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防災コラムVol.118

日本列島の降雪を考える(前編 日本海側の降雪について)| 防災コラム

公開月:2006年4月

本格的な雪のシーズン到来を前に、改めて日本列島の降雪の要因について理解を深め、雪害軽減に役立てよう。

世界有数の豪雪地帯である本州の日本海側

1998年に行われた長野オリンピックは、冬季オリンピックの中では最も低緯度で開催されたものであった。これは、長野が低緯度にありながらウィンタースポーツのイベントを開催できるだけの豊富な雪が毎シーズン安定して降ることを意味する。

このように本州の日本海側は、平野部としては世界で最も低緯度にある積雪地帯であり、積雪量が平野部でも2~3mに達するような世界有数の豪雪地帯でもある。また、日本海側ほどの積雪量はないものの、太平洋側でもしばしば降雪が見られ、落雪・電線への着雪・雪による転倒や交通障害などで人々の生活にも大きな影響をもたらしている。

そこで、2回にわたって日本の降雪の要因を改めて考えてみたい。まず今回は日本海側の降雪について取り上げる。

もし日本海がなかったら

まだ気を緩めてはいけない雪対策

日本海側の冬の降雪の要因を考える際に、まずこんな問いを投げかけたい。「もし日本海がなかったら、日本の冬の天候はどうなるだろうか?」

冬の典型的な天気図として目や耳にすることも多い「西高東低の冬型の気圧配置」。この主役は、ユーラシア大陸に形成されたシベリア高気圧であり、この高気圧から吹き出す冷たく乾燥した風が冬の北西季節風である。

もし、大陸と陸続きであれば、この季節風は乾燥した状態のままでもたらされることだろう。しかしそうならず、雪を降らせるような雲を発生させる大きな原因が日本海の存在である。

逆に言えば、冬の天候における日本海の存在はそれだけ大きいということができる。

日本海には暖流の対馬海流が流れており、北西季節風は日本海を渡る時に海から大量の水蒸気の供給を受け、雲を発生させる。冬に気象衛星の雲画像でよく見られる「寒気の吹き出しによる筋状の雲」とは、まさにこのように発生した雲が日本海の上空を一面に覆っている様子なのである。この雲が日本列島に到達し、本州の脊梁山脈(せきりょうさんみやく)に吹き付けることで上昇気流が起こり雲を発達させ、日本海側に大雪をもたらしている。

つまり、先程の問いの答えとしては、日本海が存在しなかった場合、冷たく乾いた風がそのまま吹き渡ってくる結果、積雪量は現在ほど多くない反面、気温は現在よりもかなり低くなることが予想される。実際に、ほぼ同緯度である札幌と日本海を挟んだ大陸側のウラジオストク(ロシア)とを比較すると、1月の平均気温は札幌の-7.7度に対しウラジオストクは-12.6度となる一方、同月の降水量は札幌の110.7mmに対してウラジオストクはわずか9.0mmに過ぎない。

山雪と里雪

日本海側の降雪には、山間部が積雪する「山雪」と平野部で積雪する「里雪」の二つのタイプがある。いずれも冬型の気圧配置の下での降雪であるが、山雪の場合は、冬型の気圧配置が強まって「縦縞模様」としばしば表現される南北に伸びる等圧線がほぼ等間隔で並ぶ状態の時に多い。季節風は日本海を吹き渡り、本州の脊梁山脈に直行するように当たり、強い上昇気流を発生させて山沿いに雪を降らせる。

これに対して、里雪は冬型の気圧配置がやや緩んで日本海を小さな低気圧が通過する際に多い。上空の寒気による不安定な天気に加え、低気圧中心部の強い上昇気流により、低気圧の周辺では強い雪の他、落雷や突風などの激しい気象現象も起こりやすくなる。

里雪は人口の多い平野部での積雪量が増えるため、交通障害や雪の重みによる電線切断による停電といった雪害などによって、人々の生活への影響が大きくなりやすいので注意が必要である。

冬に多い日本海側の雷

燃料となるコークス

「鰤(ぶり)起こし」と「雪起こし」、これらはいずれも日本海側の初冬の雷を指す季語である。夏の印象が強い雷も、日本海側ではむしろ冬の方が多い。

『理科年表』により雷日数の月別平均値を比較すると、太平洋側の宇都宮ではピークが7月と8月にあり、特に8月は5.9日という多さとなっている。これに対し、日本海側の新潟ではピークは11月から1月にあり、この3ヶ月間は月平均で4日を越えている。

この日本海側の冬の雷にも日本海の存在が大きく影響している。大陸からの北西季節風による冷たい空気と、暖流の対馬海流による暖かい空気に覆われた日本海上との温度差が大きいことで大気の状態が不安定となり、強い上昇気流が発生して雷を発生させるような発達した積乱雲を形成させるのである。

冬の天気予報で「日本海の上空5500m付近には、氷点下30℃以下の強い寒気が流れ込み、日本海側では大雪の恐れがあります」という解説をよく聞くが、この上空の気温が低いほど大気の状態がより不安定となり、雷を伴った大雪の可能性が高くなる。

冬の日本海側では、雪害対策とともに雷への備えも万全にしておきたい。

(文・レスキューナウ危機管理情報センター専門員 水上 崇)

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