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防災コラム

vol.
023
意外と知られていないクラッシュ症候群

がれきの中から救出されたのに助からない!? 救出された時には元気でも数時間後に急変することがある。

広く知られたのは最近

1995年1月17日の阪神・淡路大震災でがれきの下に埋まった状態から救出された人が数時間経った後に症状が急に悪化し、死亡した例は多数に上る。これが俗に「クラッシュ症候群」(別名:クラッシュシンドローム・挫滅症候群)と呼ばれるもので、この時はまだ一般に広く認知されておらず、概算の記録ではあるが、少なくとも372人が発症し、そのうち50人が亡くなっている。これを契機に、日本ではクラッシュ症候群が認知されるようになり、災害医療のあり方も大きく変わった。

クラッシュ症候群は、がれきなど重いものに腰や腕、腿(もも)などが長時間挟まれ、その後圧迫から解放されたときに起こる。筋肉が圧迫されると、筋肉細胞が障害・壊死を起こす。それに伴ってミオグロビン(たん白質)やカリウムといった物質が血中に混じると毒性の高い物質が蓄積される。その後救助される時に圧迫されていた部分が解放されると、血流を通じて毒素が急激に全身へ広がり、心臓の機能を悪化させて死に至る場合が多い。たとえ一命をとりとめたとしても、その後腎臓にもダメージを受け、腎不全で亡くなってしまう場合もある。

歴史的には第2次世界大戦中、ロンドン大空襲を受けてがれきの下敷きとなり、救出された人たちが発症したのが最初の報告例とされている。最近では2005年のJR福知山線脱線事故で車両に多くの人が挟まれ、病院搬送後に発症し、うち1人が亡くなっている。

 「地震の強い揺れをテレビ画面と音声で事前にお知らせ」

長時間の下敷き状態はクラッシュ症候群を疑え

建物の下敷きになると救助活動も容易ではない(新潟県中越地震)

クラッシュ症候群は救出された直後は、症状が特にないケースが多く、重症でも分かりにくいため、見落とされてしまう場合が多い。以下にあてはまる場合は、クラッシュ症候群を疑った方がよい。

など

治療方法は「より早く透析へ」

現場での応急対応は、点滴による水分補給や乳酸リンゲル液や酢酸リンゲル液を使って血液中の毒素を薄めるものだ。しかし、最終的な治療法は血液をきれいにするため、血液透析・血漿(けっしょう)交換などの血液浄化療法しかない。救出後はできるだけ早く人工透析することが生きるための近道となる。

関係機関も連携へ

クラッシュ症候群を防ぐには、より早い救助が必要となる。しかし、がれきに挟まれて長時間救助できない場合には、むやみにがれきの下から救助することは最善の策ではない。現在の災害医療ではこの状況を改善すべく、救助する側の「消防」と、災害医療に携わる「医師・看護師」とが密に連携する必要性が認識されている。阪神・淡路大震災以前は、埋もれている人を助け出し、治療するという「がれきの外の医療」であった。しかし震災以降、災害医療の分野では、無理に救助することが必ずしも最善の救助とは限らず、医師ががれきの中に入り、救助活動と同時に治療する「がれきの中の医療」という考え方に変化していった。

大規模防災訓練でも医師や看護師が救助隊員と一緒に現場で活動し、迅速に「がれきの中の医療」を行う場面が増えてきた。現在では、消防と医師・看護師がスムーズに連携できるように、DMAT隊(災害医療派遣チーム)が各都道府県で次々に設立されている。

自分たちにできること

災害現場では関係機関と住民の連携が必要となる(東京DMAT養成訓練)

クラッシュ症候群ほど「早期発見」「早期治療」という災害医療の原則が有効なものはない。ならば、一般市民である私たちが何もできないという傍観者になるのではなく、事前にクラッシュ症候群を正しく理解することが必要ではないだろうか。そして、そのような現場に遭遇したとき、むやみにがれきの撤去は行わず、「レスキュー隊が必要だ」と周りに知らせ、119番してもらう。そして、負傷者に声をかけて励まし、体温が低下しないように毛布などで保温する。また、救助隊・DMAT隊の活動も積極的に手伝ってほしい。そのときは「自分たちに何かできることはありませんか」と、必ず一声かけて、与えられた指示の下で活動してほしい。さらに、軽度の圧迫により自分たちの力で救出できたとしても、病院搬送時に、圧迫されていた時間、どの部分が、何(もの・重さなど)によって圧迫されていたかを分かる範囲で必ず伝えてほしい。その情報を基に搬送先の医師は、より適切な判断・対応ができ、より多くの命を救えることにつながるのである。


(文:レスキューナウ 危機管理情報センター専門員 歌代 翼)


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