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防災コラムVol.135

静岡県内外の災害ボランティアによる救援活動のための図上訓練レポート(後編)

公開月:2006年5月

前回に引き続き、2009年2月21日~22日に静岡県静岡市で開催された災害ボランティアによる図上訓練についてレポートする。

筋書きのない「頭脳の訓練」

「さて、全日本とはいうものの、どうします?」
そんなやりとりから訓練は始まった。ボランティアやNPOの人たちには多いコミュニケーションだが、最初から訓練設定を詳細にしてしまうと、それに固執してあるべき姿を模索できないため、あえて細かい想定や前提を組まないで話すことは多い。今回で言えば、せっかく同じ会場にこれだけの人間が集まったのだから、いざというときのためにいろいろ話しておかないともったいないという雰囲気に近かった。そのためもあってか各地のテーブルでは早くも静岡県への進入ルートについての議論が始まっていた。図上訓練とはいうものの、地図は想定エリアの広さや主要道路のルート確認、ベースキャンプの想定位置を確認する程度のビジュアルにしか使わない。

結局、全日本のメンバーは静岡県内のニーズを各地からまとめてみることになった。同時に「地元(県内)の人の方が詳しい」との考えから、進入ルートについてもどこがオススメかの聴取もしてみた。「豊橋方面から国道362号線、新城からは国道257線、飯田からは国道152号線で入れる。でもがけ崩れがあるのではないかとの話もあります。」想定の話とは言え、こういった具体的な話を引き出すことができるのは目の前にある地図の力だ。一方でこんな話も聞かれた。「外からのボランティアに頼るのもひとつだが、高齢化が激しいので高校生に活動してもらえるよう、普段から話をしておこう。」―参加者は普段の活動のことも忘れてはいなかった。

顔の見える関係

県外参加者のセッションの様子。地図などでルートを考えながら一方でペットの話題なども話し合われた。

1日目終了。夕方には会場を後にして、別会場で懇親会が催される。これもこのイベントの大きな目的の一つと言っていい。懇親会場にいくとなぜか受付で3次会会場まで書かれた紙を渡される。遠隔地にいる活動者が静岡の人たちと顔を会わせ、お互いの活動や地域の話をする。これもまた顔の見える関係をつくるという意味で「訓練」である。私はこの日、学生時分に被災地活動を一緒にした方と10年ぶりに再会した。

「地域差」が浮き彫りに

当日床に展示された想定範囲の地図。規模が広範囲であることを体感できる。

2日目。朝9時半からセッションがはじまった。この日のテーマは参加者個々人が持っているリソースを出し合ってみようということだった。各地の参加者が口々に自分の持っているコネクションやネットワークなどを挙げていく。こちらもまた実活動が伴っているだけに話は具体的だ。「**に住んでいる**さんは**のネットワークとつながっていて、連絡すればすぐに救援に来てくれる」など。

その後、県外参加者は地元の活動状況や持っているリソースなどについて各県ごとに発表し、静岡県内の参加者が各地ごとに話し合った結果を発表した。土地土地によって被害や持っているリソースが異なるため、すぐに支援を受けることができる地域と、しばらく自分たちで乗り切る覚悟をしている地域など内容は様々だった。

あぶり出された課題

毎回自覚することだが課題は多い。このイベントは今後の活動のために「課題をあぶり出すための機会」だと言っていい。今回のキーワードは「受援力」だったが、支援を受ける力とは具体的にどのような能力であったかと挙げたとき、そのひとつひとつの項目が見えていないような気がする。受援力以外にもリソースを調達する能力やニーズの把握、潜在ニーズの顕在化、マッチングの手法など、災害ボランティアにも要求される能力の個々が何であるか見えていない現状がある。

そしてもう一点、行政との連携において情報共有はもとより、ボランティアが活動者として実践するために、最低限の法整備は必要だとの意識がイベント中に高まっている。ボランティアは実際の災害現場において(例えば進入ルートや情報収集のための移動手段などをとっても)少なからず法制上の制約を受ける。自主活動だと言えどもそれを救援活動の一部と考えたとき、ある程度の法整備が必要ではないだろうか。

イベントへの注目度と今後の展開

いずれにしても毎年このイベントは、ボランティアである当事者はもとより、防災や救援活動に関連する行政機関やNGOなどに随分注目されている。地域のボランティアと県外の活動者がこの規模で一つの時間を共有し、2日間にわたり顔の見える関係を築きながら、それでも緊張感をもって課題に取り組んでいる場はほかにはないだろう。東海地震に限らず、広域連携の可能性を意識して、こういったテーマを洗いざらい話し合い、真剣に考える機会は貴重だ。他の地域にも展開されるべきプログラムだと思う。

(文・レスキューナウ 岡坂 健)

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