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防災コラムVol.120

お屠蘇気分に水を差した断水生活| 防災コラム

公開月:2006年5月

2009年元日、青森県八戸市周辺地域は混乱に見舞われた。

それは初日の出の前に発生した

陸上自衛隊も災害派遣活動を実施

2009年1月1日朝6時、青森県八戸市周辺地域に水道を供給する、八戸圏域水道企業団の白山浄水場で導水ポンプが停止した。4kmほど離れた取水先である馬淵川からの流入量が低下したためで、その後両所を結ぶ導水管破損による漏水発生が確認された。

白山浄水場からは八戸市、三戸町、南部町、階上町、おいらせ町、六戸町、五戸町の各一部地域に配水しているが、同日16時以降順次断水状態に陥り、18時には浄水場からの配水が完全停止された。市民は元日から水の確保に負われることとなった。

応急処置により3日から順次配水が再開されたものの、再開直後に水の需要が集中したことから高台の地域を中心に部分断水、減水等の影響が続き、水道企業団が最終的な完全復旧を発表したのは1月22日であった。

最大92,600世帯、238,000人に影響が及んだ今回の大規模断水事故。
今回は、八戸市在住のHIROさんにお話を伺い、断水生活の一端を紹介する

友人からのメールで知るも、家族は…

私は白山浄水場にほど近い、八戸ニュータウンに住んでいます。
元日は朝から日帰り旅行中、旅先にて14時過ぎに友人から「八戸で断水するかも」とのメールで知りました。自宅に電話をしたところ、家族は断水のことなど全く知らず…すぐさま鍋でもヤカンでも何でも良いから水を溜めるように伝えました。

手持ちの携帯のフルブラウザ機能で、地元新聞社の公式サイトを見て事故発生を確認しましたが、その時点では水道企業団や市のサイトには何も情報は出ていませんでした。

旅程を変更し、旅先でミネラルウォーターを買い求めた後、自宅に戻ったのは夜になってから。案の定、蛇口をひねっても水は出ません。家族は風呂にも水を溜めてくれていましたが、トイレ用としても1日程で使い切ってしまう感じでした。幸い、親戚が断水していない地域に住んでおり、水を分けてもらうことができたので、生活に大きな支障はありませんでした。

一部で怒号も飛んだ給水所、素早い対応を見せたスーパー

給水所では一部混乱もみられた

自宅近くの小学校に設置された給水所にも行きましたが、100m以上の長蛇の列ができており、しかも停まっている給水車は1台だけ。その後、自衛隊の給水車が来たことで少し混雑緩和をしたようですが、列を並んでいる人たちから怒号が出るような一幕もありました。でも、大部分の人たちは落ち着いて行動していた感じです。

市内各所のスーパーでは、ミネラルウォーターのペットボトルが山積みで売られていました。一部では格安で販売されていましたし、外箱のラベルを見て明らかに他店へ回す商品だったものが八戸で売られていることにも気が付きました。ホームセンターではポリタンクが売り切れ、バケツも品薄状態になっていましたね。

銭湯ライフを楽しむも、肝心の情報が!

一部の銭湯では、地下水を汲み上げで営業を続けていた

日常生活での不便は、やはりトイレでした。一方、風呂はなんとか銭湯があるので、それで対処できました。元日には旅先で温泉に入っていましたが、どうせなら「断水を楽しもう!」と、2日、3日と銭湯に行ってのんびり浸れたのは良かったと感じています。どうしても家に風呂があると、なかなか銭湯に行こうという気持ちが家族にも起こりにくいですから。

行政からの情報伝達は、とにかく初期の情報が遅かった。水道企業団は1日午後からネットで情報提供をしていたようですが、逐一更新されるようになったのは2日から。しかもPDFファイルだったので、パソコンからでないと見られないのはいかがなものかと。電話してもつながらなかったですし。
また、市の情報システム課でやっている「ほっとスルメール」の第1報は断水後に届きましたし、4日以降は給水所情報に関して同じようなメールが何度も配信されたことも不満に感じています。

断水生活から感じたこと

自宅では結局、3日のお昼過ぎまで断水が続きました。その後は私の住む地域では断水しませんでしたが、高台の地区では翌日から断水になってしまった地域がありました。
普段通りの生活に戻っても、やはり節水は必要だと思いました。皿洗いにも水を流しっぱなしにしないとか、細かい部分でも節水に力を入れるようになりましたね。教訓としてポリタンクを追加購入しました。アウトドア用ですけど。

旅先にいながら、地元にいる方からいち早く情報を知ることができたのは、まさに通信インフラと人のつながりのおかげでした。一方で行政のネット社会への対応不足が露呈したとも実感しています。(以上、談)

残された課題

八戸市では1月末に開催されたみちのく八戸国体も無事閉幕するなど、普段の市民生活を取り戻している。その一方で、市と水道企業団との連携不足、住民への情報提供の遅れなど、断水事故で残された課題も多い。

水道企業団は外部委員による導水管漏水事故調査委員会を設置し、原因究明に努めるとしているが、近年においても度々大地震に見舞われる地域でもあるだけに、ライフラインの安定供給の確保に加え、災害時の速やかな情報伝達など、全国的に共有可能な問題点でもあるという視点からも注目してゆきたいところである。

(文・レスキューナウ危機管理情報センター 宝来英斗)

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