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防災コラムVol.44

長くて暑い夏が来る?

公開月:2006年2月

四国は渇水、九州南部は大雨による被害に見舞われた梅雨の時期。夏の天気を読み解くキーワード「ラニーニャ」から考えると‥‥。

東京で平年の半分の降水量

梅雨の曇り空。東京都内で撮影

7月に入り各地で海開き、山開きなど、夏の準備が始まっている。梅雨明けの時期が話題になるのもこの頃であり、盛夏の平均気温が1℃ 上昇すると、実質GDP (国内総生産)を数千億円押し上げるという試算もある。暑い夏を待ち望むのは子どもたちばかりではないようだ。さて、今年の梅雨、東京では6月14日の梅雨入り宣言後、1週間ほど好天が続き、生活の上でも少雨、高温を実感しているのではないだろうか。

データで確認してみよう。6月の平均気温は関東から北海道で全般的に高めで、関東では1℃、北海道では2℃以上平年より高くなった。降水量では西日本の渇水が報道されているように、3~5月の少雨傾向に引き続き、梅雨に入っても高知の降水量は平年の37%であった。香川、徳島両県の水がめ、早明浦ダム(高知県)の貯水率は27.9%(7月3日現在)で、東京でも6月の降水量は平年の半分ほどである。

まとめると、今年の梅雨は降水量が少ないことが特徴のようで、原因については「ラニーニャ現象」が挙げられている。これは「エルニーニョ現象」とは逆で、赤道東太平洋ペルー沖の海水温が平年より低くなる現象である。気象庁は4月に「ラニーニャ現象が2カ月以内に発生する可能性が高い」とし、「今夏は高温で、降水量が少ない可能性がある」と警告していた。そして予報通りに6月はラニーニャの発生を確認しているが、なぜラニーニャが起こると日本は暑くなるといわれるのだろうか。そして、今年の夏はその通りに進行しているのだろうか。

ラニーニャで長く暑い夏?

地球上のある地域の気象変化が、離れた地域に影響を及ぼすことを「テレコネクション」という。ラニーニャの場合は、ペルー沖の海水温が低温だった結果、西太平洋赤道付近(フィリピン東方海上)の海水温が高くなり、大気に活発な上昇流が起こるため、その下降流となる太平洋高気圧が強化、長く暑い夏になるといわれている。

しかし、これまで経験したラニーニャ現象通りに季節は進行していない。気象庁などによれば、この梅雨の少雨はラニーニャ現象による太平洋高気圧の強化の結果としての梅雨前線の北上が原因ではなく、逆に日本列島の梅雨を演出するオホーツクと太平洋高気圧の勢力が強まらなかったため、梅雨前線が形成されにくく、長雨とならなかったと説明されている。しかし、気象庁が6月下旬に出した最新の3カ月予報や、気象会社のコメントでは、7月に入るとラニーニャ現象により太平洋高気圧が強まり、一気に梅雨前線を北に押し上げ、梅雨明けは遅れることはないという。

このように、少雨という結果だけをみれば予報通りともいえるが、その原因は違うところにあるようだ。予測を試みる時間が長くなればなるほど、必要なデータの収集対象となる地域が拡大し、膨大なデータを扱わなくてはならないためで、長期予報の難しさはここにあるともいえるだろう。

2004年との比較

さて、暑い夏といえば2004年が記憶に新しい。都内で最高気温39.5℃を観測し、東京の7月から9月の平均気温が26.9℃(平年値25.3℃)で、台風の発生数29個(上陸数10個)となった年である。

2004年6月の天気との比較
降水量(ミリ) 平均気温 梅雨入り 台風発生数 赤道付近の現象
2004 112.5 23.7 6月6日 8(2) なし
2007 80 23.2 6月14日 2(0) ラニーニャ
平年 164.9 21.8 6月8日 4.5(0.2)

 

2004年6月と今年を比べると、平均気温は2004年が23.7度、2007年が23.2度と高温であることは共通しているが、今年は梅雨入りが6月14日で平年の8日より遅く、降水量は平年の164.9mmに比べると80mmと少ない。また、台風の発生数も平年が4.5に対し、2007年は2個と少ない。

台風の発生はフィリピン東方海上の対流活動と関係している。ラニーニャ現象によりその海域は対流活動が活発になるといわれているが、現状はそうではなさそうで、太平洋高気圧が強まらないことと関係がありそうである。

2004年7月の赤道付近の太平洋はどのようになっていたのだろうか。当時、東太平洋のペルー沖の水温は平年よりやや低く、エルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していなかった。しかし、赤道付近の中部太平洋は正偏差の海域があり、活発な上昇流となっていた。その影響で中部太平洋では下降流となり太平洋高気圧が発達し、ベンガル湾、インドシナ、フィリピン付近では強い上昇流となり、多くの台風が発生したと考えられている。

では、今夏はどうなるのだろうか。海面水温だけで判断はできないが、気象庁によると、ペルー沖にラニーニャが発生しており、その範囲も広く、赤道付近の西部太平洋に正偏差の海域がある。しかし、2004年とは違い、東南アジアからインドにかけての海水温は平年より低めで、太平洋高気圧が発達しない理由とも考えられている。このままだと猛暑とした予報は外れそうであるが、海水温の推移によっては今夏の様相は変わってくるだろう。

梅雨の末期は要注意

兵庫県などに被害をもたらした2004年10月の水害

今年の梅雨の少雨を題材にラニーニャ現象について解説してみたが、自然現象の予測は簡単にいい切れないことがお分かりいただけただろう。過去の経験から、ラニーニャ現象の時は高温、少雨の傾向があると指摘することもできるが、確実にそうなるわけではない。自然は人間の知恵よりもはるかに複雑なのである。

いずれにせよ、7月の梅雨の末期となる。今年の梅雨のもう一つの特徴として、例えば、九州南部のような局地的な多雨傾向があるようだ。7月2日には、佐賀県、大分県で豪雨による冠水被害が発生し、同月3日には鹿児島県指宿市のJR指宿枕崎線で土砂崩れによる脱線事故が起きている。過去にも梅雨前線による水害や土砂災害は繰り返されている。西日本の渇水は解消に向かう可能性は高いが、これから梅雨明けまでの間、逆に雨による災害への警戒が必要になるだろう。大きな災害もなく、夏休みを迎えたいものである。

(監修:レスキューナウ 文:気象予報士 竹田宜人)

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