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防災コラムVol.38

災害時も焼きたてのようなパンを

公開月:2006年2月

両立が難しい「長期保存」と「おいしさ」の両面を兼ね備えた商品がある。

災害に立ち向かうために

被災生活では、「朝は和食、昼はパスタ」のように好みに応じた選択は一般的には難しい。被害の程度によるが、コンビニエンスストアやレストランなどは閉鎖されたり、水道やガスが止まってしまう最悪の事態を想定して非常食を準備しておくのが賢明だろう。では何を用意しておくとよいのだろうか。古くからは乾パンが知られ、最近はアルファ化米などもあるが、今回は焼きたてのような食感という缶詰に入ったパンを紹介しよう。

避難所の体育館などでは、おにぎりやパンが1日に1~2個配られただけといった話を耳にする。過去の災害では食料の配布が不十分で亡くなったという報告はないが、災害時は普段以上に精神的、肉体的に疲労がたまりやすく、睡眠や栄養の摂取が重要になる。そこで、あらかじめ災害に備えて好みに応じた食品を用意しておけば、元気に災害に立ち向かえるだろう。

世界中の困っている人に送りたい

今回紹介する「パンの缶詰」は、2004年10月の新潟県中越地震、2005年3月の福岡県西方沖地震、2006年5月のジャワ島中部地震などの際に現地に届けられ、被災者に喜ばれたという。その開発までには大きな困難があった。開発・製造している株式会社パン・アキモトの秋元義彦社長は、阪神・淡路大震災で約2000個のパンを現地に送ったのに、賞味期限を過ぎると捨てられてしまうことにやりきれなさを感じたという。また、「知人とインドやネパールを旅行した時に見た路上生活者に何かしてあげられないかと思った」と話すように、海外での経験もきっかけとなっている。

乾パンのように長期間の保存ができて、ふっくらと軟らかいパンを作れないか。それがあれば世界中の食べ物に困っている人に送ることができる。こう考えた秋元社長は試行錯誤を繰り返した。

しかし、焼きたてのふっくら感を出すと、長期保存が難しくなってしまうという大きな壁が立ちはだかった。ふっくら感を保つためには水分が必要で、そのためカビが生え易くなってしまうのだ。一方、長期保存に比重を置くと、乾燥させるためふっくら感がなくなり、味が劣化してしまう。「おいしさ」と「日持ちの良さ」は相反するものだった。

37カ月の長期保存を実現

現在、複数の種類の缶入りのパンが販売されている

苦労を重ねた末、たどりついたのがパンの生地をスチール缶に詰め、そのままオーブンで缶ごと焼き上げ、すぐに脱酸素剤を入れて密封する方法だった。缶を熱殺菌すると同時に、脱酸素剤で缶の空気を抜くことで菌の増殖と酸化による品質の劣化を防ぐのだ。この手法によって37カ月の長期保存が実現した。もう一つ、味の面も良くなった。パン生地を熱に強い特殊な紙で包んで焼くことで、適度なしっとり感を出すことが可能になったという。「おいしさ」と「日持ちの良さ」を同時にかなえて「缶入りソフトパン」が誕生した。

 

衛生的で手軽

アキモトの缶入りソフトパン(パン全体はもっと大きい)

秋元社長は、この商品はソフトパンのため歯の悪い人でも食べられることや、缶のフタを開けるまで密閉状態であり、衛生的であるとして自信を見せる。このほか、災害時は何も調理せずに食べられる「即時性」という点も求められ、こうした防災用品として重要な条件をクリアしている。もちろん、災害時に限らず、キャンプなどのレジャーでも食べられる手軽さ、持ち運びの便利さも持つなど、災害時に必要とされる食品としての条件を多く備えている。

復旧作業の合間や避難所の一角などで、秋元社長の情熱と苦労の末に生まれた「缶入りソフトパン」を食すれば、落ち込みがちな気分が励まされ、災害に立ち向かうエネルギーが沸いてくるだろう。

(文・レスキューナウ危機管理情報センター専門員 水谷公郎)

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