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防災コラムVol.131

「ウインドシア」と「ダウンバースト」

公開月:2006年5月

2009年3月23日午前6時50分頃、成田空港に到着した貨物便が着陸に失敗し横転、炎上するという衝撃的な事故が発生した。
事故原因は未だ調査の段階にあるが、「ウインドシア」という風の特異な流れが影響したのではないかと報道されている。そこで今回は、大気の流れがもたらす現象についてみていく。

「風」という気象現象

「風」とは、水が高い場所から低い場所へ流れるのと同じく、気圧の高い場所(高圧部)から低い場所(低圧部)へと、空気が移動する現象のことをいう。いうまでもなく、風向や風速は絶えず変動している。こうした現象は、ちょうど風が息をしている様に感じられることから、「風の息」と表現されることもある。

私たちは、日々の風に関する情報を「北の風 15m」というように見聞きし、「ああ、今日は少し寒くて、風が強そうだな」と活用している。

この気象庁が発表する風向・風速は、観測時刻10分前からの平均値である(=平均風速)。
例えば、午後5時の風速が15m/sだと発表されたとすると、それは午後4時50分から午後5時までの10分間にわたる風速の平均が「15m/s」であり、同じく風向の平均が「北」方向であることを示している。

また、よく耳にする言葉として「最大瞬間風速」と呼ばれるものがある。
これは、10分の間で瞬間的に強く吹いた風速の最大値であり、平均風速の約1.5~2.0倍の強さで吹く場合もある。つまり、平均風速15m/sの風が吹くと予想された場合には、瞬間的に約23~30m/sの強風が吹く可能性を見越しておく必要がある。

このように「風」という気象現象は、刻々と絶え間なく変化する「空気の運動」なのである。

事故に関係?「ウインドシア」とは

航空機などの安全を確保するため空港では気象観測が行われている

2009年3月23日に発生した貨物機の着陸失敗事故は、「ウインドシア」が関係したのではないかとの報道があったが、「ウインドシア」とはどのような現象なのだろうか。

そのまま直訳すると「風のずれ」「風のゆがみ」となる。つまり「ウインドシア」とは、風の「運動する力(=風速)」と「方向(=風向)」が、大気中のある二点間で異なることを意味している。そして、この差が大きい場合に「ウインドシアがある」「ウインドシアが強い」「明瞭なシアラインがある」などと表現されることがある。なお、これが地表面近くで起こっている場合には、航空機の離発着に大きな影響を与えるのである。

事故当時(2009年3月23日午前6時)の地上気圧配置では、988hPaまで発達した低気圧が三陸沖の東の海上に抜け、日本海には1016hPaの移動性高気圧が位置しており、いわゆる強い西高東低の「冬型の気圧配置」となっていた。前述のように、風は気圧の高い場所から低い場所へ向うため、日本海から太平洋に向かってやや強い北西の風が吹いていた。成田航空地方気象台では、「最大瞬間風速」20m/sを観測しており、ウインドシア情報が出されていた。

パイロットが忌避する現象「ダウンバースト」

荒天によって混乱する新千歳空港内(2008年2月 撮影)

このウインドシアが、地表面付近で発生していることを「低層ウインドシア」と呼ぶ。特にこの現象が強い状況では、「ダウンバースト」と呼ばれる強い下降流が発生していることが多い。これは、航空機の離発着に影響を及ぼすだけでなく、地表付近での激しい突風や風向の急変などを引き起こし、発生場所によっては大きな被害に見舞われることもある。

この現象は、積雲や積乱雲の減衰期に、その下層で発生しやすいことが知られている。

ダウンバースト発生には2つの要因が考えられている。
1つ目の要因は、雨粒や氷粒など(以下、「降水粒子」)が重力により落下するときに、周囲の空気を同時にその加重によって押し下げるものである(下降流)。
2つ目の要因は、降水粒子の「気化」である。これは、1つ目の要因により発生した下降流をさらに強めるものである。
降水粒子は地表に向かって落下している間、大気中の乾燥した層を通過しているときに気化するものもある。その際、降水粒子は気化するために必要なエネルギー(熱)を周囲から供給する。
そのため、熱を奪われた周囲の温度は下がり、そのことによって空気の密度は増え、重くなる。これがさらに下降流の速度を増し、空気の塊が強烈な勢いで地表面に激突する。これが「ダウンバースト」の発生である。
なお、降水粒子が気化するために周囲から熱を供給する現象は、水やアルコールを肌に塗ると、その部分がひんやりする原理と同じである。

ダウンバーストは、強烈な下降流により地面と衝突した際、空気が放射線状に周囲に広がることで、強い乱気流を発生させる。この現象は、離発着中の航空機に深刻な影響を与えるものであり、航空機パイロットにとって最も忌避される現象の一つである。

航空機事故や気象災害を減らす取り組み

気象庁は、2009年3月現在、羽田・成田などの主要空港に「気象ドップラーレーダー」を配置し、低層ウインドシアやダウンバースト、竜巻などの監視を行っている。

ドップラーレーダーとは、アンテナから発射されたレーダーが降水粒子によって反射され、アンテナに再受信された際の周波数変化を読み取ることで、大気の運動を監視するものである。

現在、気象庁は全国に展開している通常の気象レーダーを、順次ドップラーレーダーに切り替える取り組みを進めている。2008年3月からは竜巻注意情報の発信など、更なる防災への取り組みを強めている。

大気の流れは気象そのものを左右する現象の一つであり、私たちの生活にも大きな影響を及ぼす。しかし、気象庁からが発表される情報を利用者が正しく理解することによって、被害を軽減させることは可能であり、自分やその周囲にいる大切な人の安全につながることを常に意識することが大切である。

(監修:レスキューナウ 文・気象予報士 南郷優人)

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