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防災コラムVol.48

「緊急地震速報」ってどんなものだろう

公開月:2006年2月

揺れが来る前に情報が届くため、被害を回避・軽減できるが、限界もある。

1秒でも早い情報入手

「今地震が起きるかもしれない」と普段から考えている人はあまりいないだろう。そのため不意を突かれて被害は発生する。もし地震の前に発生を知ることができれば、建物や家具から離れたり、コンロの火を止めるなど被害を回避するための行動ができる。津波やがけ崩れの危険がある地域では、1秒でも早く地震の発生を知ることで、より安全な場所へ避難できる。

緊急地震速報の仕組みを知る

新潟県中越沖地震では震源が浅かったため、緊急地震速報は柏崎市や刈羽村などで間に合わなかった

緊急地震速報は、全国約1000箇所の観測網を利用し、地震の発生後、震源地に近い地震計が揺れを感知。地震の規模や日時、発生場所を自動で計算して、遠くで発生した地震の情報を地震動が地中を伝わるよりも早く知らせるもので、地震予知とは異なる。

その仕組みは地震動のP波(第一波)の後に来るS波(第二波)の強い揺れよりも、通信回線を使った電気信号の方が早く伝わるため、距離に乗じる時間差を利用してほぼリアルタイムに情報が出せる。この情報は2007年1月から一部の事業者向けに利用が始まっており、医療機関や建設現場、大規模集客施設などで担当者が緊急地震速報を受けとると、施設内に適切な案内が流れるよう計画されている。

新幹線の安全管理に利用

ところで、鉄道各社では1989年頃から地震早期警報システム「ユレダス」を設置し、地震が発生したことを早期に伝えることで被害抑止に取り組んでいる。東海道新幹線の沿線に観測計を設置し、P波を観測すると地震の位置や規模を特定、基準に達すれば、2~3秒で警報を出し全線を停止させる。阪神・淡路大震災以降はその他の新幹線や在来線にも導入されている。高速に移動している新幹線を地震の揺れが伝わる前に停止させることは難しいが、スピードを落とし、大きな揺れの中で走行する時間を減らすことで脱線のリスクを軽減している。2004年10月の新潟県中越地震で上越新幹線が脱線したが、後続列車が現場に追突するなどの2次災害を防いだり、一部区間の復旧までの時間が短縮される効果を挙げた。

限界を知る

ある民間企業のサービスでは、地震の前に緊急地震速報がPCの画面に流れる

緊急地震速報はS波よりも電気信号の方が早いことを利用した秒差による情報であるため、最速でも揺れ始めるまで十数秒しか猶予がない。そして、阪神・淡路大震災のような震源地と都市が近いケースでは時間差が生まれないため、情報の到達が間に合わない。

また緊急地震速報は、「本当に必要とされる人や機関には到達が間に合わず、間に合うところには必要とされない」という意見がある。地震によって震度5弱以上の地域が出る可能性がある場合、時間、震源地、地震の規模を予測・発表するが、マグニチュードの計算には震源域を知ることが必要で、震源域の面積が大きいほどマグニチュードは大きくなるため、震源域が大きく特定するのに時間がかかると地震までの猶予時間は少なくなる。

情報の伝え方にも課題がある。駅やデパートなどの大勢の人が集まる場所では、伝え方によってはパニックとなって、出入り口に大勢の人が殺到しかねない。反対にどう行動すれば良いのかわからず「凍りつく」可能性もある。また、自動車の運転中にカーラジオなどで緊急地震速報を聞いた場合、音楽を聞くなどして情報を知らなかった運転者との行動が異なることによって事故を誘発する恐れもある。

中越沖地震の柏崎には7.1秒後

緊急地震速報は揺れが始まる前に必ず得られるとは限らない。2007年7月の新潟県中越沖地震では、震度6強の柏崎市や刈羽村に速報が届いたのは地震発生から7.1秒後だったという。速報を防災・減災に活かすには、実際に速報を受け取れなかった場合の対策も用意しておくことが必要だ。火災警報ベルと点滅灯のように、「火災警報のベルが鳴ったら落ち着いて避難する」というような基本が分かってこそ情報が活かされる。気象庁は緊急地震速報を活かすための「心得」を配布しており、事前に想定される場面での対応を確認しておこう。最後に、緊急地震速報で地震の発生に気が付いても建物や家具が倒れてしまっては元も子もない。住宅の耐震化、家具の固定もお忘れなく。

(文・レスキューナウ危機管理情報センター専門員 大脇桂)

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