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防災コラムVol.133

静岡県内外の災害ボランティアによる救援活動のための図上訓練レポート(前編)

公開月:2006年5月

今回は、2009年2月21日~22日に静岡県静岡市で開催された災害ボランティアによる図上訓練を2回に分けてレポートする。

東海地震のための「作戦会議」

会場の受付に向かうと、会場の中にはすでに数百人が緑色のおそろいのベストを着て着席していた。静岡市市民会館。少し小さめの体育館ほどの大きさのホールいっぱいに「災害ボランティア」と言われる人たちが県の内外から一堂に会していた。

「岡坂さんは、全日本の広報だから…」スタッフのひとりが突然私の後方からやってきた。私はこの日の訓練の役回りをその場で突然言い渡された。慌てて緑色のベストを着て名札をつけると間もなく開会式が始まった。

「静岡県内外の災害ボランティアによる救援活動のための図上訓練」。

参加風景。350人ほどのボランティアが参加した。

そう題されたこのイベントは2006年から数えて今年で4回目の開催になる。静岡県ボランティア協会を事務局に、県内外の災害ボランティア・行政関係者・学識経験者などが集まり、東海地震が起こったときの被害確認や、地理、災害フェーズ、ボランティアセンターの開設イメージなどを1日半の日程で話し合っていく。会場内に地区別のグループテーブルを設け、そこに広げた大きな地図や模造紙、付箋紙、被害想定などを自由に使い、進行役の案内に従ってセッションと呼ばれるテーマ議論を日程中に5回ほど段階的に進めていく。「図上訓練」とはいうものの、その場にいる参加者は目下本番のことを自分のこととして考えていて、その話のやりとりは「訓練」というより「打ち合わせ」「作戦会議」と言った方がふさわしい。

テーマは「受援力(じゅえんりょく)」

進行は富士常葉大学の小村准教授。1日半ほぼノンストップで進行やコメントをしていた。

この訓練の大きな目的は2つある。1つは「静岡県内のボランティアがいかに自助の力を発揮し、外部から救援が来るまで持ちこたえられるか」。2つ目は「静岡県外のボランティアがいかに被災地に負担をかけずに効率よく支援に入れるか」だ。

≪1日目≫

  • 第1セッション:東海地震での静岡県内の市町はどのような被害を受けるのか
  • 第2セッション:時間の経過に伴い被災者が求めるもの(ボランティアニーズ)はどう変化するか
  • 第3セッション:「支援を求めている人々」とはどういう人々?

≪2日目≫

  • 第4セッション:“最初の1ヶ月”必要とされるのは、どんなボランティア?
  • 第5セッション:“最初の1ヶ月”必要とされるボランティアの確保の目途はつくか?

このテーマは主に静岡県内からの参加者向けのテーマだが、この裏で県外参加者によるセッションも並行して行われた。私は東京からの参加ということで県外参加者のセッションに加わったが、この「県外」もまた地域別にテーブルを構えることになった。

県外参加者による「作戦会議」

県外参加者のグループは主に「西日本」「東日本」「北日本」「全日本」の4つに分けられた。このグループ分けには静岡県と東海地震にまつわる地形的な意味がある。東海地震は静岡県全域とその周辺県の一部を被害範囲とする大規模地震とされている。大きなレベルでの具体的な救援・支援を考えたとき、救援リソースは東京・神奈川方面から入る「東日本」、名古屋方面から入る「西日本」、山梨方面から入る「北日本」の3つに分けられる。

災害ボランティアの「全日本」!?

大規模な救援には当然ボランティアの力だけでは対応できないものがあるため、行政や企業、各種関連団体との連携・連絡・情報共有のために「全日本」が設けられた。先にも話のあったとおり私は「全日本」のメンバーの1人となった。実はこの「全日本」、昨年同様の訓練をしている最中に誰かが「それ(全日本)は必要でしょ?」という話になり、臨時でできたグループだった。そんなわけで昨年の訓練中はもとより、実は今回も敢えて明確な目的を決めていなかった。

同じテーブルには神戸の震災やその後の危機対応広報的な役割を担った人や、NGOなどの面々が並ぶ。結構な修羅場をくぐった人たちばかり。「じゃあ各方面の情報の整理をして、マスコミ向けに流すことも意識しながら、それ以外のチャンネルにも流す情報を整理しましょうか?」と話をすれば「いやこれだけ混乱するんだ。どこ向けに何を出すなんて体制がもたない。シングルボイスにしたほうがいい。」と返ってくる。その後、「ヘリは飛ばせるのか?」、「船が接岸できないなら※ハシケの調達だ」、「専門家の団体に連絡するなら**さんだ」など、出てくる話はすべてリアルだった。

次回は、1日目終了~2日目の様子についてレポートする。
※ハシケ:重い貨物を運ぶために作られた平底の船舶

(文・レスキューナウ 岡坂 健)

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