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防災コラムVol.107

日本の防災対策の取り組みを中国で紹介

公開月:2006年4月

2008年9月11日、中国・四川省の成都市で日本の地震対策などを紹介する記者発表会が行われた。今回は、記者発表会の主催者である株式会社スターリング代表取締役の吉井啓人氏が、その模様をレポートする。

日中間の防災意識の違いが鮮明に

記者発表会の様子

今回の記者発表会は震災後、防災に取り組む現地から「日本の災害対応への取り組みについて紹介してほしい」との声から実現したものである。

成都市内のホテルで記者発表会を行うため現地入りした当日、四川省地震局減災研究所の行政職員の方々と夕食を共にすることになった。震源近くの街は建物が倒壊したことで多くの死者を出し、救助は難航した。こうした点を踏まえ、耐震基準について議論をした。その結果、「現状の所得水準」、「政府の予算」、「なぜ金持ちだけが助かるのか」という国民感情の問題から、耐震基準の強化は容易ではないことが指摘された。しかし、耐震基準を早急に強化するためには、補助金を出すなどの政策を通じて最優先で取り組んで欲しい課題である。また、緊急時に公共施設や学校などを避難所として使用するという考え方も皆無であり、ソフト面・ハード面共に課題は山積みとなっている印象を受けた。

予想外の盛況であった記者発表会

防災グッズについてマスコミからの取材を受ける担当者

会場となった成都市内のホテルの会場には100人近くの防災関係者が集まり、「防災対策と危機管理」というテーマの講演に耳を傾けた。14時30分からの講演を前に、会場は熱気に包まれていた。防災というテーマに対して関係者の関心と焦りがいかほどか手に取るように分かった。

講演に先立ち、地元テレビと地元新聞各社が取材に入るなど慌しい中で記者発表会はスタートした。はじめに、出席者を代表して成都市政府緊急班幹部から、「我々は未曾有の大震災を経験し、莫大な損害を受けた。一致団結し震災に対して打ち克たなければならない。胡錦濤国家主席も幹部会議の中で『わが国の自然災害が多発する国情である事実を深刻に受け止め、防災・滅災能力を高め、社会全体に防災教育を施し、即応体制を整備することによって、人民の生命・財産・安全を確保し、更なる社会経済発展に繋げなければならない』と強調している。社会の中で企業の防災に対する役割、特に国有の大中企業の果たす役割は大きく、国外でも企業が自社の経営資源を保護するのは企業が果たす社会的責任であるとさえ言われている。企業が地域社会の責任を果たし、企業の信用を維持する為にも災害時にいかにして事業を継続させるかが大きな課題である。少子高齢化を迎えるこれからの社会において地域企業の組織力は低下する一方であるが、そこにITなど最新の科学技術を取り入れる事で災害時の事業継続という課題を考えていきたいと思う。今回は同じ問題を抱えている日本がこの問題に対してどう取り組んでいるのか勉強する絶好の機会である」との挨拶があった。

続いて、日本で唯一、危機管理情報を配信する専門企業、株式会社レスキューナウ取締役國貞至氏に「日本企業の災害時における事業継続の実際」というテーマで講演を行っていただいた。冒頭、偶然にも当日発生した北海道十勝沖の地震情報が早速携帯電話に入っていることを紹介した。

最初は意味が解らずにきょとんとした表情で聞いていた聴衆も、話が進むにつれ、「当日この様なシステムがもし整備されていたら」と感じたようで、徐々に身を乗り出すように聞き入っていたのが印象的であった。

國貞氏は、緊急地震速報や様々なハード面によって災害から身を守ると思っている方々が多いが、肝心なのは「耐震基準の規制を強化」、「防災に対する日頃からの意識や防災対策を施す」という運用方法など、ソフト面によるところが大きいと強調し、設備の増強やハイテク化だけに目を奪われがちな中国の防災関係者に苦言を呈した。

また、地震発生時にその場で生き残ることが何よりも大切であり、そのための耐震基準強化の必要性をあらためて強調。生き残らなくてはどんなに素晴らしい防災用品を用意しても全く意味がなく、何も成しえないと強調した。

講演の中で同氏は、新型インフルエンザの恐怖についても触れ、情報を公開することによって混乱が生じることを恐れるのではなく、正確な情報を伝え、被害状況を想定し、対策を整えることが重要であると繰り返し、混乱を恐れた情報の非公開が更なる混乱を発生させる要因となることを強調。中国政府関係者に発想の転換を促した。

会場は今までにない発想と震災現場で経験した自らの経験を重ね合わせ、真剣な表情でメモを取ったり、出席者同士の経験や考え方を確認し合うなどしながら話に聞き入っていた。

記者発表会を終えて

筆者は1995年の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)が発生した瞬間、神戸市内で警備会社のパトロールカーに乗務していた。仮眠から巡回先に車を動かそうとしていたとき、「地震だ!」と思った瞬間、体を支えられないくらいの大激震と、様々な物が破壊される大きな音が響いた。そして、揺れが収まった後につぶやいた言葉が「生きている」であった。
同時に「ただ事ではない。これからどうなるのだろう」との思いが一瞬頭をよぎったが、現場の惨状を目の当たりにしてその気持ちは吹っ飛んでしまっていた。

当時、事業継続計画などは存在せず、行き当たりばったりの復興支援であったと思う。四川の現場で見たものは正に「1995年の私たち」と同じであり、「3日間は救援物資が届かない」という話は本当であった。

今回、四川省の被災地で活動された方の話を聞いて、事業継続計画は必ず必要であり、役立つものであると確信した。筆者自身も、この話を聞いたときから単に自社の防災用品の販売だけでなく、社会に本当に役立つ存在でありたいと考えていた。その道筋が見えたことが今回の大きな成果であったと感じている。

(監修:レスキューナウ 文・株式会社スターリング 代表取締役 吉井啓人 氏)

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