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防災コラムVol.40

階段でもスムーズに運べる搬送器具"EVAC+CHAIR"

公開月:2006年2月

負傷者などを運ぶ搬送器具は何種類も販売されているが、階段での利用を想定したものは意外に少ない。

9・11では69階から避難

2001年9月11日に発生した米国同時多発テロは約3000人の死者が出るほどの大惨事にもかかわらず、四肢まひの障害を持つ人がワールドトレードセンターに設置されていた搬送器具を使い、仲間の助けを借りながらも69階から階段を使って避難したという。今回はその時に活躍した”EVAC+CHAIR”(イーバック+チェア)を紹介しよう。

階段を使わないと逃げられない

階段に接しているローラーベルトがスピードと衝撃を和らげる

日本でもここ数年、高層マンションの建設が都市部を中心に増え続けている。より上階の部屋であればあるほど、エレベーターの必要性は高く、生活に欠かせないものになっている。一方で、エレベーターに頼った生活は災害が発生した時に様々な問題があると指摘されている。地震や大停電で閉じ込められる人が多数発生すると、救助までの時間は長くなる。また階段を使用する場合も人を背負えば、両手をふさいだ状態で階段を降りるため転倒の恐れもある。このようにエレベーターは避難の手段として好ましいとはいえず、階段での避難は免れないのである。

階段でも1人で運べる搬送器具

市販されている担架を階段で使用した場合、運ばれている人は上下どちらかに傾く。このため担架の前後に人が必要で、助ける側にも負荷がかかる。もし一人で搬送しようとすれば背負って運ぶしかなくなる。しかし、”EVAC+CHAIR”は椅子の足部分に、特殊なキャタピラ構造のゴムローラーベルトがついており、階段で生じる段差の衝撃もなく階段を円滑に滑降し、座ったままで搬送することが可能だ。利点は他にもある。通常の担架は前後に2人が必要であったが、”EVAC+CHAIR”は後方で支える1人で済む。また、階段を下りる際は通常の歩く速度から駆け下りるような速さまで調整が可能である。さらに、補助輪がついているため、階段での縦移動だけでなく、平坦な場所での横移動もできる。折りたたみ式のため使わない時は省スペースで収納できる。

避難する権利も平等に

折りたたみ式でコンパクトになる

米国や欧州の一部では “EVAC+CHAIR”のような災害時要援護者向けの器具を設置することを法律で義務付けている。しかし、日本ではEVAC+CHAIR”のような階段による避難を「誰でも」「より安全に」「より迅速に」実現する器具の設定はまだ定められていない。危険から逃げる権利や救助される権利は災害時要援護者も平等に持つべきだろう。

地域やマンションで行われる防災訓練では、高齢者や障害者の避難や移動の際に、迅速な避難や救助する側の負担軽減といった課題が発生する。これを克服するためにも、現在では多くのアイデアを盛り込んだ搬送器具が何種類も販売されている。個人で購入するには予算的にも厳しい面はあるが、地域自治会やマンションの管理組合などで購入を検討してみてはいかがだろうか。

(文・レスキューナウ危機管理情報センター専門員 歌代翼)

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