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防災コラムVol.17

ダンスで災害に備える

公開月:2006年1月

子どもから老人までを対象とした視覚的に「かっこいい」というユニークな避難訓練を紹介しよう。

住民の要望で誕生

徳島大学環境防災研究センターでは、2005年度から徳島県内の小中学校、高等学校および自治体を対象とした防災に関する研修会を開いている。私はその講師を務めることがあるが、そこでは主に「南海地震のメカニズム」について講演するスタイルだった。初年度の大学教職員が行った研修会は目新しく映ったためか、住民も熱心に参加してくださったが、参加者のほとんどは高齢者や行政関係者で、基本的に一部の年齢層に限られていた。そのうち、研修会に参加している住民から「楽しく参加できるような講演をして欲しい」という要望が出た。そこで私は体を動かす避難訓練に着目し、視覚的に「かっこいい」と思われるような「ストリートダンス避難訓練」を考えた。当初は研修会の休み時間に楽しんでもらうために私だけで踊るつもりでいた。しかし、「一緒にやってみたい」との声を多数いただいたため、覚え易いバージョンを作り、現在では年齢や趣向に合わせた40種類の「ストリートダンス避難訓練」となっている。

子ども用、大人用で違う動作

このダンスは「ヒップホップ」「ハウス」「ロック」「ブレイク」「アニメーション」といったストリートダンスを用いて、地震、台風、雷、竜巻のそれぞれの避難時に必要な行動とその手順をダンスの振り付けに反映させている。基本的な避難訓練の動作を入れたものは1~2分程度であり、子ども用と大人用がある。例えば、子ども用の地震のストリートダンス避難訓練は、「頭を守る」「机の脚の対角を握る」などの命を守るための動作だけで構成している。一方、大人用は身を守る動作のほか、「ブレーカーを落とす」「火の始末」などの家などの財産を守るための動作も含まれる。これは大人と子どもで責任が違うためであり、各自が自己責任で行わなければならない最低限の動作を入れたためである。

ズンドコ節や川の流れのようにも

子ども防災教室

音楽はラジオ体操、アニメ・映画のテーマソング、ダンス音楽や歌謡曲などを用いて作成している。例えば、氷川きよしの「ズンドコ節」では、「ずん、ずんずん、ずんどこ、チャチャチャ」のところで、右足を一歩右前に踏み出して、左足を右足の後ろにスライドさせ、もう一度右足を右前に一歩踏み出してから体の向きを変えながら左足を左へ踏み出し、その後その場で腕を回しながらしゃがんで頭を守るポーズをとる。美空ひばりの「川の流れのように」では、「あぁあ~、かわの流れのよぉ~に~♪」の部分で津波をイメージして、左右どちらかの足を一歩横に踏み出して、残りの足を横に出している足に近づけながら両足をつま先立ちにして、体をつま先から頭に向かって波打たせながら最後にかかとを地面につける。

竜巻のダンスはブレイクダンスを多用している。音楽のスピードに合わせて両手を床につき、右足を左足の前に出してすぐに左足の膝のうらを右足のすねで蹴るように当てる。右足を前に出し、尻の下に右足を戻して左足を前に蹴り出す。右足に巻き付けてから右足を後ろに伸ばす。このようなフットワークが随所に登場して竜巻をイメージさせている。地震、台風、雷、竜巻など、避難訓練はどの音楽を用いてもストリートダンスの要素を組み込んでいて、体力や年齢に合わせてその動きの難易度を変えている。

高齢者の体力作りにも

徳島県城西高等学校神山分校

全ての年齢層に共通していることは、視覚的に「かっこいい」ことが重要なことである。それは一般的な「防災」のイメージとかけ離れており、十分に興味を引くことは可能である。防災の最初の一歩は興味を持つことであり、自らが「楽しい」「自分もやってみたい」と思わせることが重要である。ダンスは音楽に合わせて体を動かすことが基本であり、ストリートダンスであってもそれは同じである。高齢者の場合、若年層のような激しい動作は無理であるが、ゆっくりと片手・片足を動かすような振り付けを行うことで、ダンスを楽しみながら防災を学ぶことができ、体力作りにも有効である。

ストリートダンスは5歳児くらいから高齢者までを対象としているが、基本的に興味を示しやすい年代は10代~30代くらいである。避難訓練は10代から20代前半までが最も高度なダンスで構成した内容で、年齢が上がるにしたがい遅いテンポのダンスである。またそれぞれの運動能力に合わせた振り付けをその場で行い、即興で作成する場合もある。

ストリートダンス避難訓練はあくまで避難訓練であり、災害時の行動をシミュレーションするものである。さらに継続的に行えば、ダンスを楽しみながら避難に必要な体力を養うこともできる。ストリートダンスは特に低・若年層に人気があり、その人口も多い。一方、低・若年層は防災意識が低いことが比較的多く、基本的に地域の自主防災活動や研修会への参加は見込めない。つまりこの避難訓練は、これら低・若年層の防災意識の啓発に有効であり、防災へ興味を持つきっかけとなり得ると思われ、是非各地の避難訓練で取り入れられるよう願っている。

(監修:レスキューナウ 文:徳島大学環境防災研究センター研究員 黒崎ひろみ)

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