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防災コラムVol.47

学生による災害ボランティア活動の取り組み

公開月:2006年2月

無表情だった被災者が口を大きく開けて笑った。被災地に学生たちがもたらしたものは?

若者を成長させる舞台

北海道南西沖地震で大きな被害が発生した奥尻島

国際貢献や環境保護、福祉活動、災害救援など社会のために自分のパワーと感性を活かしたい。そうした希望を持つ学生が集まった組織がNPO法人「国際ボランティア学生協会」(本部事務局=東京・世田谷)である。IVUSAは、International Volunteer University Student Associationの頭文字をつなげ、「イビューサ」と読む。

IVUSAは1992年に国士舘大学が行った企画がきっかけとなり設立。学生の夢を募集し、それを実現させようという企画で、「社会に貢献したいという希望を持つ学生が多いことに驚いた」と代表の下村誠氏がいうほど多数の応募があった。過去13年間に活動に参加した約2万3000人の学生の多くは、「多くの人々と触れ合い、共に活動することで奉仕の大切さに気が付いた」と当時を振り返ることからも若者を成長させる舞台となっているようだ。現在、首都圏と関西圏を中心に43大学から625人が会員となっている若い息吹に満ちたボランティア団体を紹介しよう。

 

地震から12日、奥尻島へ

1993年7月、奥尻島でマグニチュード7.8の北海道南西沖地震が発生、死者・行方不明者200人を超す大災害だった。テレビで悲惨な光景を見た学生が街頭募金を始めた。普段は発展途上国へおもむき、小学校の建設活動を行う学生もおり、「現地で救援活動をしたい」という意見が日増しに強まっていった。その反面、技術も専門性も十分でない学生に何ができるのかという不安、余震などが心配された。そのような中で、地震発生後12日目、鍋や釜、食料を背負って上野駅を20人の学生が出発した。奥尻島にフェリーが近づくと、テレビで見た「どこか他人事の現実」が、「自分自身の現実」へと変わった。

被災者が心を開いた瞬間

心肺蘇生法やAEDの扱い方などの講習会

被災現場からの情報で自分たちにできることは、限られていることを認識していた。しかし、被災者に面と向かわない場所での作業は、被災者にどの程度役に立っているのか分からず、支援している実感が得られなかったという。苛立ちからか学生の顔から笑顔が消え、やりきれない空気が支配したと当時の参加者は振り返る。

活動6日目のミーティングで「被災者の苦しみはどうすることもできない。でも自分たちにもできることをやることで貢献しよう」と確認し合った。その翌日に大量の布団が被災地に届いた。布団を避難所にどちらが早く運び込むか自衛隊員と競争するうちに、避難所で今まで無表情でいた被災者が自然と口を大きく開けて笑っていた。被災者が初めて心を開いた瞬間だった。学生たちの何かが吹っ切れた。「おやじ、たまにはヒゲ剃れよ」「おばちゃん、昔はきれいだったんじゃない?」など、学生たちは持ち前の明るさで被災者に接した。救援者意識も被災者意識もない、普通の学生と島の人たちとの会話だった。

しばらく近寄らなかった子供がまた遊びにくるようになった。なぜ来なかったのか聞くと、「お兄ちゃんたちが面白くなかったから」という。知らず知らずのうちに学生が出していた「救援者意識のおごり」を子供たちは敏感に感じたのだろうか。パニック状態の中で未熟な学生が何かしてあげたいと思う気持ちが強く出たことで、「自分たちとは別な人間」として住民と接してしまったのかも知れない。現地入りした学生は「今の環境をよく理解し、楽しんで活動することが本当の意味での被災者の支援になる」と現地での発見を語る。

研究所設立、セミナーなど活動拡大

新潟県中越沖地震ではチェーンソーを使ってがれきを撤去

さて、IVUSAは被災地での活動を前に安全衛生に関する研修などを行ってきたが、それが2006年に「IVUSA危機対応研究所」と発展。心肺蘇生法や止血の方法、搬送の方法、AED(自動体外式除細動器)の扱い方などの危機対応についての講習会を開き、日常から身近な危機への対応に取り組んでいる。こうした活動が評価され、同年に防災功労者内閣総理大臣賞を受賞した。また、効果的な救援活動を実施するため災害情報のネットワーク構築を目指し、レスキューナウ社と情報支援ボランティア育成のためのセミナーを共催した。

さらに、地域の防災訓練やイベントにも参加している。世田谷区の高校で行った地域の防災訓練で「災害時想定訓練」を担当したり、「小田原ツーデーマーチ大会」ではAED持参で小田原赤十字救護活動に協力。「東京マラソン2007」でもイベントを補助した。2007年度からは災害時要援護者の避難支援に関する調査研究事業を展開。災害時の救助活動や避難といった減災・防災に取り組むための「共助の力」を向上させるため「危機対応マニュアル」の作成や「災害時対応訓練」を実施し、地域の啓蒙活動に取り組む予定だ。また、台湾中部地震(1999年)やスマトラ沖地震(2004年)といった海外の災害現場へも支援に出向くなど活動範囲を広げている。

新潟県中越沖地震でも活動

IVUSAは新潟県中越沖地震に際して、発生翌日の7月17日に東京を出発、18日から29日まで関西からのメンバーを含む延べ43人が、柏崎市内で被災家屋の家財整理、ごみの整理運搬、避難所の運営などのボランティアを行った。また同じ頃、東京では学生が現地の避難所や入浴施設などの情報をレスキューナウ社と共同でインターネット上の地図に登録するといった情報支援活動を行った。災害現場を陰で支え、社会と積極的にかかわりを持ちたいと考える学生が一人でも増えることを目指して活動を続けている。

(文・レスキューナウ危機管理情報センター専門員 大川義弘)

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