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防災コラムVol.33

知的障害児や認知症患者も要援護者

公開月:2006年2月

本人以外からは障害は分かりにくいが、困っていたら話しかけて手助けしよう。

福祉に加えて防災も

NPO法人「ぴーす」(大阪府堺市、小田多佳子理事長)は、知的障害児とその家族の家庭の支援に取り組む福祉を専門としている団体である。スタッフの多くは学齢期の障害児を育てる母親だ。福祉だけでなく、防災にも取り組み始めたのは2004年の新潟県中越地震がきっかけだった。小田理事長は「他人の迷惑になるとして避難所に行かずに自動車の中で生活する知的障害児の家族や、中には大きな環境変化に耐えられずパニックし続ける自閉症児の姿を報道で見てショックを受けた」という。

行政が作成した災害弱者対策には、高齢者や乳幼児・妊婦や身体障害者などのほか、一見して障害の有無が分かりにくい知的障害者への対応はどの程度盛り込まれているのだろうか。一口に「災害時要援護者」といっても、高齢者と知的障害児とではとるべき対策は違うのではないだろうか。

「周囲の理解に不安」半数以上

「ぴーす」は、障害児の家族に必要な防災は何かという観点で2005年度に堺市内の養護学校・ろう学校5校にアンケート調査を行った(845人に配布、442人が回答)。回答者の約80%が知的障害を持つことが分かり、そのため周囲に迷惑だと思われないか(50%)、避難所にいられるか(51%)、障害児と一緒に寝る場所を確保できるか(63%)など、自分たちのことを周囲に理解してもらえるか大きな不安を感じているという結果となった。

またアンケートからは、もし一人で被災した場合に周囲に「助けて」と伝えることができず、周囲も存在に気づくことができないことや、障害児の家族は周囲へ大きく依存するものの、特段の備えもないという状態も浮かび上がっている。

防災カードの利用を提案

そこで「ぴーす」は家族自身に防災意識を持ってもらうことを考え、当事者としてどのような防災対策をとるべきかを冊子にまとめた。例えば、普段から積極的に街に出て理解者を増やすことに努めたり、コミュニケーションをとりづらい子どもには防災カードの利用を提案している。この取り組みは、災害時要援護者の中の「知的障害児」にスポットをあて、分かりやすく説明した点が評価され、防災教育の新しい取り組みを支援する「防災教育チャレンジプラン」において2005年度の特別賞を受賞した。

ワッペンに要援護者マーク

防災手帳

冊子の次はワッペンや手帳作りにも乗り出した。2006年度にワッペン(300円)、防災手帳(200円)と防災キーホルダー(1500円)を作成。防災ワッペンは表側に「要援護者マーク」、裏側に▽名前▽連絡先▽要援護の理由を書き込めるようになっている。障害の状態が重く、状況の把握が困難で何が起きているか分からなかったり、自分で援助の意思表示ができない障害者に常時身に着けてもらうことで、いざという時に助けを求める狙い。重度の知的障害児だけでなく、認知症高齢者などの利用も望まれる。

 

無視せずに助けて

小田理事長は、災害時にワッペンをしている人や障害を持つ人を見かけたら、「無視せずに、ワッペンの緊急連絡先に連絡するなど、危険を避けられるよう助けてあげて欲しい。何か質問や指示をする時は短く、はっきり話しかけて下さい。言葉だけでなく、身振りや指差しなども使って明確に伝えることが大切です」と周囲の協力を呼びかけている。

「防災ワッペン」の表側にある要援護者マーク

防災手帳には

  • 保護者の名前
  • 緊急連絡先
  • 障害名など援護が必要な理由
  • 障害者手帳の有無や等級
  • 住所
  • 家族との連絡方法
  • 家族の集合場所
  • 保険証記号や番号など

を記載し、緊急時に自分の意志で手帳を提示してもらう。

防災キーホルダーは、「自分が要援護者であることを他の人に知らせたいが、ワッペンは子どもっぽくて嫌だ」という軽度の知的青年の声を受け、「かっこいい」キーホルダーを作成した。要援護者マークと名前や連絡先が記載されていて、木製と金属製の2種類がある。

「ぴーす」では現在、これらを広く普及するためPRしているが、「このマークを全国に普及させ、障害児とその家族の悩みを広く知ってもらいたい」としている。

(文・レスキューナウ危機管理情報センター専門員 水谷公郎)

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