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防災コラムVol.53

「防災ベッド」を備えよう

公開月:2006年2月

耐震補強の代替措置として一部の自治体では防災ベッドを勧めている。

圧死を免れるために

阪神・淡路大震災では亡くなった人の8割以上が家屋の倒壊や家具の転倒による圧死だった。最近の能登半島地震や新潟県中越沖地震などでも家屋の倒壊がみられた。このため住宅の地震対策が必要なことを改めて認識した人も多いだろう。生き残った後に使う食料品や持ち出し袋の中身をどんなに充実させても、生き残るための対策を講じていなければ元も子もない。今回は耐震対策の中でもユニークなグッズを紹介しよう。

鉄骨製のフレームで保護

上部のフレームで落下物から身を守る。オプションで畳や天井カバーもある

「地震対策」というと大がかりな住宅のリフォームを想像して、コストの面から消極的になる人がいるかも知れない。完璧な対策を一度に実現しなくても、優先度の高い寝室から対策を立ててはどうだろうか。就寝中は無防備な状態で、毎日何時間かは必ず過ごす場所を守ることで、助かる可能性は高まるはずである。

そうした寝室の重要さを意識して、東海地震が想定される静岡県は就寝中の安全を手軽に普及させられる方法を探していた。たどり着いたのが「防災ベッド」であった。同県は「地震から生命を守る 2001しずおか技術コンクール」の防災器具部門のアイデアの部で最優秀賞を受賞したデザインに注目。「プロジェクトTOKAI(倒壊・東海)ゼロ」事業の一環として、金属加工会社の宝永工機(富士市)を選定し、同社が2002年に県の工業技術センターと共同で「防災ベッド」を実用化した。

鉄骨製のフレームが半円状にベッドの上部を覆っており、1階で寝ている時に家屋が倒壊しても頭部や体を保護するスペースを確保できる。標準寸法は、幅110cm、長さ210cm、高さ185cm。開発した宝永工機によると、上から10トンの重みが加わってもつぶれない強度がある。この「10トン」は木造2階立ての家で、上から瓦やたんすなどの生活用品が落ちてきた時の重さを9トンと想定し、それ以上の重さにも耐えられるという意味だそうだ。

旧耐震基準の木造建築向き

この防災ベッドは家の中のどこに置いてもよいわけではない。「重量が120kgのため、木造の平屋や2階建て住宅の1階には適しているが、3階建て以上の建物や鉄筋建物などには重量の関係で適していない」と宝永工機の担当者は話す。平屋や木造住宅に住むことの多い高齢者は置き場所を購入前に考えておく必要があるが、旧耐震基準の木造建築での使用に向いている点は利用者にとって有難いところだ。

自治体の一部補助も

介護用のベッドなどにも取り付けが可能

気になる値段だが約20万円からで、輸送費や組み立て費用が別途かかる。これまで都内で30台、全国で約300台の購入があり、買った人の多くは年金暮らしの高齢者という。場合によっては100万円を超える耐震改修にまで踏み切れないでいる高齢者にとって、防災ベッドは救いとなっているようだ。

とはいえ、20数万円でも金銭的には大きな負担には違いない。それを軽減しようと、自治体も一部補助している。静岡県袋井市では、旧建築基準の1981年5月以前の木造住宅で、耐震診断の総合評点が「一応安全」とされる1.0を下回る家屋に住んでいる人が、指定の防災ベッドを購入する場合、費用の3分の2以内で、1台20万円まで補助。東京・渋谷区では10月から、防災ベッドの設置費を補助する制度がスタートする。50万円を限度に助成があり、高齢者や障がい者らにはベッドの購入の後押しとなるだろう。

他の自治体もこの商品に注目している。8月下旬、東京都は防災ベッドを耐震対策のグッズとして都庁内のギャラリーに展示。耐震工法を紹介する展示や「耐震シェルター」などと並んで、一般への「防災ベッド」の紹介に努めた。都による防災ベッドの展示は4度目で、この製品への信頼がうかがえる。

住宅の耐震補強を金銭的な問題でためらっていた人も、「防災ベッド」を導入することで、安眠が手に入れられるのではないだろうか。

(文・レスキューナウ危機管理情報センター専門員 水谷公郎)

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