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防災コラムVol.63

津波の怖さを知ろう

公開月:2006年3月

津波による死者が20万人にも上った2004年12月のインドネシア・スマトラ島大地震・津波から今年(2007年)で3年が経った。今一度、津波の怖さを振り返る。

ジェット機並みのスピード

海底で地震が発生して地盤が持ち上がったり落ち込んだりすると、それに合わせて海全体が上下し、津波が発生する。風によってできた普通の波は海の表面の水だけが移動するが、津波は海底から海面までの海全体が根こそぎ動かされることから、すさまじいエネルギーになる。しかもスピードが速い。沖合ではジェット機並みの速さで、陸に近づいてからも新幹線並みの速さで襲ってくる。海岸で津波が見えてからでは逃げ切ることはできない。津波災害から命を守るには、地震が起きたら一刻も早く逃げることである。

迷信の「最初は引き波」

津波の原因となる海底の地盤変動の状況によって、津波の来襲パターンは違ってくる。20万人以上の犠牲者が出たスマトラ島の大津波の場合、タイのプーケットでは、最初は「引き波」から始まった。潮が引いた海に魚が取り残され、ピチピチ跳ねている様子を喜んで見ていた子供たちが、次に襲ってきた大津波に飲み込まれてしまった。一方、スリランカやインド南部ではいきなり高い津波が襲ってきた。なぜか「最初は引き波から」という「迷信」があるが、事実ではない。津波警報が出ているので海の様子を見に行こうなどとは決して思わず、とにかく早く逃げることを考えよう。

地震30分後に38mの津波

2005年1月26日、スリランカのマウントラヴィーニャ付近(合田真氏撮影)

1896年(明治29年)6月15日の三陸沖地震は陸から200kmも離れた深海で地震が起きた。地上では大きな揺れにならなかったというが、地震から30分後に最大38mの津波が襲う。集落を飲み込み、2万人以上が亡くなった。このように地上で感じる揺れが小さくても大きな津波が襲ってくることがある。三陸沖地震のように、揺れは小さくても、長い時間ゆっくりした揺れを感じる地震を「ぬるぬる地震」という。遠くの海底で大きなズレが起きた時に観測される典型的な津波地震である。こうした揺れを感じたら、直ちに海岸付近から離れよう。

また、津波の高さは海岸付近の地形で大きく変化する。さらに、津波が陸地を駆け上がったり、湾や半島などにぶつかって跳ね返ることで、繰り返し襲ってくることもある。気象庁の津波に関する情報を聞くなどして、危険な時はすぐ高いところに逃げよう。

実話の「稲村の火」

2005年1月26日、スリランカのネゴンボ付近の漁村(合田真氏撮影)

外国でもtsunamiと呼ばれるように津波は国際語となっている。それだけ日本は昔から津波災害に襲われてきた。皆さんは以前、小学校の国語の教科書にも載っていたことがある「稲村の火」という話をご存知だろうか。今から約150年前、1854年(安政元年)12月24日、舞台は紀州(和歌山県)の広村。マグニチュード8.4の安政南海地震とそれに伴う津波に見舞われ、村は壊滅的な被害を受けたが、この時、浜口梧陵(ごりょう)という村の郷士が、逃げ遅れた人たちが避難する方向を見失わないようにするため、収穫したばかりの稲に火をつけ、村人を安全な高台に導いたという話で実話だという。

阪神・淡路大震災から10年後の2005年1月、兵庫県神戸市で「国連防災世界会議」が開催された。その冒頭、当時の小泉首相はこの「稲むらの火」のエピソードを紹介し、災害の知識や教訓を身につけること、災害時の迅速な判断・行動、日頃からの災害への備えの重要性を参加者に訴えた。

内閣府のホームページには、「稲むらの火」にまつわる情報や津波対策の教材を紹介するサイトがある。過去の災害から何か学ぶことができそうである。

(監修:レスキューナウ 文:渋谷和久 国土交通省九州地方整備局総務部長。内閣府防災担当企画官などを経て、2006年7月より現職)

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