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防災コラムVol.110

「平成20年8月末豪雨」に見る支援活動の今(その2)| 防災コラム

公開月:2006年4月

8月末、本州付近に停滞した前線の影響で東海地方を中心に豪雨被害が発生。国際ボランティア学生協会の活動報告を基に支援活動の今を伝える第2弾。

2008年は各地で記録的な豪雨が発生、その中でも最大だった「平成20年8月末豪雨」による愛知県の被害

本コラム11月5日号では「平成20年8月末豪雨」における東京近郊の被害と、それに対する救援活動の状況をまとめたが、今号では「平成20年8月末豪雨」で最も大きな被害を受けた愛知県岡崎市での国際ボランティア学生協会の活動報告を基に、支援活動の今とこれからをお伝えしたい。

11月までに日本に上陸した台風の数が「0」と、台風による被害は軽微だった2008年だが、いわゆる「ゲリラ豪雨」と呼ばれる局地的な豪雨による被害は各地で相次いで発生した。今年11月10日までに1時間降水量の観測史上1位を更新した観測所は39都道府県、103箇所にものぼった。

その中でも最も多い降水量を観測したのが、8月29日2時までの1時間降水量が146.5ミリに達した愛知県岡崎市だった。これは8月28日から31日にかけて本州付近に停滞した前線に向かって南から湿った空気が流れ込んだ影響によるもので、東海地方を中心に中国、関東、東北など日本列島の広い範囲で記録的な大雨となった。気象庁は、これを「平成20年8月末豪雨」と命名。愛知県内では死者3人、床上浸水1100棟以上、床下浸水3000棟以上という大きな被害を出した。

IVUSAの活動報告から見る被災地域と被災地域外との連携

床下がえぐり取られてしまった川沿いの住宅(愛知県岡崎市)

8月29日、岡崎市や社会福祉協議会、民間ボランティアなどによって岡崎市福祉会館に「岡崎市防災ボランティア支援センター」が開設された。全国社会福祉協議会・全国ボランティア活動振興センターによると、9月7日までの10日間でこの支援センターで活動したボランティアは68団体、2363人(内コーディネータが463人)にのぼったという。

11月5日号でもその活躍を紹介したNPO法人「国際ボランティア学生協会(IVUSA)」は、関西にも多くの所属メンバーがおり、東京・世田谷の本部事務局の他に大阪には関西事務局をかまえている。8月30日、東京近郊の被害には関東のメンバーが活動する一方で、岡崎市の被害には事務局員1人を含む関西在住のメンバー4人が向かった。昼過ぎに支援センターに到着した4人だったが、悪天候が続き大雨洪水警報が再び発表されていたため、この日の作業は中止となった。翌31日は曇り空だったが、時々晴れ間がのぞくようになり、本格的な支援活動を開始。被災地域の住宅1軒1軒を尋ね、支援要請の聞取りや支援資料の配布を実施。同時に、住民からの要請があれば泥の除去や家財の運び出しなどを行った。9月1日には、30日に現地入りしたメンバーから引継ぐかたちで関東から4人が、さらに2日には関東、関西から33人が追加メンバーとして岡崎市に入り、9月4日まで、床下の泥の掻きだしや食器の洗浄、廃棄された家財道具をトラックに積み込む作業などを行った。

これらの活動は、普段この被災地域を中心に活動しているNPO団体との連携があって実現した。IVUSAの第一陣が被災地に入る際にも、名古屋のNPOなどと連絡を取ったうえで現地へ向かったし、現地で追加メンバーを受入れるにあたっても、支援センターの運営にも携わっていたNPO法人「NPO愛知ネット」の協力を得て、それが可能となった。

さらなる「顔の見える関係」の強化を

岡崎市防災ボランティア支援センター(現地ボランティア受付サテライト)

最近では自治体などにおける災害対応計画のなかにボランティア対応が含まれるなど、ボランティアに対する認識が高まる一方、災害発生後に「県外からのボランティアは募集していません」などと発表する例も見られるようになった。これは被害の程度によって、ボランティアが必要か必要でないか判断できない段階にも関わらず「とにかく支援したい」という想いから駆けつけてしまうボランティアへの対応に大きな負担が生じることを懸念してのことと思われる。

阪神・淡路大震災における、いわゆる「災害ボランティア元年」から10年以上経過し、各ボランティア団体は、活動することが目的ではなく、被災者のためにどう行動するのかが問われるようになってきている。

最近では、災害時のボランティアセンターを効果的に運営するため、社会福祉協議会とNPOが事前に協力協定を締結するなど、連携を模索する動きが進んでいる。東海地震の発生が懸念される静岡県では、県の委託事業としてNPO法人「静岡県ボランティア協会」が主催し、県内外の災害ボランティア関係団体や組織が迅速に被災地での救援活動を進めていくための広域支援体制づくりを目指した「静岡県内外の災害ボランティアによる救援活動のための図上訓練」を過去3回実施している。

その一方で、ボランティアをする側は、被災者への支援を拡充できるように、普段からのネットワークを最大限に活かして情報収集を行い、ボランティア活動への要請の聞取りをし、ボランティアが必要ないのであれば「活動しないで帰る」といった判断ができるような組織が増え、結果的に被災地域の住民や行政の負担を軽減できるようになることが望まれる。

ボランティアを受入れる側にはボランティアなどから寄せられる支援をどのように有効活用するのかという大きな課題がある。それを解決するためにも、ボランティアをする側も受入れる側もボランティアが必要とされる災害が発生することを想定して「地域住民」、「行政」、「社会福祉協議会」、「NPO」などが互いに顔の見える関係を普段から構築し、さらに、「地域外からの支援」をどう取り込んでいけるかという視点も加えた総合的な取り組みが必要ではないだろうか。

(文・レスキューナウ危機管理情報センター専門員 大川義弘)

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