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防災コラムVol.106

「平成20年8月末豪雨」に見る支援活動の今(その1)

公開月:2006年4月

2008年8月29日、東京都八王子市、町田市、神奈川県相模原市などで浸水被害が発生した。今回は、被災地での支援活動を通じて見たこと、感じたことをまとめた。

「平成20年8月末豪雨」の概要と東京都、神奈川県の被害

運び出された家財

8月28日から31日にかけて本州付近に停滞した前線に向かって南から湿った空気が流れ込み、愛知県岡崎市では29日2時までの1時間降水量が146.5ミリに達するなど東海地方を中心に中国、関東、東北など日本列島の広い範囲で記録的な大雨となり各地で浸水被害が発生。気象庁は、この一連の大雨を「平成20年8月末豪雨」と命名した。
8月29日、これらの被害に対し東京都世田谷区に本部を置く国際ボランティア学生協会(IVUSA)が救援活動を開始した。このIVUSAの活動に同行した筆者が支援活動の今をレポートする。

愛知県では岡崎市や名古屋市を中心に大きな被害を出し、多くの報道によって連日同地域の被害状況が大きく取り上げられたことが記憶に新しい。が、その一方で首都圏でも大きな被害が発生した。東京都八王子市では8月29日4時までの24時間で218.0ミリの降水量を記録。同地点の8月の月間降水量平均値が223.8ミリというので、1ヶ月分の雨がこの1日で降ったことになる。この雨で、東京と神奈川の境界に沿って流れる境川や、八王子市内を流れるいくつかの多摩川水系河川から水が溢れ出し、低い土地にある住宅が床上まで浸かってしまう被害を受けた。これらの地域に対しては避難勧告が出され、取り残された住民が消防によって助け出されるなどした。最終的には東京都内で浸水住宅が300棟を超え、神奈川県でも80棟近くにのぼった。

国際ボランティア学生協会(IVUSA)の活躍

床下の泥をかき出す

IVUSAは首都圏と関西の55の大学から1143名の学生が参加するNPO法人で、これまで阪神・淡路大震災や新潟県中越地震といった地震災害以外にも、平成16年7月新潟・福島豪雨や平成16年台風23号による大雨被害など多くの水害現場でも災害救援活動を行ってきた。今回は8月29日から9月7日までのおよそ10日間、相模原市、八王子市、町田市のそれぞれの被災住宅で活動を展開した。

今回、東京都や神奈川県には「災害ボランティアセンター」は設置されなかったが、IVUSAは在京のスタッフが中心となり独自に八王子市や相模原市などで被害状況とボランティアによる支援が必要かどうかの調査を開始。何か困ったことはないかと一軒ずつ尋ね歩いた。その後は、八王子市社会福祉協議会、町田市の被災住民からの依頼もあり浸水被害のあったそれぞれの家屋で床下にたまってしまった泥のかき出しや水に浸かってしまった畳や家財の運び出しなどの活動を実施した。

IVUSAは、「被災地に元気をおいてくる」を合言葉に一人ではどうすることもできず途方に暮れてしまうような被害を目の前に「助けて欲しい」という願いと、学生たちの「できることがあるならば全力で取り組もう」とする気持ちをつなげる災害救援活動を行っている。

水害の復旧予防にさらなる自助・共助・公助の連携を

各地で局地的な大雨が観測された今年、多くの観測点で降水量の記録が塗り変えられた。これまで、これほどの大雨が降ったことがないという声があちこちから聞かれた。
今回、IVUSAの活動現場のいくつかに同行し、自治体による被害状況の把握や災害ごみの回収、浸水家屋の消毒などへの対応、また、自治体と社会福祉協議会およびNPOやボランティア団体との連携などもっと迅速に、もっと情報が共有化されるべきではないかと感じた。災害発生時には自助・共助・公助が必要である。当然、自分達だけでできることには限界がある。だが、公助に頼りきりということでもいけない。自助・共助・公助それぞれにできる支援があり、どれひとつ欠けてもならない。しかし、それらが情報共有をせず、連携を持たずやっていたのでは効率が悪い。

被災した住民たちが、一日も早く元の生活を取り戻すためにも「地域住民」・「自治体」・「社会福祉協議会」・「NPO」などが普段から連携を充実させ顔の見える関係を築き、災害発生時には被害状況はもちろん、「支援が必要か必要でないか」・「支援できるのかできないのか」などの情報をいち早く共有化し、それぞれの特性を活かしながら細やかな支援を実施することが重要ではないだろうか。

(文・レスキューナウ危機管理情報センター専門員 大川義弘)

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