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防災コラムVol.93

自治体の補助が進む防災ベッド

公開月:2006年4月

一定の条件はあるものの、防災ベッドの購入に自治体から補助金が出る仕組みが広がりつつある。

住宅の耐震化は地震被害への最重要対策

震度7の揺れを記録した阪神・淡路大震災は、全半壊約25万棟・一部損壊約39万棟、死者6437人・負傷者43792人の被害を引き起こした。8割以上の人が家屋の倒壊や家具の転倒によって死亡したといわれている。

都市部と山間部での違いや人口密度の差も大きいので単純には比較できないが、新潟県中越地震における震度7の地域で比較すると、全半壊した家屋の割合は阪神・淡路大震災の約6分の1に過ぎなかった。これはその地域が豪雪地帯であったため、雪の重みに耐えられるように屋根には軽い素材が使われ、柱は太く、窓は小さく壁面が多くとられた家屋が多かったことが、結果として同じ規模の揺れを観測しながらもその被害において大きな違いが生まれたひとつの要因だと考えられる。

阪神・淡路大震災以降、強く指摘されていることだが、地震被害を軽減する対策として、家屋を耐震補強することが最重要なのだ。脱出用の工具や災害備蓄品をいくら充実させていても生き残るための対策を講じていなければ、それらを使う機会さえもなくなってしまうことを忘れてはいけない。ポイントは「少しでもより安全な方向に近づこう」という考え方である。

まずは耐震診断を

自宅の耐震補強対策は、費用や手間のことを考えると、つい「また今度。」とか「もう少し余裕ができてから」などと先延ばしにしてしまう。まずは、自身で、自宅の建物の形、壁の配置、壁の量、老朽度、建築年度をチェックしたり、インターネットでできる耐震診断などを利用してみてはどうだろうか。これらの方法で不安要素があるようなら、費用はかかるが建築士に依頼して詳しく診断してもらうのも得策だ。地方自治体によっては、利用者が耐震診断を無料または低価格で行えるように補助金を出しているところもある。一度、自分の住んでいる地域の自治体に問い合わせてみるといいだろう。

睡眠時の耐震対策

ベッドの周囲に枠を設置する(画像提供:フジワラ産業株式会社)

耐震補強工事は、建物の状況や補強の手法によって一概には言えないが、2軒と同じ工事はないといわれるほど千差万別であり、費用の面で大きな負担となってしまうこともある。地方自治体からの公的補助制度もあるが、実際には先送りにされてしまい兼ねない。しかし、耐震補強の必要がある住宅で何もしないのは居住者の命を危険にさらすことに他ならない。そのように費用の面で補強が難しいと考える人や、住宅が賃貸であるなどの事情で住宅の耐震化ができない人は、比較的安価で効果的な地震対策を検討してはどうだろうか。

大阪のメーカー・フジワラ産業株式会社は、阪神・淡路大震災の教訓から、寝ている時に地震から身を守る「安心防災ベッド枠」を開発した。これは直径6センチの金属パイプがベッドを囲むように取り付けられ、その天井はパンチングメタルで覆われているもので、市販のベッドに取り付けることも可能だ。開発したフジワラ産業によると、公共の機関で耐圧試験を行い、25トンまでの耐圧性能を確認しているという。オプションとして、床下補強架台、手すり、カーテンレール、テレビ台、照明なども取り付けることもできる。この「安心防災ベッド枠」で確保された空間が地震から命を守る大切な空間になるだろう。設置にかかる費用は標準タイプ(Aタイプ)で50万円程度と、住宅全体の耐震化と比較して必要となる費用が抑えられる。同社では標準タイプの他に建物や部屋の状況、予算に合わせて、数種類のタイプの防災ベッド枠を開発している。

また、睡眠時に限らず、屋内での安心空間を確保するための商品として「防災テーブル」や「防災シェルター」がある。これらも家屋の倒壊や家具の転倒から身を守るために開発された商品であり、それぞれ25トンの耐圧テストを実施している。さらに、部屋1室全体を鉄骨で囲う「耐震シェルター」も製品化している。「耐震シェルター」は床下に基礎架台を設け、部屋の内部に鉄骨を組み、部屋1室をシェルター化するものである。

自治体の助成制度の状況

耐圧実験の様子(画像提供:フジワラ産業株式会社)

2004年8月、内閣府は、費用などの面で住宅耐震化がなかなか進まない状況にあったため、住宅の耐震化を中心として、就寝中の人を倒壊から守る防災ベッドの普及など地震被害軽減のための多様な方策を盛り込んだ「住宅における地震被害軽減に関する指針」をとりまとめたことから、多くの自治体で住宅耐震化に注目が集まっている。それらの促進を図るために、多くの自治体で公的助成制度が設けられており、例えば、東海地震が想定される静岡県では、袋井、磐田、牧之原、掛川市などがいち早く助成制度を設けたほか、東京都でも、2008年4月現在、6つの市区(渋谷区・練馬区・荒川区・品川区・板橋区・府中市)で防災シェルターや防災ベッド設置の助成を行っている。さらに、今年度中に6つの市区(葛飾区・足立区・目黒区・台東区・新宿区・八王子市)が助成を行うことを検討中であるという。一足先に助成制度をスタートさせた渋谷区では、上限を50万円とし、防災シェルターや防災ベッドの設置費用、設置面の補強工事費、補強工事の管理費の全額の助成を行い、住宅耐震化を促進しその普及の後押しをしている。助成を受けられる条件は各自市区町村で異なるが、主な条件として高齢者世帯、障害者世帯、かつ低所得世帯の2階以下の木造建物であるという場合が多い。助成制度に申し込む場合は、自宅が条件に該当するか事前に各自治体に問い合わせたほうがいいだろう。

「生き残ること」を第一に

阪神・淡路大震災は、多くの人が睡眠中の午前5時46分に発生したため、とっさに反応できずに建物の倒壊に巻き込まれた人が多かった。多くの人にとって寝室は、一日の中で最も長い時間を過ごす場所である。住宅耐震化を金銭的な問題でためらっている人も、「少しでもより安全な方向に近づこう」とする方法のひとつとして、「耐震シェルター」や「防災ベッド」を導入することで「生き残ること」への対策としてはいかがだろうか。

(文・レスキューナウ危機管理情報センター専門員 原田貴英)

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