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防災コラムVol.115

身近な感染症にもご用心-パンデミックだけではない今そこにある危機| 防災コラム

公開月:2006年4月

新型インフルエンザの発生が懸念される中、いまだニュースが絶えない感染症がある

「新型インフルエンザ」だけではない!

厚生労働省 食中毒に関する情報

 

現在、世界中で発生が懸念されている「新型インフルエンザ・パンデミック(世界的大流行)」。行政や企業を中心に対策が検討されるなど、まさに「今そこにある危機」というべき感染症である。

その一方で、冬が近づくにつれて、様々な感染症の名を報道などで聞くようになってきた。また、あまり耳にしなくなった感染症の名前も、いまだに時折ニュースなどで流れている。

ノロウイルスによる感染性胃腸炎

アルコール用消毒液を使う前に、石鹸で手洗いを行うと効果的

2006年に全国各地で猛威を振るい、その名を知らしめた「ノロウイルス」。感染から発症までに24~48時間、主症状は吐き気、嘔吐、下痢、腹痛。通常はこれらの症状が1~2日続いた後、治癒し、後遺症もない。また、感染しても発症しない場合や、微熱などを伴うことにより軽い風邪と考えてしまう場合も少なくないとされるが、体力のない乳幼児や小児、高齢者を中心に重症化し、吐物を誤って気道に詰まらせてしまうことなどにより死に至る事案も報告されている。なお、現時点でノロウイルスに効果のあるワクチンはなく、点滴等による水分栄養補給など対症療法しかない。

2006年12月、東京都内のホテルで利用客や従業員、計347人が嘔吐や下痢などを訴える被害が発生した。当初は食中毒の発生が疑われていたが、保健所の調査結果で、ノロウイルスによる感染性胃腸炎である可能性が濃厚であるとされた。1人の客が、3階ロビーと25階通路で2度嘔吐、ホテル側は直後に拭き取りなどの清掃作業を行っていたものの、ノロウイルスの消毒に関しては不十分であったため、かなりのノロウイルスがじゅうたんに付着したまま乾燥し、利用客や従業員が歩く事などにより空気中に浮遊した結果、多くの人々への経口感染につながった可能性があるとの推測を発表している。

ノロウイルス感染を防ぐには、食前やトイレ後の手洗いの励行とともに、加熱が必要な食品の調理には注意を払い、調理器具等は使用後に洗浄、殺菌することを心掛けたい。また、感染拡大を防ぐためにも吐物や糞便の処理を行う際には十分な配慮をする必要がある。なお、発生時期としては冬季を中心としており、11月くらいから発生件数が増加し、12月~1月が発生のピークになる傾向があるものの、年間を通して発生している点にも留意したい。

腸管出血性大腸菌による出血性大腸炎

1996年7月、大阪府堺市の学校給食を食べた児童ら約9500人が感染し、3人が死亡した腸管出血性大腸菌「O157」による集団食中毒は、社会に大きな衝撃を与えた。感染から発症までに3~5日、腹痛や水様性の下痢といった初期症状の後、激しい腹痛や血便など、重症化するほか、吐き気、嘔吐、発熱などを伴う場合もある。発症後4~8日で自然治癒するのが一般的だが、体力のない乳幼児や小児、高齢者では溶血性尿毒症症候群(HUS)、脳症などの合併症を起こし、場合によっては死に至ることもある。

O157をはじめとする腸管出血性大腸菌による食中毒は、最近では食肉を生や加熱不足で食べて感染する事例が多くなっているが、過去の例としては、野菜などの様々な食品や食材が原因であると特定される例があった。また、汚染された食品が広域に流通し、各地で患者が発生する事例もみられる。例えば、2006年9月にはアメリカで生のホウレンソウによる食中毒事件が発生し、全米20州以上で感染者が報告されている。

腸管出血性大腸菌は飲食物を介した経口感染であり、空気感染や接触感染をするものではない。加熱(75℃で1分間以上)や消毒薬(次亜塩素酸ナトリウムなど)により死滅するため、通常の食中毒対策を確実に実施することで十分に予防可能である。なお発生時期としては初夏~初秋を中心としているが、気温の低い時期でも発生が見られることから、年間を通して注意が必要である。

様々なウイルス・病原菌が原因に

厚生労働省が発表している「平成20年食中毒発生事例(速報)」によると、患者数100人以上の事例は14件発生(2008年11月1日現在)、うち9件がノロウイルスによるものであるが、サルモネラやカンピロバクターといった細菌感染症も発生している。

また、麻疹や結核などの若年層罹患者数が増加傾向にあり、大学などでの集団感染例も報告されているほか、HIVをはじめとする性感染症についても感染者が増加傾向にあるとされている。国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報(11月9日現在)によると、これまで挙げてきたものの他にも、赤痢やつつが虫病、日本紅斑熱、破傷風といった疾病の報告数がそれぞれ100例を超えるなど、様々なウイルス・病原菌を原因とする感染症が確認されていることがわかる。

食中毒に限らず、感染症から身を守る最善かつ最大の予防策は、何よりも「手洗い」「うがい」を基本とした、身の回りを清潔に保つ習慣である。加えて、昨今話題の食品の安全性については、その調理法にも気を配りたい。今そこにある危機は「新型インフルエンザ・パンデミック」だけでないということを含め、正しい情報、知識を身につけ、生活を見直したいものである。

(文・レスキューナウ危機管理情報センター専門員 宝来英斗)

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