対策として、在インドネシアの日本企業はこれまで、新型インフルエンザ大流行時の行動計画や日本人駐在員とその家族の帰国の検討、緊急時へ向けた航空券の取得などの対応を練ってきた。今回の新型インフルエンザの流行にも敏感に反応し、社員への渡航自粛の呼び掛けや、日本から駐在員の派遣延期を検討、実施する企業もあった。

国内3都市に在住している邦人200人以上が参加するスポーツ大会(毎年バリで開催)も、新型インフルエンザの感染拡大を懸念し、今年は開催を見送った。このスポーツ大会は、日本人2人を含む202人の死者と300人以上の負傷者を出した2002年のバリ島爆弾テロをきっかけに、観光業や経済の落ち込んだバリを元気付けようと始められたもので、中止は初めてのこととなった。

日本大使館も新型インフルエンザに対する説明会を急遽実施。新型インフルエンザは弱毒性であることや家庭でできる手洗いやうがいの徹底などを呼び掛けた。

なお、現在のインドネシアに在留する邦人の数は、約1万1000人。2008年より微増する流れで推移しており、首都圏で約7000人、バリ島で約2500人、スラバヤで約700人などとなっている。

積極的な対策を

2009年6月12日、WHOは新型インフルエンザへの警戒レベルを「フェーズ6」に引き上げ、今回の新型インフルエンザがパンデミック(世界的大流行)アジアでは、日本のほか中国や香港、韓国、タイなどで新型インフルエンザの感染が確認され、2009年6月24日、インドネシアでもついに新型インフルエンザの感染者が確認された。

こうした状況を踏まえ、家庭や企業では、できる対策を迅速に行うことが求められている。

また同時に、鳥インフルエンザの対策を政府は強化していくべきで、並行して実施していく必要があり、保健省は対策へ向けた予算の確保から人員増加など積極的な対策が必要になると思われる。

(監修:レスキューナウ 文・インドネシア在住記者 岡坂泰寛氏)

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