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防災コラムVol.108

災害時における井戸の利用

公開月:2006年4月

渇水の四国から現代の井戸の新しい存在意義について考える。

渇水に見舞われた今夏の西日本

今年は全国的に集中豪雨が頻繁に発生し、各地に大きな被害をもたらしたが、その一方で西日本では局地的に渇水が深刻化していた。とりわけ、中国・四国地方の瀬戸内海沿岸部では、梅雨明けが平年より10日以上も早く、6月から8月にかけての夏の降水量が平年の半分以下にとどまったことからダムの貯水率が大幅に低下した。

四国の水がめである吉野川水系の早明浦ダム(高知県)では、一時貯水率(利水容量分)が0%となったことで、発電用水を水道用に転用する深刻な事態となり、ダム下流の徳島県や香川県では最大40%削減という厳しい取水制限が実施された。これに対応して一部の自治体では減圧給水も行われ、高台の住宅では水の出が悪くなったほか、農業・工業用水が供給制限を受けるなど地域の経済活動にも大きな影響を及ぼした。

時間断水の実施を検討するような深刻な渇水傾向は、9月以降に雨が降るようになって徐々に改善しつつあるものの、早明浦ダムの貯水率は10月下旬の時点でも40%台と平年の半分程度にとどまっている。依然として取水制限や香川県の一部自治体での減圧給水は継続しており、降水量の減る冬を迎え、渇水の長期化が懸念されている。

渇水と戦い続ける香川県

公共の井戸

年間を通して降水量が少なく、常に渇水と隣り合わせの生活を送ってきた瀬戸内海沿岸部の中でも、特に水不足に苦しみ続けてきたのが香川県である。

香川県は、降水量が少ない上、県内に大きな河川をもたないため、古くから水の確保に苦労しできた。国内最大の満濃池(まんのういけ)をはじめ、県内のあちこちで見られる多数のため池は、こうした苦労を映すものといえる。

このような慢性的な水不足を解消すべく建設されたのが1974年に完成した香川用水である。隣接する徳島県を流れる吉野川の水を引くために、両県の県境にそびえる讃岐山脈にトンネルを掘って建設されたこの用水によって、香川県の水不足は大幅に緩和された。しかしながら、完全に水不足が解消されたわけではなく、1994年夏の大渇水時には高松市で2ヶ月以上にわたって時間断水が続き、市民生活に大きな影響をもたらすことになった。高松市ではこれ以降も2005年、2007年にも時間断水寸前の厳しい渇水に見舞われ、香川用水に全面的に依存する給水体制の見直しが急務となった。

渇水時における井戸の市民開放

節水を呼びかける貼紙

水は飲用にはもちろんのこと、炊事・洗濯・風呂・トイレなど日常生活のあらゆる場面で必要不可欠なものである。

渇水時に断水等で水利用に不便が生じた際、飲用には給水車の利用やミネラルウォーターの購入に頼るとしても、洗濯やトイレなど日常生活での水利用をすべて給水車で賄うには限界がある。そこで、香川県高松市が打ち出した施策が、「公共の井戸」あるいは「善意の井戸」と呼ばれる井戸の開放である。「公共の井戸」は公園や学校などの公共施設、「善意の井戸」は市内の個人宅の井戸と、両者の置かれている場所は異なるが、いずれも市民が自由に使うことができるようになっている。高松市内にはこのような井戸が両者合わせて200ヶ所以上あり、特に「公共の井戸」のうち、市内5ヶ所の公園内に設置されている井戸は24時間利用可能となっている。なお、これらの井戸は洗濯やトイレの洗浄、散水など雑用水としての用途に限られ、飲用はできない。

高松市ではこうした井戸の開放を1994年の大渇水を契機に行うようになり、その後の渇水時には常に開放して市民に使用してもらうことで水道水の有効活用を図っている。

災害時にも活用できる井戸

高松市では、渇水時に「善意の井戸」の提供に協力する住民を募集するほか、これまでに協力した住民の台帳を作成し、この台帳に基づいて市側から井戸の提供をお願いする体制が取られている。

一方、地震による断水など災害時にもこれらの井戸の提供が検討されている。この震災時における個人宅の井戸の提供について、東京都世田谷区では「震災対策用井戸」として利用可能な井戸の指定に関する要綱が制定されるなど、井戸の活用に向けた積極的な取り組みが進んでいる。

上水道の普及によって一旦はその使命を終えたかに思われた井戸であるが、これまで見てきた事例のように、「災害」という視点から現代における井戸の新しい存在意義を見出すことができよう。

(文・レスキューナウ危機管理情報センター専門員 水上 崇)

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