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防災コラムVol.60

被災者の生活支援制度が改正された

公開月:2006年3月

2007年11月の法律改正で被災者は住宅本体への建設費用に支援金を使えるようになった。

阪神・淡路大震災後に誕生

新潟県中越地震で被災した家屋(撮影/鈴木靖氏)

今年(2007年)7月16日に発生した新潟県中越沖地震は全壊1244棟、半壊5250棟と多くの住宅が倒壊した。住む家を失った人のために、柏崎市を中心に応急仮設住宅が1000戸以上建設された。1995年の阪神・淡路大震災以降も国内各地では地震だけでなく、大きな水害など災害が相次いだ。被災者からは支援の制度が分かりにくい上に、支援も不十分と指摘されてきた被災者生活再建支援法の改正案がようやく2007年11月に成立した。今回はこうした被災者の生活再建を支援する制度を紹介する。

これまでの災害では、住宅を失った人の生活再建費用は全国からの義援金などに支えられてきた。しかし、阪神・淡路大震災では全半壊約25万棟と想像を絶する多くの人が住宅を失ったため、従来のように義援金に頼るだけでは足りず、公的な支援を求める声が上がった。

そこで、議員立法で被災者生活再建支援法が成立し、阪神・淡路大震災の被災者には間に合わなかったが、1999年から施行されている。住宅の再建費用を直接助成することについては賛否両論があった。政府も「個人の資産形成に税金は使えない」という見解だったため、使途の制限がついた。当初は住宅が全壊した世帯棟に対して、生活に必要な家財道具の購入費や引越し費用などの生活関係経費として100万円を上限に支給される内容となっていた。

しかし、住宅の建設や補修費は対象外であったり、年齢や年収による制限などもあり、制度の改正を求める声が高まった。こうしたことから、2004年に住宅を再建する際に必要となる被災住宅の解体撤去費、ローン利子などの「居住関係経費」についても最高200万円を限度に支給できることとなり、生活関係経費と合わせて最高300万円が支給されるという制度に改正された。

住宅本体の建設も可能に

今年11月の改正は、支給上限額を現行の300万円に据え置いたが、使途の制限をなくしたことが最大のポイント。これにより住宅の新築や購入にも使えるようになった。また、世帯主の年齢や世帯年収500万円以下などの支給制限も撤廃されたほか、煩雑な手続きも簡略化された。さらに特例として、今年発生した能登半島地震(3月)、新潟県中越沖地震(7月)、台風11号(9月)、台風12号(同月)の4つの災害の被災者にも適用される。

地震専用の保険

飲み水の備蓄も大事だが、保険の加入も検討しよう

ところで、国の支援制度がどれだけ充実しても、住宅を再建する費用をすべて公費で支援するということは難しい。そこで、是非知ってほしいのが「地震保険」だ。通常の火災保険では地震を原因とする火災での損害や地震により延焼・拡大した損害は補償されない。「地震保険」は居住用の建物と家財について、地震によって受けた損害を補償する地震災害専用の保険だ。民間の保険会社と契約し、保険責任の一定額以上の巨額な損害が出た場合は政府が再保険する特別な保険である。

「地震保険」は火災保険に付帯する方式での契約となり、火災保険とセットでなければ契約できない点に注意が必要だ。すでに火災保険を契約していれば、契約期間の途中からでも加入できる。建物は5000万円、家財は1000万円が限度となっている。

地震保険の保険料は保険期間(短期、1年、2~5年の長期)、建物の構造(木造か非木造)、所在地により算出される。例えば、福岡県の木造住宅で保険期間が1年、保険金額1000万円の場合、支払額が1万円となる。南海地震の発生が懸念される高知、徳島両県では2万1500円。首都直下地震、東海地震がいつ来てもおかしくない東京都、静岡県では3万1300円となっている。

「建築年割引」「耐震等級割引」などの各種の割り引き制度もある。また、2007年11月11日から地震保険料所得控除制度もできた。詳しくは各損害保険会社の相談窓口または代理店に相談してほしい。なお、地震保険制度の概要は財務省のホームページで閲覧できる。

このほか、JA共済の「建物更正共済」は、自然災害や火災などで全焼・全壊した場合、満期共済金額の10倍、地震で全壊の場合は5倍の保障が受け取れる。

被災者への生活支援制度はその財源の確保と表裏一体であり、内閣府の中央防災会議では、首都直下地震が起きた場合、約3兆円の支援金が必要と試算しており、財源の面で心配は残る。公的支援の内容を理解し、必要に応じて民間の保険を利用するなど自分の家財の補償について今一度検討することをお勧めしたい。

(監修:レスキューナウ 文:渋谷和久 国土交通省九州地方整備局総務部長。内閣府防災担当企画官などを経て、2006年7月より現職)

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