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防災コラムVol.100

地震による土砂崩壊

公開月:2006年4月

岩手・宮城内陸地震で発生した大規模な土砂崩壊。全国各地で発生し得ることを過去の災害から再認識し、被害の軽減に努めたい。

地震による山地崩壊の凄まじさ

6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震では、震源に近い栗駒山の斜面が大規模に崩壊し、山麓に大きな被害をもたらした。その規模の大きさたるや「山が消えた」と形容されるほどで、道路や橋が断ち切られ宙に浮く様子や、崩壊した土砂が川をせき止めてできたいわゆる「せき止め湖」の水位が上昇し、水没した家屋の映像がテレビで繰り返し流され、私たちにその破壊力の大きさを改めて印象づけることとなった。

土砂崩壊の危険を常に抱える日本の山地

国土面積の約6割を山地が占める日本は、地形・気候双方の条件から常に土砂崩壊の危険性を抱えている。

日本は4つのプレートがひしめき合い、世界でも有数な地殻変動の著しい地域で、このため隆起運動が激しく、山地斜面は急だ。また、地震や火山活動が活発なことから、地質は脆弱となっている。このような地形・地質条件に加えて、梅雨前線の停滞や台風の襲来などで夏季を中心に大量の降水があり、急峻な山地を激しく侵食していく。

日本の山地はその多くが森林に覆われているので、一見すると地盤が安定しているように見えるが、その足元は極めてもろいことを改めて認識しておく必要があるだろう。

繰り返し各地で起こってきた大崩壊

地すべり防止区域を示す標柱

歴史を紐解くと、地震に伴う山地斜面の大規模な土砂崩壊は、これまでも全国各地で度々発生しており、大きな被害をもたらしている。

このうち、江戸時代では、1707年の宝永地震による静岡・安倍川上流の崩壊(大谷崩れ)、1792年の長崎・雲仙岳の噴火活動中に発生した地震による側火山眉山の崩壊、1858年の安政飛越地震による富山・常願寺川上流の崩壊(大鳶崩れ)の3つが、大規模な土砂崩壊として知られる。このうち、眉山の崩壊では、崩壊土砂が有明海に流れ込んで対岸の肥後(現在の熊本県)に津波が押し寄せ、15,000人以上の犠牲者を出す大きな災害となった(島原大変肥後迷惑)。また、安倍川と常願寺川上流の崩壊では、地震で崩壊した後の不安定な山地斜面が、その後の大雨でさらに崩壊した。崩壊した土砂は濁流とともに下流に押し寄せ、平野の耕地を埋没させ、住民の生活を長きにわたって苦しめることとなった。常願寺川上流では、地震発生後150年経った現在でも、土砂崩壊を食い止める砂防工事が連綿と続けられている。

また、最近の事例では、1984年9月の長野県西部地震における御嶽山の崩壊(伝上崩れ)が記憶に新しい。29人が死亡したこの崩壊では、岩手・宮城内陸地震と同様に、崩れた土砂が木曽川上流の王滝川を堰き止めて天然のダムを形成した。

このように、地震による土砂崩壊は全国各地で発生し、しかもその危険性は現代においても変わりないことが分かる。

土砂崩壊への備えとは

地すべり防止区域の場所や問い合わせ先などを事前に調べよう

それでは、このような土砂崩壊に対して、どのような備えをすべきだろうか。

まずは、自分の住まい・職場・学校などの立地する地形・地質条件を認識することから始めたい。最近は各自治体がハザードマップを作成し、その図中には「急傾斜地崩壊危険区域」、「地すべり危険地域」、「土石流危険渓流」などの記載がある。こうした「土砂災害危険箇所」に該当する地域や河川には、それぞれの危険性を示した看板や標柱を立てることが義務付けられている。このような地域の指定は大雨による土砂災害を想定したものであるが、地震発生時にも同様の危険性が高いと考えて差し支えないので、対象地域内に住む人は地震発生時の避難行動も併せて考えておきたい。

また、地震の揺れでは崩壊しなかったとしても、地震によって不安定になった地盤が、その後のわずかな雨でも崩壊を起こす可能性も高い。このため、気象庁や地元の気象台では地震発生後、被災地周辺の警報・注意報および土砂災害警戒情報の発表基準を通常より低くして住民に早めの警戒を呼びかけている。こうした発表があった時は、先に述べた危険性の高い地域に住んでいる人は、避難勧告が出る前でも避難の検討も考慮に入れるなどして二次災害の防止に努めたい。

(文・レスキューナウ危機管理情報センター専門員 水上崇)

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