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防災コラムVol.25

DMAT(ディーマット)ってなに?

公開月:2006年1月

最近、各都道府県で設置が相次いでいるが、その活動はあまり知られていない。

過去の災害から得たもの

戦後最大級の都市直下型地震となった1995年1月17日の阪神・淡路大震災は、死者6434人、負傷者43792人に上った。犠牲者のうち約8割が圧死であった中、震災に携わった消防・警察・行政などの公的機関のあり方だけでなく、災害現場における医療についても、多くの課題が浮き彫りとなった。がれきなどに長時間挟まれ、救出後に発症する「クラッシュ症候群」に関しては、市民はおろか、医療に携わる人たちにも当時はあまり認知されていなかった。この震災で「救える命」がどれだけあっただろうか。その教訓を生かし、レスキュー隊の救助活動と並行して医師ががれきの下に入り、医療行為を行う「がれきの下の医療」の必要性が認識されるようになった。震災の教訓から「がれきの下の医療」をはじめとする多くの災害医療の課題を解決するために、「ドクターカー」「ドクターヘリ」「DMAT(災害派遣医療チーム)」が誕生した。

2005年4月25日に発生したJR福知山線脱線事故では、阪神・淡路大震災の教訓が生かされた。事故直後から県内外から101人の医療従事者が、事故現場や搬送先の病院を支援するために集まった。最後の生存者は事故発生から9時間後に発見され、22時間後に救助されている。この間、事故現場では済生会滋賀県病院、兵庫県災害医療センター、千里救命救急センターの合同チームが大破した車両の中に入り、クラッシュ症候群を警戒して点滴をしながら救助する「がれきの下の医療」を行っていた。これらの活動により多くの命が救われたのである。

専門に訓練された医療チーム

災害現場での混乱を防ぐため、DMAT隊員は決められたロゴの入った服装で活動する(東京DMAT隊員養成研修で)

DMAT(Disaster Medical Assistance Team)とは、専門的な訓練を受けた医師・看護師などからなり、災害発生直後から活動できる機動性を備えた医療チームである。負傷者が多数発生する災害現場では、DMATが消防や警察、自衛隊などの関係機関と連携しながら救助活動と並行して医療活動を行う。大規模な災害となれば、多くの負傷者に効率良く対応するため、どの負傷者を優先して治療するか、どの病院に搬送すべきかを判断する「トリアージ」も行う。

DMAT隊員となるには、医療従事者であっても養成研修(東京DMATは1.5日、日本DMATは3.5日)を受講しなければならない。また、危険を伴う災害現場で隊員の安全を確保するために、被服・ヘルメット・保護靴などが支給されている。私たちのイメージする「白衣を着た災害現場の医師」はテレビドラマの世界の話であって、実際には存在しないのである。

日本初のDMAT

次から次へ運ばれてくる負傷者に迅速に対応する(東京DMAT隊員養成研修で)

日本におけるDMATの発足は、東京DMATが最初である。「計画運営検討委員会」などを経て2004年8月に発足した。東京DMATは大規模な災害だけではなく、工事現場の事故や自動車の多重衝突事故、都市型災害などに対応することを目的に、都内のDMAT指定病院に所属し、研修を受けた医師1人・看護師2人で編成されている。2007年3月末現在の登録数は17病院で500人を超える。活動エリアは東京都内に限らず、新潟県中越地震に至るまで、多くの現場で活躍している。

さて、全国レベルでは2005年4月に厚生労働省が米国のDMATを模範とした「日本DMAT」を構築するための研修事業をスタートさせた。現在では、国のDMAT研修を受けたチームを道府県が編成している。東京を除く、他道府県においてはDMATの具体的活動の準備にまで至っているところはまだ少ない。今後の大規模災害に備え、輸送機などを使って負傷者を県外へ移送する「広域搬送」と、現場での「がれきの下の医療」実現のため、隊員数を増強中である。

東京マラソンにも派遣

東京DMATは化学兵器テロや、現在立候補している2016年夏季オリンピックなどのマスギャザリング(大規模な集客行事)対応をも想定した研修を行っている。その一環として2007年2月18日に約3万人が参加した東京マラソンでは、2チーム6人が東京DMATとして出場している。

2006年には埼玉県や神奈川県などでも設立され、今後も続々と発足するDMAT。あなたの街でも活躍している場面に遭遇する日は近い。

(文:レスキューナウ 危機管理情報センター専門員 歌代 翼)

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