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防災コラムVol.37

災害時の外国人サポート体制

公開月:2006年2月

着実に増える「隣人」との共生を考える

阪神・淡路大震災でクローズアップ

阪神・淡路大震災から12年。大きな犠牲の上に得られたさまざまな教訓がその後の災害対策に変革をもたらしている。その一つに外国人被災者対策がある。言葉が通じない、文化・習慣が異なる、これからの生活をどうするか…。さまざまな問題発生とともに、そのサポート体制も自然発生的な援助から継続性を持つ組織的な支援に代わり、行政の役割にも組み込まれるようになりつつある。一方で、最近の社会の変化を受けた課題も浮き彫りとなっている。

ボランティア活動から組織的支援に

阪神・淡路大震災では外国人約180人が犠牲となり、2万人以上の日本語を不自由とする外国人被災者が突如発生。何が起きたのか、どうすればよいのか、どこに行けばどのような援助が受けられるのか。災害発生時、被災者が最も必要とするのは正しい情報であり、これは外国人であっても変わらない。

震災直後から被災地で救援活動に従事し、いちはやく外国人被災者のニーズをとらえたボランティアの中から、電話相談やニュースレターの発行などを行った「外国人地震情報センター」、在日韓国・朝鮮人、ベトナム人向けのリアルタイム情報提供から始まった「FMヨボセヨ」「FMユーメン」、外国人被災者の治療費・弔慰金負担問題に取り組んだ「外国人救援ネット」といった組織が誕生した。

それらは以後、「多文化共生センター」「FMわぃわぃ」「NGO神戸外国人救援ネット」などの団体に発展、神戸を中心にそれぞれが連携しつつ、新潟県中越地震や能登半島地震などの災害時支援に加え、日常生活からの外国人との共生を目指す活動を継続している。

行政は防災対策に重点

起震車で実際の揺れを体験・消火器を使ってみよう(しんじゅく多文化防災訓練より)

新潟県中越地震の際、長岡市周辺には出稼ぎ労働者など2000人以上の外国人が生活していた。長岡市などによる在住外国人を対象に行ったアンケートでは、約20%が「発生当時、必要な情報を得られなかった」と回答。そもそも、地震に対する知識が少ないことも何が起こっているのか分からず、不安を感じさせた原因の一つとされる。

その点で、行政は防災対策の啓蒙活動に重点を置いている。在日外国人が多数暮らす大都市を中心に進んでいるのが、多言語で翻訳された防災・危機管理マニュアルの配布。宮城県仙台市や東京都のように映像化したDVD版を作成したり、福岡県飯塚市は洪水ハザードマップを外国人向けにも制作している。いざという時のことを考えると、今後は実践的な対応策が望まれる。新宿区が外国人を対象とした防災講座や「しんじゅく多文化防災訓練」を開催しているほか、2006年9月には横浜市青葉区の防災訓練に20カ国の外国人44人が参加、2007年1月には東京都が被災外国人支援を主テーマとした防災訓練を実施、外国人や通訳ボランティア約60人が参加している。

 

200万人超す外国人滞在者

ところで、日本には現在、外国人がどのくらい滞在しているのだろうか。日本国内の外国人登録者数-いわゆる在日外国人は1989年には約100万人弱であったのが、中国、フィリピン、ブラジル、ペルーなどの「ニューカマー」が平成に入り着実に増加。2005年には約201万人と倍増し、日本の総人口の1.57%を占めるに至っている。

多様化した情報伝達ツール

阪神・淡路大震災の時から在日外国人が約1.5倍となる一方で、情報伝達ツールもインターネットや携帯電話の普及で大きく変わっている。特に携帯電話は外国人にとって母国と手軽に連絡が取れるツールとして普及が進んでいるとされるが、反面、在日外国人の地域コミュニティの広がりを考えると、正しい情報が提供されないことによるデマなどの口コミでの伝播が懸念される。

新潟県中越地震の際、携帯電話向け多言語情報提供サイトが特設された。レスキューナウがブログに提供する災害情報を英語、ポルトガル語、タガログ語に翻訳して無料で提供したのである。この実績をもとに、2006年には多言語情報提供システムが構築され、文字情報や音声情報への変換が容易となったほか、災害時多言語情報センター(JOSEF)が発足し、日常からの情報が10言語(英語、中国語、韓国・朝鮮語、ポルトガル語、タガログ語、スペイン語、インドネシア語、タイ語、ベトナム語、やさしい日本語)で翻訳されている。

日常からの共生を目指して

災害時の外国人被災者サポート体制の現状と状況変化を見てきたが、今後の課題としては

  • 防災訓練参加など、実践的な経験を通じた日頃からの防災意識の向上
  • 携帯ツールなど適切な情報伝達手段の認知徹底
  • 観光地、公共交通機関などで発災時の外国人を含めた具体的な対応方法の検討

などが挙げられる。

通訳・翻訳ボランティアハンドブック

東京都は災害時に災害対策本部の設置に合わせて「東京都外国人災害時情報センター」を設置している。そこでは都内で被災した外国人に関する情報の収集・提供を行うこととしており、市民から防災(語学)ボランティアを常時募集している。語学を得意とする方は協力を検討していただきたい。また「多文化共生センター」では、各種経験に基づくテキスト「災害時に役立つ! 通訳・翻訳ボランティアハンドブック」を作成している。

語学が得意でなくても、携帯サイトを知っておけば、状況次第では正しい情報を伝えることができる。ひいては外国人被災者を「災害弱者」とするだけではなく、互いに力を出し合える存在となるかもしれない。その意味でも、日常から隣人と接点を持ち、共生することが国際化社会における重要なポイントになるといえるだろう。

(文・レスキューナウ危機管理情報センター専門員 宝来英斗)

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